第165話キミルのやらかしお散歩

「あしょびにいくって、いったでしゅよ!!」


「朝の話聞いてたのか。まいったな。」


 僕今お父さんにプンプンです。帰る日が決まって今日は2日目です。

 あのね僕、朝起きたときに、お父さんとお母さんがお話してたのちゃんと聞いてたんだよ。お父さん、今日は夕方からお店通りに遊びに行くって言ってたの。だから僕お店通りで遊べると思って楽しみにしてたんだ。それなのに…。


「ぼくもあしょぶでしゅ!」


「ユーキ、今日はお父さん、お父さんのお友達に会いに行くんだ。今日お父さん達が行くお店は、子供は入れないからユーキは一緒に行けないんだ。だから今日はお留守番だ。」


「やぁーでしゅう!ぼくもいくでしゅう!」


「ごめんなユーキ。明日はユーキの番だから、明日ゆっくり遊ぼうな。じゃあ行ってくる。」


 プンプン怒ってる僕をお母さんが抱っこして、その間にお父さんお部屋から出て行っちゃいました。ブー。明日も遊ぶけど、今日も遊びたかった。


 僕お父さんが遊びに行っちゃってからずっと怒ってました。夜のご飯の時もお風呂の時もずっとです。お兄ちゃん達がご飯のあと遊んでくれるって言ったけど、僕今日は遊びたくありません。お部屋の端っこの所にエシェットに木の板持ってきてもらって、小さな僕達だけが入れるお部屋作ってもらいました。お部屋の中見ていいのはマシロとエシェットとルトブルだけだよ。僕怒ってるんだから。


「どうしようかしらあそこで寝ちゃったら。」


「まさか小さい部屋作っちゃうとは思わなかったね。板立ててるだけだけど。良いんじゃない。ほら見て、部屋の隅っこマシロが座りながらしっぽだけ中に入れてる。きっとあのしっぽに寄っかかってるはずだから、そのまま寝れるはずだよ。マシロのしっぽ温かいから大丈夫。」


「あれ良いよなぁ。ふわふわでもふもふであったかくて。俺も1度寝てみたいんだよなぁ。」


 もう、お父さんなんかプンプンです。僕が怒ってたらエシェットがお話してきました。あんまり怒っちゃダメって。エシェットまでそんな事言うの?どうして?


「遊べるとかってに思ったのはユーキ達だろう。ウイリアムがちゃんとユーキ達に遊びに行くと言ったのか?」


「エシェットは、あしょびにいきたくないでしゅか?」


「我だったら、朝から夜まで遊びに行きたい。夕方から遊んではすぐに帰る時間になってしまうぞ。しかも子供が入れないと言っていた。確か子供が入れない店は、お酒ばかり飲む店じゃなかったか。ユーキの嫌いなお酒だぞ。」


 それ聞いて僕はハッとしました。お酒僕嫌い。とっても臭いんだもん。でもねディルとリュカにキミルはとってもニコニコです。お酒飲んで頭の痛くなるお父さん、追いかけるの好きだから。

 それにそう言えば、お父さんちゃんと僕達に遊びに行くって言わなかった。いつもはちゃんと言ってくれるのに…。

 お父さん帰って来たらごめんなさいして、明日は朝から連れて行ってもらおう!それでたくさんお菓子とおもちゃ買ってもらうんだ!


「あらあら、エシェットが説得してくれたみたいねぇ。」


「そうですわね。まさかエシェットが説得してくれるなんて。でも明日きっと大変ね。朝はお酒の飲み過ぎで具合が悪いのに、妖精2人はなんて言ってたか分からないけれど、キミルは追いかけるって言ってますからね。」


 僕少しだけプンプンが治りました。でもやっぱり少しだけお店通り行きたかったなあ。でも明日までがまんがまん。

 それでね今日はせっかく僕達のお部屋作ったから、ここで寝る事にしました。マシロのもふもふであったかいしっぽが今日のベッドです。マシロベッド久しぶり。それに近くにベッドがあるからお母さん寝るの見えるから怖くないし。


「そうだ!キミルねユーキが元気になるように、お花持ってきてあげる。今日の朝のお散歩のとき、また可愛い花見つけたの。ピンクと黄色のお花だよ。すぐに持ってくるから待ってて。」


 キミルはモリオンと一緒にお花摘みに行っちゃいました。キミルがモリオンにテレパシーで場所教えて、モリオンが闇魔法使ってその場所に行ったから、すぐに帰って来れます。僕はその間にお母さんとお兄ちゃん達と、歯を磨いておトイレに行って、寝る準備して待ってました。準備が終わってすぐに小さいお部屋に戻ります。これでいつ2人が戻って来ても、お父さんが帰って来ても大丈夫。


 それでね本当にすぐに2人共帰って来ました。2人共凄くニコニコしてます。お花摘みに行って、他にもたくさん可愛いお花見つけたみたい。モリオンが闇に入れて持って帰って来てくれたから、今から小さいお部屋に全部出すって。このお花もキミルがいるから枯れないよって。


