第169話ただいまでしゅう!!

「そろそろか?」


 そう言ってお父さんが窓を開けました。僕はその窓からお顔だけ出して前の方を見ます。ちょっと向こうの方に壁が見えて来ました。いつも見てる大きな壁。

 お家に帰ったら最初にすること。アメリアやオリバーさん達にお土産渡すこと。ボルフィスでちゃんとお土産買ったよ。喜んでくれるかなぁ。

 それからじいじの木の所に、雪だるまさんと雪のお家出してもらって、それからそれから、買ってもらったおもちゃとかお菓子全部遊びのお部屋に出して。やる事いっぱい!


 壁の門の所に着いたらいつもみたいに、たくさんの人達が並んでました。でも僕達は別の入り口があるからね。すぐに入れるもん。

 僕達の入る入り口に近づいたときでした。誰かの怒ってる声が聞こえてきたよ。よく見たらいつも門の所に立ってる騎士さん達と、騎士さん達と違う騎士さんのお洋服着た騎士さん達がケンカしてました。


「だからここの騎士になってやるから、中に入れろって言ってるだろう!」


「そんな事出来るわけないだろう!お前達のような騎士を入れるわけにはいかない!向こうの門番にも今伝えてもらったからな。絶対に入らせんぞ!」


 騎士さんでも街に入っちゃいけない騎士さんが居るんだ?僕がもっと窓からお顔だそうとしたら、お母さんに抱っこされちゃって、お父さんが窓閉めちゃいました。


「ちょっとお話してくるから、ユーキは絶対外に出てはいけない。窓も開けちゃダメだぞ。いいか?約束守れたら、今日のおやつはもう1枚クッキーあげるからな。」


「はいでしゅ!」


 クッキーもう1枚!絶対お外出ないよ!

 お父さんとお約束したから、馬車の中でみんなでお話し合いです。モリオンもお友達になったから、ばあばに乗り物もう1つ作ってもらわなきゃとか、ルトブルのベッドも用意してもらわなきゃとか。

 そんなお話してたら、馬車の横でドシャって音がしました。それでねモリオンがバッて窓を開けちゃいました。


「あらダメよ。窓開けない約束でしょう。」


 お母さんが窓閉めようとしたらエシェットが馬車の中見てきました。


「もう大丈夫だ。話を聞いてたが、面倒になってきたんで片付けようと思ったんだが、ルトブルの方が早く片付けてくれた。奴も面倒だったらしい。」


 お外見たらさっきのケンカしてた違うお洋服着てた騎士さん達が、お山になってました。1番下で寝てる人グエエって言ってる。お山の上にはルトブルが座ってました。


「ユーキの邪魔だからな。だいたい話が長いんだ。さっさと片付ければいいものを。」


 お山の上からルトブルが降りて、今度はディルとリュカ、キミルとモリオンがお山の上に乗りました。それでお手てグーにして万歳のポーズ。僕も真似して万歳のポーズ。


「はぁ、まったくお前達は。」


 お父さんがぶつぶつ言いながら馬車に戻って来たよ。後でこれも教えないととか言ってました。でもこれで中に入れるんだよね。じゃあ早く行こうよ。

 いつもみたいに騎士さんに敬礼です。今日は馬車の中からだから手だけ敬礼。ぴっ!!騎士さん達もみんなピシッて敬礼してくれました。


 中に入ろうととした時、僕の知ってる声が聞こえました。あの声オリバーさんだ!声のした方見たら、オリバーさんとリアムさんがお馬さんに乗って門入ったすぐの所に居ました。


「オリバーしゃん!リアムしゃん!」


「団長お帰りなさい。ずいぶん早いお帰りで。もう少し遅くなると思っていましたが。」


「おう!ユーキ元気そうだな。」


「ただいまでしゅう!!」


 窓から体出して手を振ります。2人とも手振ってくれたよ。


「こら!乗り出すなって言ってるだろう!お前達はこれの処理で来たのか?」


「ええ。また門の所で揉めてると連絡が来たので。」


「また?」


「後程お話に伺います。とりあえず私達はこの馬鹿な人間達を連れて行きますので、団長は屋敷の方に。」


「分かった。」


 もう1回バイバイしてお店通りを馬車が走り始めました。


「おお~…。」


 窓から見たお店通り、僕がボルフィスに行った時は壊れてる所あったのに、全部綺麗に直ってました。それによく見たらボルフィスよりも雪がいっぱいみたい。これなら雪だるまさんも雪のお家も置いて大丈夫だね。

 ディルとリュカがお外に出ていきます。妖精さん達の集まってる所に行って来るって。ボルフィスに行った話を自慢して来るって凄いスピードで飛んでいっちゃったよ。それにキミルとモリオンが楽しそうって言って付いて行っちゃったんだ。


 どんどん馬車は進んで、それでお家の門が見えてきました。門の前にはいつもとおんなじ騎士さんが立ってます。ぴって敬礼して中に。玄関の前にたくさん人が見えます。使用人さんとメイドさん達だ!あっ、アメリアが1番前に立ってる!


