第154話お父さん達が帰って来るよ!

 お座りしてくれたグリフォンの頭をなでなでしようと思ったんだけど、前のエシェットみたい。グリフォン大きいから足のところしかなでなで出来ません。


「なでなで、できないでしゅう。」


「ふむ…。おい、背中に乗ってもいいか。」


 エシェットがお願いしてくれました。


「我からも頼む。ユーキのおかげで皆自由になれたんだ。」


 ルトブルもお願いしてくれたよ。そしたらグリフォンがキュイキュイって鳴いて良いよって言ってくれたみたい。エシェットが僕のこと抱っこしてグリフォンの背中に乗りました。僕だけ背中に乗っても頭に届かないから。やっと頭に手が届いてなでなでです。


 凄くふわふわでサラサラなおけけでした。マシロみたい。とっても気持ちいいんだぁ。マシロはとっても気持ちいいマシロベッドだけど、グリフォンもおんなじになれるね。でもお父さんとお母さんと寝るのも大好きだよ。


 ずっと触ってなでなでしてたいけど終わりです。背中から降りて足に抱きついて、もう1度ありがとうしました。


「キュイキュイィィィ!!」


「なでなでがとても気持ち良かったと言っているぞ。それに、グリフォンもユーキにありがとうと言っている。」


 エシェットがそう言ったら、グリフォンが頭を下げました。


「えへへへ、どいたちまちてでしゅう。」


 ありがとうって言ってもらえたよ、嬉しいなぁ。それでね少しお話があるって言って、ルトブルとグリフォンがちょっと離れた所でお話し始めました。

 僕はお父さん達が帰って来るの見えるかなって思って、下を覗きました。う~ん。人が動いてるのは見えるけど、あんまりよく見えない。


「あんまり覗き込むと落ちるぞ。」


 マシロが僕のお洋服噛んで落ちないようにしてくれました。あれ、なんかに似てるね。いつも見てるやつ。………そうだ!


「ありんこしゃんみちゃい。いつもああやってうごいてるでしゅ。」


「そう言えばそうだな。確かにアリだ。ん?」


 エシェットどうしたの?少しの間人間アリさんを見てたエシェット。それから僕の方を見て笑いました。


「ウイリアムとオリビアが戻って来るぞ。」


 お父さん達戻って来る!!お帰りなさいしなきゃ。僕は急いで下に行こうとしました。でもドアのところ、まだあの黒服さんが居るの。アシェルに踏まれて。邪魔だね。それにずっとモリオンに話しかけてるし。邪魔だしうるさい。


「もう!煩いな!!」


 モリオンがとっても怒って、それでね何かぶつぶつ言ったら、黒服さんのお顔に黒いモヤモヤがくっつきました。体は暴れてるけど、声が聞こえなくなってとっても静か。息は出来るから大丈夫だよって。ふう、うるさかったぁ。

 ルトブルにお帰りなさいしにいくって言ったけど、グリフォンとまだお話があるから後から来るって。早く来てね。僕はグリフォンにバイバイしてお城の中に入ります。


 エシェットが黒服さん達を、足で転がしながら廊下を進んで行きます。穴が空いちゃってるところとかは投げてました。エイムさんに黒服さん達を入れておくお部屋聞いて、最後にマシロが後ろ足で蹴り上げて、お部屋の中に入れました。これで完了です。アシェルとエイムさん、騎士さんがお部屋に残る事になりました。

 お兄ちゃん達とまた下り始めます。黒服さん達のせいで、まだお城半分も下りてない。早く行かないとお父さん達帰ってきちゃうよ。


 下に下りていくけど、上ってきた時よりお城の中がボロボロになっちゃってました。3階から2階に下りる階段は、まぁるい穴が空いちゃってて、通れなくなっちゃってました。お兄ちゃん達は少しだけ残ってる階段の所を、1歩ずつ進んでいきます。僕は…。


「にいしゃん!はやくでしゅう!」


「いやいや、ユーキ、僕達そんなに早く歩けないから。っていうかそもそも1歩で下りれるのなんて無理だから。ちょっとそこで待ってて!」


 僕はエシェットに抱っこしてもらって、ジャンプしてもらって、すぐに下におりました。マシロにはシルフィー達が乗っかって、やっぱり1回ジャンプで下まで下りて、くろにゃんもジャンプ1回で下りたよ。みんな乗せて貰えば良かったのに。

