第166話帰る準備は完璧?

 明日いよいよお家に帰るんだ。お城にお泊まりできるのはあと1日だけ。ちょっと寂しいなぁ。お城で遊ぶの楽しいもん。また遊びに来たいなぁ。


 今日は雪のお家と雪だるまさんを仕舞います。お店通りに遊びに行ったりしてたら、お片付けするの遅くなっちゃったの。だから今日は朝ご飯食べてからすぐにお庭に来たんだ。


「この家で遊べるのも今日だけだもんな。」


 今日はジョシュアお兄ちゃんが付いてきてくれました。でも何で遊べるの今日だけ?持って帰るからまだまだ遊べるよ?くろにゃんとモリオンにどっちが持って帰ってくれるか聞いたんだ。だって他にもお荷物いっぱいだから、入らなくなっちゃうと思ったの。そしたらいつもくろにゃん達が仕舞うところは、無限に入るんだって。無限…、いっぱいって事みたい。だからね心配しなくていいよって。だから僕のお荷物はモリオンがしまってくれる事になりました。決めるとき2人ともケンカしちゃったんだよ。


「僕が持って帰るよ!!」


「俺が持って帰る。」


「僕の方が力が強いんだから、僕の方が安全だよ!」


「いや、俺の方が慣れてる。」


「じゃあ魔法で対決ね!」


「良いだろう!」


 そう言ってお部屋の中は闇魔法が風みたいにビュウビュー、あっちに行ったりこっちに向かってきたり。それでお父さんにとっても怒られてました。


「何でケンカしたか知らんが2人とも今日はおやつなしだ!まったく…。それとくろにゃん荷物を持って帰ってもらうから、私に付いて来てくれ。」


 お父さんが決めちゃったんだ。くろにゃんしょんぼりしながらお父さんについて行きました。おやつもなしになっちゃったし…。後で隠れてあげよう。しょんぼりしてるモリオンにもね。だから今くろにゃんいません。


 みんなでお家の前に立ちます。エシェットが仕舞う前に、雪のお家をきれいに直してくれました。少し雪が取れちゃった所とかあったから。それを直してもらって、今度はモリオンの番。


「よし、じゃあ仕舞うから、少し離れててね。」


 ちょっとだけ後ろに行ってモリオンを見ます。モリオンがふわって光って、そしたらぱって雪のお家が消えました。ふぁ!凄い!くろにゃんみたいな仕舞い方じゃない。あれ、今まではくろにゃんみたいだったよね?今までは、黒い丸の中に沈んでいくみたいにしてしまってたんだ。でも今はサッて。


「モリオンしゅごいでしゅ!いちゅもと違うでしゅね?」


「うん。何かユーキと友達になったばっかりの時は、自分の力に慣れてなかったみたい。魔法使ってたらだんだん強い魔法使えるようになったんだ。だから今はこれくらいなら一瞬だよ。」


 ふぉ!すごいねぇ。僕達がモリオンの事拍手してたら、突然お兄ちゃんが叫びました。


「何したんだ!!」


「うゆ?ゆきのおうち、しまってもらったでしゅ。おうちもってかえるでしゅよ?」


 そう言ったらお兄ちゃんがここで待ってろって言ってどっか行っちゃいました。待ってろって、僕まだここに居るよ。だって雪だるまさんも仕舞わなきゃ。モリオンに雪だるまさんもサッてしまってもらって、お庭は最初の時と一緒。何にもなくなりました。


 でも雪はまだまだたくさんあるからね。お片付け終わったから次は雪合戦。雪合戦やる前にたくさん雪の玉を作ります。そうしないと全然投げられないからね。ディル達も雪の玉作るけど、僕のより大きいんだ。何で?

 みんなで30個くらい雪の玉作って、雪合戦始まりです。みんなでエシェットとルトブル攻撃です。マシロは僕達隠してくれます。2人からも攻撃がくるから。始めようとした時、いつの間にかお父さんとジョシュアお兄ちゃんが。お父さんがまた叫んでます。お父さんの毎日のお仕事みたい。


「ユーキ!何をした!雪の家と雪だるまはどうした!」


「おうちにかえるじゅんびでしゅ。とうしゃんもじゅんびっていいまちた。ゆきのおうちもゆきだるましゃんも、ちゃんともってかえるでしゅよ。モリオンにちまってもらったでしゅ。ぼくのじゅんび、おわりでしゅう。」