「アメリアでしゅう!アメリア~、ただいまでしゅう!!」


 一生懸命お手て振ったらアメリアも両手でお手て振ってくれました。

 馬車が玄関の前に着きます。もう!どうしていつも僕が見てる窓と反対側?慌てて反対に移動してドア開けてもらうの待ちます。ドアがガララって開いてお父さんが1番最初に降ります。その後に抱っこして降ろして貰いました。降ろしてもらってすぐアメリアに抱きつきます。


「アメリアただいまでしゅ!!」


「お帰りなさいませユーキ様。アメリアユーキ様のお帰りを今か今かと待ち望んでおりました。ボルフィスは楽しかったですか?」


「うん!!あのねあのね、おともだちできたでしゅ!」


「そうですか。では後でご紹介下さいね。ささ、まずはお家に入りましょう。休憩室に、お茶を用意してありますからね。」


 アメリアは僕を抱っこして、とってもニコニコお顔のままシュサササって歩き始めました。あれ?お父さん達にお帰りなさいいいの?他の人達はみんな挨拶してるよ。僕がアメリアにそう言ったら、アメリア玄関の方にシュサササって戻って、


「お帰りなさいませ旦那様。皆様もお帰りなさいませ。」


 って言ってすぐにまた中に。忙しいね。

 休憩室に行ってみんなすぐにドサってソファーに座りました。みんなお尻が痛いって。僕痛くないよ?


「それはそうだろう。ユーキのお尻の下はふわふわだったんだ。」


 ってお父さんが。僕はキミルに出して貰ったたくさんのワタぼこの上に座ってたんだ。うんとねぇ、馬車の中の座る所が半分くらい出して貰ったの。ふわふわだったよ。僕お父さん達にも座るって聞いたんだ。でもお父さんが、


「私だけでも普通でいくぞ。」


 って。よく分かんないや。ディルにも頼んだのにそれも要らないって。もう!痛い痛いって言うなら、ちゃんとワタぼこに座れば良かったのに。ディルも力強くなったから、すぐ治してもらえたのに。プンプンだよ。


「皆様、お茶菓子も用意してまいりました。」


「うゆ?」


 アシェルいつものピシッてした黒いお洋服に戻ってる?ん?今まで僕達と一緒にいたよね?あれ?アシェルいつもいつの間にか居なくなるの。隣にいたのに居なくなったり、前に居たのに一瞬で後ろに居たり、とっても不思議。どうやって動いてるのか。こうシュッて。僕は真似して横から横にジャンプ。


「ユーキ何してるんだ?元気なのは良いんだが、お父さん静かにゆっくりしたいんだが。」


「とうしゃん、アシェルねシュッて、いちゅもはやいでしゅ。おようふくきがえるのも、まえからうちろにいくのも。くろにゃんみたいに、うごけるでしゅか?」


「ああ、そういうことか。それはアシェルだから出来るんだ。お父さんにもお母さんにもみんなにも出来ない事なんだぞ。凄い事なんだ。」


 そう言ってお茶を飲みます。そっか誰にも出来ないことが出来るんだ。アシェルカッコいい。あっ、アシェル剣も凄く早く動かせるよね。お父さんも早くて見えないけど、アシェルは剣出すところもしまう所も早いんだ。僕は真似して腰についてる剣をシュッて持ちました。


「カシャンッ!!」


「………。」


「お、おお~でしゅう…。」


「ユーキ…、お前はいつもいつも…。」


「ふわわ、ごめんしゃいでしゅう!!」


 僕の剣、飛んでちゃってお父さんの飲んでたお茶のコップ割っちゃった。怒られる逃げなきゃ!!


「こらユーキ待ちなさい!!」


「ごめんしゃいでしゅう!!」


「ふふ、家に帰ってきたって感じね。ねえアシェル。」


「はぁ、そうでございますね。」


 僕すぐに捕まっちゃた…。ふえぇ…、真似しただけなのに。どうしていつも飛んでっちゃうの?

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