第167話ボルフィスばいばい。また遊びに来るからね!

「かあしゃん、かあしゃん。えほんよんでくだしゃい。」


「どうしたのぉ~、ユーキちゃん、まだ夜中よ。」


「えと、とうしゃんとおトイレいったでしゅ。だからえほんよんでくだしゃい。」


「すまない。トイレに行って寒かったもんで目が覚めたらしい。」


「分かったわ。1冊だけよ。読んだらおやすみなさい約束よ。」


 今僕はお父さんのお膝の上に座ってます。目の前にはスープとパンとハムが置いてあります。僕の朝ご飯。一生懸命スープを飲んで、パンとハムをふた口ずつ食べました。でも、それ以上食べられないの。目が勝手に閉じちゃう。


「ねみゅいぃ~。」


「ほらしっかりしろ。仕方ないな、アシェル馬車の中で食べられるような簡単なものを作ってもらってくれ。」


「畏まりました。」


 昨日たくさん寝たのに眠いの。たくさん寝たんだよ。多分?1度お母さんに絵本読んでもらった気がするけど、3冊くらい読んでもらった気がするけど、あれ夢だもんね。


「途中で起きちゃったものね。挨拶のとき起きていられるかしら。」


 ご飯が終わって、帰るお洋服にお着替えです。いつの間にかお部屋の荷物全部なくなってました。昨日の夜まではたくさんあったのにね。僕が寝てたときに運んだみたい。

 お着替えが終わってうさぎとルーリアのぬいぐるみ持って、玄関ホールまで行きました。玄関ホールで馬車がドアの前まで来るの待つんだ。僕は眠くてお父さんに寄っかかったまま。

 あのね、玄関のドア直ったんだよ。今度はね重たいドアじゃないの。軽いドアで、エシェットが特別にドアに結界を張ってくれたんだ。悪い魔獣が入って来ないように。同じドラゴンなのにどうしてシャーナはドアに結界張らないのか聞いたら、シャーナは攻撃の方が得意なんだって。


 お外でお馬さんの鳴き声が聞こえました。馬車が到着していよいよお家に帰る時間です。


「ユーキはいつも朝眠いのじゃな。」


 そう言って階段から王様とサルバドールさん、それからエイムさんとシャーナが降りてきました。お父さん達みんな王様達にサヨナラの挨拶です。僕もちゃんとピシッてたったよ。最後のご挨拶、ちゃんとさよなら言いました。半分目瞑ってたけど…。


「ハハッ、面白い顔してるな。ユーキ君。私からプレゼントだ。馬車の中で食べると良い。」


 サルバドールさんが棒がついてる大きなアメをくれました。グルグルもようのアメだよ。僕それ見て目が覚めました。


「ありがとでしゅう!!」


「私からはこれを。」


「ふわわ、ふわわわ!おちろでしゅ!!ありがとでしゅう!!!」


 エイムさんは僕に小さいアメがたくさん入った袋と、それからお城をくれました。僕がちょうど両手で持てるくらいのお城のおもちゃ。本物のお城と全部一緒なんだよ。アシェルがぬいぐるみ持ってくれて、僕はお城のおもちゃを持ちました。


 御者さんがお城に入って来たから、もう乗っても良いのかなって思ってお外に出ようとしたんだけど、そしたらね御者さんが待って下さいって。


「どうした。何かあるのか?」


「それが先に出て行った馬車が引き返して来たのです。どうも隣町の方で大雪が降っているらしく。」


 何かね、ボルフィスは大丈夫なんだけど、隣の街はいっぱい雪が降ってて、馬車が通れないんだって。ん?雪がいっぱい?僕はパッてマシロとエシェット見ました。


「ゆきのとんねるでしゅう!!」


 また雪のトンネル作ってもらえば馬車通れるよ。僕雪のトンネル好きだし、他の人も通れるからちょうど良いよね。


「ああ、そうだな。マシロ行くぞ。ユーキ馬車に乗って少し待っていてくれ。」


 そう言ってマシロに乗ってエシェットがお外に出て行ったよ。お父さんは待てって言ったけど、すぐ2人とも見えなくなっちゃいました。王様達が何しに行ったのか聞いてきたから、僕は雪のトンネルのこと説明したんだ。みんな雪のトンネル見にくればいいのに。凄いんだよ。