「準備って、あれ持って帰るつもりだったのか。はぁ、急に庭に何もなくなったらみんな驚くだろう。まあ、壊したって言えばいいから問題はないが…。ユーキ、みんなが通る場所のものを仕舞う時はちゃんとお父さんかお母さんに言ってからにしなさい。お兄ちゃんみたいにびっくりする人もいるからな。」


「はーいでしゅう。よち!ゆきがっしぇんしゅたーと!」


 ビュンビュンエシェット達の方から雪玉が飛んできます。僕達も投げるけど、全然届きません。玉がすぐになくなっちゃいます。あんなに作ったのに。ジョシュアお兄ちゃんにお願いしてどんどん雪の玉増やして貰います。


「まったく、全然届いていないではないか。我が少し手伝うか…。」


 ん?マシロ何か言った?ふわ!聞こうとしたけどすぐに投げなくちゃいけないから聞けない!でも、


「およ?とどいちゃ!」


「オレのも!!」


「よし次々!」


「ユーキ、次の玉」


「キミルのも届いた!モリオン頑張ろう!!」


「ようし、いくよ!!」


 エシェット達に玉が届くようになりました。それでお父さんに言われて今ある雪の玉がなくなったら終わり、お部屋の中に入りなさいって言われたから、もっと一生懸命玉を投げます。


「これでしゃいご…。」


 みんなに応援されて最後の玉を僕が投げます。


「えい!!」


 ヒュンって今までで1番早く玉が飛びました。それでそれがルトブルのお顔に当たりました。何か今飛び方おかしかった?でも当たったからいいよね。やった僕達には誰も当たらなかったから僕達の勝ち!!みんなで拍手です。


「そうりゃあそうだよ。俺に全部玉が来たんだから…。」


 お兄ちゃんの方見たら、お兄ちゃんのお顔もお洋服も雪だらけ。どうしたの?雪にジャンプしたの?でもお兄ちゃんの跡ないし?

 雪合戦楽しかった。帰ってもまたやろうっと。


 夜のご飯は、王様とサルバドールさんとエイムさんと、みんな集まってご飯食べました。それでねまた遊びに来なさいって言ってもらったんだ。今度は雪じゃなくて、あったかい時に遊びにきたら、きっとまた楽しいって。お菓子用意して待っててくれるって。楽しみ!!お父さんにちゃんとお願いしなきゃ。


 ご飯食べて、少しだけお部屋で遊んで、今日は明日早く起きるから早く寝なさいって言われたから、いつもより早く寝ました。

 お城にお泊り楽しかったなぁ。今度遊びに来たら何しようかなぁ。楽しみ!!


(ウイリアム視点)

 国王様と殿下、そして私と父さんは最後にと、休憩室でお酒を飲んでいた。ユーキの後ろ立ての件、それからやらかしの数々のお礼と謝罪を改めてしたのだが。お2人共に気にするなと言っていただいた。


「それにしてもいろいろあったが、楽しい日を過ごさせてもらった。ルドガー本当に可愛い孫じゃのう。今度遊びに来た時は、ワシの孫とも遊べると良いんじゃが。」


「そうじゃのう。今度はゆっくりボルフィスに来たいもんじゃ。」


「ウイリアム。ユーキのこと、しっかり育てるのじゃぞ。あれはきっと我々が考えられんくらい、素晴らしい者に成長するはずじゃ。だが、それには我々大人の力と、お主の家族としての愛情が必要じゃ。」


「はい。」


 もちろんそのつもりだ。ちゃんとユーキを導いてやらなければ。大人になって外の世界に出て行っても、ユーキが楽しく笑って生きて行けるように。


 そんな真面目な話をしていたら、だんだんと雲行きが怪しくなってきた。国王様がユーキのやらかしの話を始めたからだ。国王様がユーキが城に来てからのやらかしの数々を、順番に言い始めたのだ。それを黙って聞いていたのだが、その数の多いこと。まさかこんなにいろいろやらかしていたのか。お酒のせいではなく顔が熱くなってきた。


 それからは大変だった。国王様も殿下も父さんも、私を抜いた全員が楽しく笑いながらユーキの話をしているのだが、私だけは毎回謝る羽目になった。最初に気にするなと言っていただいたが、そうも言っていられない程のやらかしの量だった。ユーキ自身のやらかしもあるが周りのやらかしもだいぶある。


 明日からの帰り道にも、何かやらかすのではないか?そう思うと勝手にため息が出てしまう。気づかれないように溜め息を吐き、全然酔えないお酒を飲みながら、明日からのことを考えた。

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