第205話パーティーは涙と鼻水
「こおちん、たのちみ!」
「いいか、約束だぞ。絶対俺と手離しちゃダメなんだからな。」
「うん!」
並ぼうとしてお父さんが僕捕まえたあと、僕リク君とお手て繋いで列に並んだんだ。
「リク君。ユーキちゃんのこと頼んだわね。どこかに行っちゃわないように手繋いでてあげてね。」
「うん! 俺に任せて!」
「もうリクで大丈夫かしら。絶対離しちゃダメよ。」
って、みんなが言ってたんだ。僕行進するだけなのに、どこにも行かないよ? 僕小さいから列の端っこリク君とお手繋いで歩きます。列の真ん中だと潰されちゃうの。最初真ん中に並んだらぎゅうぎゅうされちゃちゃったの。お母さん達はリク君のお家から見ててくれるって。道もお店の間も人でいっぱいだからその方が僕が行進してるのゆっくり見られるの。マシロ達は屋根の上から見てくれてるんだ。ディル達も潰されちゃうといけないから、マシロ達と一緒にお屋根で行進です。
前の方で誰かの声がしました。
「それじゃあ行進始めるからね! ゆっくり歩くんだよ。走っちゃダメだからね。よし! 行進スタート!!」
パンパンッて音がして、花びらがヒラヒラヒラってたくさん降ってきました。みんなどんどん歩いて行きます。ずっと花びらヒラヒラしたまんまなんだよ。とっても綺麗なの。それにシャボン玉とかいろいろな光の玉とかが飛んでて、花びらと一緒でとっても綺麗です。
僕シャボン玉触ろうとしてリク君のお手て離しそうになっちゃったの。そしたらリク君にグイって引っ張られて怒られちゃったよ。お手て離しちゃダメって。お約束ダメダメです。お父さん達見てないよね?
周りで行進見てる人達にお手て振りながら歩くんだ。それでクッキー売ってるお店にハロルド達がいました。
「オクタビオでしゅう! お~いでしゅう!」
「ユーキ君! ちゃんと前見て歩くんだよ!」
3人が手振ってくれました。ふへへ。なんか嬉しいなぁ。それに行進終わったらクッキー貰いに行かなきゃ。たくさんお手て振って、またどんどん歩きます。
「何で俺じゃなくてお前のこと呼ぶんだ? ユーキの家族は俺なんだぞ。」
「ハロルドがいたずらやお菓子取ったりするからじゃないの。僕は魔法教えてあげてるしね。僕優しいんだよ。」
「はっ、まだ小さいからな。大きくなったときお前の本性知ったらショック受けるんじゃないか?」
「ハロルド、僕が何?」
ん? 今後ろの方でボンッて音しなかった? 後ろ振り向いたけど、みんなニコニコ手を振ってます。あれ~? 一生懸命後ろ見てたらまたリク君に引っ張られちゃったよ。どうしてみんな僕のこと引っ張るの? お父さんもお母さんもマシロもみんな引っ張るんだよ。
リク君がもうすぐだぞって。もうすぐリク君のお家です。リク君のお家の2階の所から僕達のこと見てくれるんだって。僕ジーって2階の所ずっと見ます。だってね、たまに大人の人達が前に出てきちゃって、僕小さいから大人の人達のせいで周りが見えなくなっちゃうの。
「あっ! 母ちゃん達だ! ユーキ母ちゃん達いたぞ。ユーキの母ちゃんと父ちゃんもちゃんと見てるぞ!」
リク君が指差した方見ました。ほんとだ! お父さん達だ!
