第208話ルーリアのお話とみんなでお仕置き
(ウイリアム視点)
どうしてこういろいろ問題が起こる? オリビアがご褒美に街へ連れて行ってあげるといい、私は確かに賛成した。賛成はしたが、今のこの状況は何だ。机の真ん中にルーリアが座り一生懸命に鳴き声をあげ、それに対しマシロ達が返事をしたり質問を返したり。私には何を言っているかさっぱり分からないが、どう考えてもいい話ではないだろう。
お酒を飲みに行くことができず、少し寂しい思いをしながらベッドに入った。が、突然顔に攻撃を受け私は飛び起きた。
「な、何だどうした! 何処からか攻撃か?!」
いろいろあったせいでまた何処からか攻撃を受けたと思ったが、枕元を見ればシルフィー達が攻撃の姿勢で集まっていた。ディル達の光も一緒だ。姿は分からないがおそらく同じように攻撃の姿勢をしているはずだ。
それから部屋の中を見渡せば、窓の方にマシロ達とルトブルに抱っこされているユーキの姿が目に入った。そしてユーキの肩に乗っているルーリアに気づく。ユーキに確認すれば、ユーキが友達になったと言っていたルーリアらしい。
この前は私を起こさずルーリアと遊んでいたユーキ。今回は私に友達になったことを知らされていたから起こされたのかと思ったが、どうもそんな感じではなかった。おいおいまたトラブルか? と、私は溜め息をつきながら隣で寝ているオリビアを起こした。最初ルーリアを見て少しだけ驚いていたオリビアだが、すぐに話し合いの準備を始めた。
飲み物を取りに1階に降りていき、店主に頼みいろいろ用意してもらい部屋に戻る。それを飲み目を覚ましてルーリアの話を聞き始めた。ユーキもホットミルクを飲み目が完璧に覚めたらしい。いつものキラキラな目をして、今は私の膝の上に座っている。
マシロ達がルーリアと話している最中、ユーキが話が分からないはずなのにうんうん頷いて、その姿を見て思わず笑いそうになってしまった。チラッとオリビアを見れば、オリビアも笑いそうになっていた。
「ユーキ、何で頷いているんだ。」
「うゆ?」
「ルーリアが何を話しているか分からないだろう?」
「えと、おはなちわからないでしゅ。でもおかお、おこったりしゃみちくなったり、いろいろでしゅ。いまは、こまってるおかおちてましゅ。」
は? ルーリアの表情が分かるのか? 私にはいつも通りの何ともない表情なのだが。そういえばユーキはたまにマシロ達が怒ってるとか、悲しんでるとか、ニヤっと笑ってるとか言っていたな。私もマシロ達のように長く近くにいる者は、何となくだが表情が分かるつもりだ。まあ、それもあまり当てにはならないが。ユーキも同じで長く一緒にいるマシロ達に気がする程度だと思っていたのだが…。
今いるルーリアは違う。今もうんうんと表情を確認して頷くユーキに聞いてみる。
「ユーキは魔獣がどんな顔をしているのか分かるのか? 初めて会った魔獣でも分かるか?」
そう聞くと、ユーキは不思議そうな顔をして、それから思いきり頷いてきた。
「ぼく、たくしゃんまじゅうのおかおわかるでしゅよ。もりにいるねこしゃんまじゅうも、ほかのまじゅうもみんなでしゅ。とうしゃんわかんない?」
それからルーリアのほうに向き直り、またうんうん頷いている。近くにいたくろにゃんが、表情が分かるから何となく今は難しい話をしているとか分かるんだろうと言ってきた。
おいおい。まさかそれもユーキの能力とか言わないだろうな。はぁ、これについても後で確認しなければ。そのうちマシロ達みたいに、魔獣と話ができるようになるんじゃないだろうな。これ以上他の人間達に目を付けられるようなことはやめてほしい。まったくうちの可愛いユーキには困ったものだ。
ようやく話が終わったのか、ルーリアがトコトコ歩いてくると、私の膝に乗るユーキの膝に乗っかり、ユーキにホットミルクを飲ませてもらっている。ユーキはホットミルクを飲ませてあげたあと頭を撫で、ルーリアは落ち着いたのか膝の上で伏せをした。
「それで、このルーリアがここにきた理由は?」
「どうもこいつらを連れていたあの男とその仲間が、ルーリアの変異種を拐ってきて売りさばいているらしい。ルーリアだけではない。他の小さい魔獣や、大きくても力の弱い魔獣を拐ってきては売り捌いているようだ。確かお前達人間の世界では、魔獣を売り捌くことは禁じられているのではなかったか?」