「初日にソルイから報告のあったトンネルのことか。ふむ。後で見に行ってみるかのう。面白そうじゃ。」


「父上?勝手に居なくならないで下さいよ。シャーナに見張ってもらいますからね。」


「なぜじゃ?良いではないか。」


 王様とサルバドールさんがケンカしてる間に、2人が帰って来ました。エシェットが綺麗なトンネルが出来たって、とっても自慢してます。

 僕達が馬車に乗ろうとして御者さんがとっても慌ててたけど、がっくりしてたお父さんが大丈夫だからって言って、みんなで馬車の前に行きます。


 僕はお外に出る前に、もらったアメを自分のカバンにしまって、それからお城のおもちゃは僕が乗る馬車に乗せました。これで途中で遊べるもんね。馬車の中は僕のおもちゃでいっぱいです。お父さんが座る場所が狭いってぶつぶつ言ってました。ダメだよ、荷馬車に乗せないもんね。だって遊ぶものないと馬車つまんない。お外ばっかり見てると飽きちゃうの。


 順番に馬車に乗って、馬車のドアが閉まりました。窓から覗いて王様達にバイバイします。


「バイバイでしゅう!!」


「また遊びに来るんじゃぞ!」


「またなユーキ君。」


「お菓子の食べ過ぎに注意してくださいね。」


 みんなが見えなくなるまでずっと手を振りました。王様達もずっと手を振ってくれました。馬車はどんどん進んでお店通りに。そこも窓を開けたまま通ります。だって最後だもん、ちゃんと見ておかなくちゃ。

 そしていよいよお外に出る大きな壁の所に着きました。お外の壁はいろんな所壊れちゃってて今直してます。この前の黒服さん達のせいだよ。来た時は旗しか見えなかったけど、今はお城の上半分くらいが見えるくらい壊れちゃったの。


「ユーキ、そろそろ窓を閉めるから座りなさい。」


「はーいでしゅう。ばいばいでしゅう!!」


 半分のお城をもう1回よく見て、それからお城にバイバイして、僕はお父さんのお膝に座りました。お父さんが窓を閉めます。雪のトンネルに着いたらまた窓開けてもらおうっと。窓閉める前にエシェットがお父さんにお話してきました。マシロの上にエシェットが乗って、くろにゃんの上にルトブルが乗ってお外走ってます。


「なぜくろにゃんかモリオンの魔法で帰らない?そっちの方が一瞬だろう?」


「これが普通なんだ。なるべく普通に出来るものは普通に。規格外の事ばかりしてユーキがそれが当たり前だと思ったら困る。」


「雪のトンネルは普通なのか?」


「だから止めようとしたのに、お前達がサッサと行ってしまったんだ。」


「そんなものか?」


「はあ、これからユーキにどうやって教えるか…。」


 ん?何のこと?僕は雪のトンネル好きだよ?お父さんは溜め息してそれから少しの間ぶつぶつ言ってました。

 お話終わってお父さんが窓閉めたとき、僕窓のところに手を置いてたんだ。僕窓に手挟んじゃった…。


「いちゃい!!」


「ユ、ユーキ大丈夫か?!」


 い、痛い…。涙がぽろぽろです。手赤くなってる。馬車の中で飛び回ってたディルがすぐに僕のところに来てくれました。


「ユーキ!すぐ治してやるぞ!」


 ディルがいつもみたいにポワッて光ります。それでね。


「およ?」


「あれ?」


 いつもディルがお怪我治してくれるとき、すぐに治してくれるけど、今日はもっとすぐでした。ディルが光った瞬間にお怪我治ったんだ。僕はじっとお怪我してたところ見ます。ディルもね。それからみんなも僕達のこと見ます。ディルのこと見てたリュカがう~んって言ってからフワッて光りました。ふわわっ!眩しい!お父さんが慌ててリュカに止めろって叫んでます。


「あれいつも通りやったのに。この前戦ってたときもこんなに光らなかったよね。」


 お外からエシェットの声が。


「この前は奴らの魔法で暗かったからだろう。お前達の力が強くなっただけだ。良かったではないか。」


 ふ~ん。強くなったんだね。みんなよかったね。強くなるのは良いことのはずだもん。僕達はみんなで拍手です。お父さんとお母さんはあんまり喜んでませんでした。何でかな?


 ボルフィスもお城も、とっても楽しかったなぁ。怖いこともあったけど、楽しいことの方が多かったよ。たくさんお菓子貰ったし、モリオンとルトブルとお友達になれたもんね。またすぐに遊びに行きたいけど、ザクスさんのお家にも遊びに行かないといけないし。そうだ。今度ザクスさんのお家に遊びに行くときは、ボルフィスのお菓子持って行ってあげよう!

 あと、またみんなでお出かけしたいな。お父さんお母さん、お兄ちゃん達にじいじにばあば。家族みんなでお出かけするの。いろいろな所に遊びに行きたいなぁ。


「ん?いつの間に?」


「あらあら。ニコニコ笑ったまま眠ってるわ。どんな夢見てるのかしら。」


「はは、夢の中でもやらかしてるんじゃないか?」


「むにゅむにゅ…、とうしゃん…、キミルがとうしゃんのあたまに、おはなしゃかしぇてくれたでしゅよ…。うれちいでしゅね…。」


「………どんな夢だ?!」

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