「とうしゃん! かあしゃん! お~いでしゅう!」
ジャンプしながらお手て振ります。お父さんとお母さんがお手て振ってくれようとしたとき、
「ルーちゃん! ママよ!」
「チカこっちだぞ!」
って言って、他のお母さんとお父さん達が僕達の前に出てきちゃったの。お父さん達が見えなくなっちゃった。僕もっとジャンプします。そしたらね、他のお父さん達ももっと出てきちゃったんだ。僕、ドンって押されてべしゃって転んじゃった。リク君がすぐに起こしてくれたんだけど、お膝も腕も擦りむいちゃってとっても痛いし、蝶々さんの可愛いお洋服、茶色く汚れちゃったよ…。
「ふえ…、いちゃい…。おようふく、よごれちゃた…。ふえ…、うわあぁぁぁぁぁん!」
僕痛いのとお洋服汚れちゃったので寂しくて泣いちゃいました。すぐにマシロ達がお屋根から降りてきてくれたよ。それにね、リク君が僕の事押した人達怒ってくれました。だって押した人達、僕のこと気付いてないんだもん。
「ユーキちっちゃいんだぞ! 押したらすぐ転んじゃうんだぞ! ユーキに謝れ!」
押した人達がやっと僕のこと見ました。
「ユーキ!!」
あれ? さっき会ったハロルド達がいつの間にか、他のお父さんさん達の間から出てきました。ハロルドが僕のこと抱っこしてくれます。
「おい! 自分の子供を見たいのは分かるが、小さな子供押し倒してまで前に出てくるのは違うんじゃないか? それにこんな小さな子に注意されて、大人として恥ずかしくないのか!」
ハロルド達も怒ってくれたの。それから前に出てきたお母さん達にも。
みんな僕に謝ってくれたけど、僕泣くの止まんない。だってお父さん達に手振って行進してるところ、たくさん見て欲しかったのに。
「ユーキちゃん!」
あっ! お母さんの声だ! またまた押した人達の間からお母さんが出てきました。ハロルドが僕のことお母さんに渡します。隣にお父さんも居ます。
「大丈夫ユーキちゃん。そこのクロエのお店に入りましょう。リク君もね。すぐに行進に戻れるから安心して。さあ。」
お母さん達みんなでクロエさんのお店に行きました。お母さんがお外で魔法使わなくて偉かったわってディルのこと褒めてたよ。すぐにディルが僕のお怪我治してくれました。もうお膝も腕も痛くないよ。でもヒックヒック涙止まりません。お咳も出てきちゃったよ。それに可愛い蝶々さんのお洋服汚れたまんま。
お店の奥に入ってったクロエさんが、お水の入ってる入れ物とタオル持ってきました。
「大丈夫よユーキちゃん。すぐにお洋服綺麗になるからね。」
そう言ってクロエさんがタオルを水に濡らしました。それですぐにお水から出さないで少ししてからタオルを出します。ギュウゥゥゥゥって絞ってから、僕のお洋服拭いたんだ。そしたら汚れてたところが全部綺麗になっちゃいました。
お水ね特別なお水なんだって。クロエさんのお店はお洋服屋さんでしょう。売ってるお洋服がもし汚れちゃってたらみんな買ってくれないから、いつもこのお水で綺麗にしてるんだって。お洋服にこのお水つけてもすぐに乾いちゃうから大丈夫なの。
「ありがと、ヒック、でしゅう、えぐっ」
「ユーキちゃん、リク君にもありがとうよ。ユーキのこと守ってくれて怒ってくれたでしょう。」
「うん。リクくん、ふえ、ありがとでしゅう。」
「おう! よし、まだ行進終わってないぞ! もう1回出発だ!」
(ウイリアム視点)
泣きながらも行進に戻るユーキ。戻ってきて泣き続けるユーキを見て近くにいた係が、オリビアに一緒に歩いて良いと言ってくれて、1番端のところを再び歩き始める。私は少し先回りをしてユーキ達が行進してくるのを待った。隣にはハロルド達もいる。
やっと見えたユーキに手を振りながら声をかける。私達の姿を見たユーキは泣きながらもとっても良い笑顔を見せながら、手をぶんぶん振りながら歩いて行く。隣でハロルド達が笑っている。
「凄い顔だな。涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。それなのに凄い笑顔だし。」
「戻ってきたら笑うんじゃないぞ。」
「分かってるよ。あれは完璧に泣くスイッチが入ってるな。まあ、そのうち落ち着くだろう。俺達はお店に戻る。ユーキ達の特製クッキーを用意しておかないとな。」
そう言い、ユーキを見送ると自分たちが出している出店へと戻って行った。
行進が終わったユーキはそのあと少しして、ようやく泣くのが止まった。そしてもう1着用意していた妖精の洋服に着替えると、クッキー集めに勤しんだ。そして興奮と泣き疲れで、途中で完璧に寝てしまった。
家に戻る前にユーキの世話をしてくれたリク君にお礼のケーキを渡し、また今度ゆっくり遊びにおいでと言った。リク君ももう少しユーキと遊びたかったらしい。残念そうな顔をしていたが、ケーキの箱を渡すとすぐに箱の中身を見ようとして怒られ、さっさと家の中に入ってしまった。タージがそれを追いかけながら怒る。それを見て謝るアニータ。
帰り道、ぐっすり眠るユーキを見ながら来年の事を考える。小さいユーキ。まだまだたくさんこういう小さい子供のパーティーに参加ができる。小さい時にしか味わえないたくさんの楽しい思い出を、これからもどんどん作っていってもらいたい。まあ、今日みたいなこともあるが。それもいつか良い思い出と話せる日が来るだろう。
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