私はそれが大変な事態だということにすぐに気づいた。それはオリビアも同じだったようで、今までのニコニコの顔からすぐに厳しい顔つきに変わった。
魔獣の変異種にはいろいろな種類がある。マシロ達のように言葉が話せるようになったり、物凄い力を身につけたり。それ以外にもルーリアのように小さい魔獣に多いのは、体の色が全体的に変わる、又は一部だけ体に変化が現れるなどだ。そしてまた、変異種が生まれるのが多いのは、ルーリア達のようなあまり強くない魔獣達に多い。マシロ達のように最初から物凄く力のある魔獣達が変異種に変わることはそうそうないのだ。
認めたくはないが私達人間の中にはそういう生き物を集め、コレクションのために殺し剥製にする者がいる。ただ単に変わっているから飼いたいという者も居るが。そしてそういう人間のほとんどが、貴族か貴族ではなくても財力のある人間。そう金持ちのバカが多いのだ。
話を聞いたユーキは、全部話の内容が分かってはいなくても、悪人がルーリア達をいじめているということはちゃんと理解し、そしてルーリアと一緒にいた飼い主だと思っていた男も悪い人間だと分かると鼻息荒く、話を聞いて怒っていたモリオン達と一緒にお仕置きしに行くと言い出した。
私はそんなユーキ達をなんとか落ち着かせようとしたが、目がバッチリ覚めているユーキだ。なかなか落ち着かず、仕方なくオリビアにユーキのことを頼み、私はより詳しい話を聞くために、エシェット達に通訳を頼んだ。
(ユーキ視点)
僕お話聞いて、難しいお話のところは分からなかったけど、でも、悪い人達がルーリア達虐めてるのは分かったよ。それにねルーリアの飼い主のおじさんも悪い人だったんだ。とっても優しいおじさんだったのに、本当は悪い人だったの。
僕もディル達もみんなプンプンだよ。僕のお膝の上で伏せしてるルーリアの頭なでなでしてあげます。
ルーリアね僕に捕まってる子達助けてって言いに来たんだって。おじさん今寝てるから、今なら僕達とお話しできるでしょう。だから急いで来たんだって。
僕の膝の上で小さい声でルーリア鳴いたの。寂しい声だよ。お父さんもお母さんもマシロ達とお話ししてて気付いてません。くろにゃんがなんて言ったか教えてくれました。
「みんなを助けて。僕疲れちゃったの。」
そう言ったんだって。大丈夫だよ。マシロもみんなもいるから絶対助けるよ。それから悪いおじさん達にお仕置きしてあげるから。僕お話終わらないお父さんに言いました。
「とうしゃん! おちおきでしゅ! おじしゃんダメダメでしゅ! しゅぐおちおきいくでしゅ!」
お父さんまだルーリアとお話しするからダメって言ったの。みんなでブーブーです。だってルーリアのお友達、今泣いてるかも知れないんだよ。早く助けに行かなくちゃ。ブーブー言ってたら、お母さんと向こうのベッドの所行ってなさいって言われちゃったよ。僕のお膝からルーリアがまた机の上に座ってお父さんとお話し。
僕達はお母さんとベッドにお座りしてルーリアのこと見ます。
「かあしゃん。どちてしゅぐおちおきダメでしゅか?」
僕お母さんに聞いたの。そしたらね、ルーリアにちゃんとお話聞かないと、悪いおじさん逃げちゃうかも知れないって。僕達ルーリアがいるお家のこと知らないでしょう。何にも知らないで助けに行ったりお仕置きしに行って、僕達がお家の中で迷っちゃったら、その間に悪いおじさん逃げちゃうかも知れないの。それに、悪いおじさん達の他にも、もっとたくさん悪い人達が居るかも知れないんだって。
だからお父さんは絶対に悪いおじさん達を逃さないように、お仕置きできるように、たくさんルーリアとお話するんだって。
そっか。絶対にお仕置きしたいもんね。ルーリア達虐めてダメダメなおじさん達だもんね。うん、じゃあ僕お話終わるのちゃんと待つ。それでお話終わったらお仕置きしに行こう! そうだ。お父さんとルーリアのお話し合い終わったら、ルーリアにどんなお仕置きがいいか聞こう。
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