 モリオンが僕の頭の上に乗っかってちょっとだけ光ったら、たくさんのお花が降ってきました。ピンクに黄色に青に赤にそれから虹色に、いっぱい可愛いお花が降ってきます。


「きゃあぁぁぁ!おはなのゆきでしゅう!」


「凄い!こんなに摘んできたの?」


「わぁ、花のベッドだ!!」


 ディルがお花の中に飛び込みます。それに続いてリュカやシルフィーも飛び込みました。シルフィーはお花クンクンしてそれから小ちゃなしっぽふりふりです。


「お花良い匂い。」


 今日はマシロベッドに寝て、お花のお布団かぶって寝るんだ。それにシルフィーが良い匂いって言ってたでしょう。ほんとにいい匂いなんだ。このお花枯れないんだよね?お家に帰ったら、僕のお昼寝のベッドこれにしてもらおう!


「か、母さんあれ?!」


「嫌だわ。あの人帰ってきたら、きっとまた叫ぶわよ。はあ、お母さんもう少ししたらあの人のこと下で待ってます。ここで急に見て叫ばれるより、先に知った方が良いでしょうから。2人ともユーキちゃんのことお願いね。」


「任せて。それに父さん帰ってくるまでに寝ちゃうんじゃない?それにしてもあれだけ珍しい花ばっかり持って来るなんて。はあ、知らないから仕方ないけど…。」


「あんなに何処に咲いてたんだろうな。」


(ウイリアム視点)

 プンプン怒るユーキを残し、ジャニスと約束した店へと急いだ。本当はもっと早く会うつもりだったが、いろいろあったからな。久しぶりでお酒も進み、帰りはかなり良い気分で城に戻ったのだが、そこで私を待ち受けていたのは、またまたユーキ達のやらかしだった。


 城に戻ると玄関ホールでオリビアが私を待っていた。こんなことは滅多にないので、また何か悪い事が起こったのかと思い、慌ててオリビアに駆け寄る。そしてある意味私の考えは間違っていなかった。


 部屋に戻ると、アンソニー達もすでに眠りについていた。母さんは起きていたが、私を見て苦笑いしている。 

 あれか?部屋の隅に、木の板で囲まれているところがある。マシロとエシェットがニヤっと笑ったのが分かった。ルトブルはいつも通り無表情だが。そっと近づき中を見る。そこには花に埋もれて寝ているユーキ達の姿があった。それはもう、全て珍しい花に埋もれて寝ているユーキ達の姿が…。


 話に聞いていたが叫びそうになった。慌てて口を押さえすぐにエイムの所へ向かった。そして国王様と殿下を呼びに行ってもらう。

 すぐにお2人は部屋に来られ、ユーキ達の埋もれている花々を確認された。


「これは…?!凄いな。これだけの珍しい花が揃うなんて。あの赤い花なんか、見つかったのは3年ぶりか?それにあの黄色い花は5年ぶりくらいだ。」


「まさかこんなに珍しい花を1度に見られるとは。」


「申し訳ありません。まさかこんなことになっているとは。」


 頭を下げる私に、お2人は静かに笑いながら、別の部屋に移動するように言ってきた。部屋を移動し話し合う。


「あれは精霊様が見つけてきたものだ。我々が口を出すものではない。他の者にも言わぬが、持ち帰る際は見つからないように気をつけるのじゃぞ。」


「はい。」


「それからのう。ユーキのことじゃが、まだ小さいから何とも言えんが、少しずつ、少しずつで良い。あまり人に見せてはいけない物を教えて言った方が良いじゃろう。」


 国王様はユーキの事をかなり気にかけてくださった。ユーキ本人が規格外だが、それに加えユーキの周りには規格外が多すぎる。そしてさらに規格外が規格外な事をする。そのせいでユーキが傷つくかもしれないと。


 話が終わり部屋に戻ると、もう1度ユーキ達を見る。はぁ、くろにゃんかモリオンに頼んでしまって帰ってもらおう。家に帰るまで絶対出すなと言って。

 すっかり酔いが覚めてしまった。まあ、そのおかげで明日のちびコンビの悪戯は受けなくても良さそうだが…。


 次の日起きてきたユーキは私に昨日怒った事を謝ってきた。そういうところが良い所だ。そしてすぐに花をしまってもらい、絶対に出すなと何度も注意した。具合の悪くない私を見て、ちびコンビが残念そうにしているとユーキに聞きホッと胸を撫で下ろす。

 その日1日お店通りで遊んだユーキは、夜寝る時までずっとニコニコだった。寝顔を見ながら、国王様に言われた事を思い出す。

 こんな小さい体で、どれだけの事を覚えられるか…。本当に少しずつ覚えていかせるしかないな。

 そういえば、キミルの散歩は私がついて行かないと禁止っていうことにするか?

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