 やっと下りてきたお兄ちゃん達に早く早くっていって、最後の大きな玄関ホールに下りる階段を下ります。この大きな階段はちょっとしか壊れてなかったけど、僕はそのままエシェットとジャンプで下りちゃいました。


 ちょうど下りた時、壊れた大きなドアから、お父さん達が入ってきました。


「とうしゃん!かあしゃん!」


「ユーキちゃん!!」


 僕は急いで抱っこから下りてお母さんに抱きつきます。お母さんがぎゅうって抱きしめてくれました。それから抱っこしてもらってる僕の頭を、お父さんがなでなでしてくれます。


「ユーキちゃん怪我とかしなかった。もうお母さん心配で心配で。心配し過ぎて魔獣斬り刻んじゃったわ。」


「だいじょぶでしゅう。えっとモリオンがゆめから、だしてくれたでしゅよ。」


「夢?出してくれた?どういう事なの?」


 お母さんとお父さんに報告することいっぱい。ルトブルとお友達になって、夢の中に閉じ込められちゃったことでしょう。それからモリオンが黒服さん達、魔法使えなくしてくれたでしょう。あと、マシロとエシェットとグリフォンがたくさん魔獣飛ばしたこと。いっぱいいっぱいお話しなきゃ。


 何からお話しようかな?僕が考えてる間にお兄ちゃん達が階段を下りて、僕の後ろに居ました。お母さんが僕を下ろしてお父さんと一緒にお辞儀しました。


(ウイリアム視点)

 階段から殿下とアンソニー達が下りて来た。何か考え込んでいるユーキをオリビアが下ろし殿下に挨拶をする。


「そのままで良い。それで、そちらの状況は。どのくらいの死者が出ていそうだ。」


 私はここまでに見てきたもの、聞いてきたものを殿下に伝えた。

 運が良いというか何というか、私が知る限りでは死者の確認はできていない。最初のアスピドケロンの攻撃でどれだけ多くの死者がでたかと思っていたが、まさか街の住人が避難している地下のシェルターを、全て避けて攻撃されていたとは。しかも魔獣達のために戦う準備をしていた騎士や冒険者にも、死者は出ていないらしい。全てを見てこれたわけではないため正確には言えないが、それでもこれはとてもいい情報だ。


「それとどうもこれは、今回私達が報告したもう1つの方、黒服の組織に関係しているようです。戦いの最後の方で、奴らの仲間と思われる者達を何人も捕まえました。これから騎士が連れてきます。」


「そのことだが、こちらではその組織の最重要人物を捕まえたのだ。今エイムとアシェル、騎士達に見張らせている。」


「本当ですか?!」


「モリオンがやみけちて、おかおぐるぐるでしゅよ。」


「あらそうなの?お顔がぐるぐるなのね。」


 何か考え込んでいたユーキが復活して話に入ってきた。さっきからユーキの言っていることが全く分からない。本人はとってもいい笑顔で話しているが。


「父さんいろいろあったんだよ。というかあり過ぎたというか…。」


「父さん覚悟しておいた方がいいよ。さすがの俺も、今回はユーキのやらかしっぷりに驚いたから。」


「ジョシュアは笑ってたでしょう。」


 2人の苦笑いを見た後、次にエシェット達とニコニコのユーキを見て、最後に殿下を見た。殿下も苦笑いをしている。それから、


「まぁ、なんだ。多分この話は父上と一緒に聞いた方が良いだろう。その方が1回で話が終わるし、それに心の準備が必要だろうからな。とりあえず、まずは運ばれてくる黒服達をどうにかしなければ。」


 何だ?嫌な汗が背中を流れる。ユーキ今度は何をしたんだ。心の準備が必要な程の事をしたのか?


 とりあえず襲ってくる魔獣も黒服もいなくなったために、ユーキ達を壊れていない部屋に移動させてもらい、我々は連れて来られた黒服を、それぞれエシェットとシャーナに部屋に結界を張ってもらい逃げられないようにし閉じ込めた。

 それから殿下は国王様が指揮をしている特別な部屋へと向かって行った。その部屋に行けない我々は1度ユーキ達の所へ戻ることになった。我々が知ることの出来ない城の何処かにある、こういう事件が起きた時に国王を守るための部屋。そこから国王様は殿下と信用の出来る者達にだけ指示を出す。


 部屋に戻ると相変わらずニコニコのユーキが、またタタタタタッと駆け寄ってきた。ひょいと抱いてやり部屋の中を見る。そして私は固まった。

 …何故ここにグリフォンが居る?!それにあの男は誰だ?!私は軽いパニックに陥った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る