第143話みんな頑張れ!!


 黒い丸をくぐる時、ぎゅって目を瞑ります。そんな事しなくても大丈夫ってモリオンに言われたけど、入る瞬間はどうしても目を瞑っちゃう。すぐに周りが明るくなった気がしました。目を開けると、僕達が泊まってたお部屋です。半分に割れちゃってるけど…。


「ね、大丈夫って言ったでしょ。」


 マシロがすぐに結界を張ってくれました。僕はその間に確認。お菓子の箱が積んであった所を見たら、箱は全部大丈夫そうです。エシェット達に作ったプレゼントの箱もね。それから、ベッド置いてあった僕のおままごとセットと、ぬいぐるみも大丈夫でした。でも、これからどうしよう。もしかしたらまた攻撃されて壊されちゃうかも。くろにゃんが居れば、しまって貰えるのに。僕がそう言ったらマシロが、


「モリオンも運べるぞ。モリオン、あそこの箱全部と。あれはベッドと言うのだが、あの上にあるおもちゃと、あとあれはぬいぐるみと言うのだが、全部しまって置いてくれないか。主の大切な物なのだ。後でモリオンも遊べるし、さっきの美味しいお菓子もたくさん食べられるぞ。」


「ほんと!!僕、全部しまっちゃうよ!!」


 そう言ってモリオンは飛び回って、全部闇の中にしまってくれました。さっきの丸い黒みたいなのに、闇の力で箱とか持ち上げて、ポイポイ投げ入れていきます。壊さないでね。それにお菓子ボロボロにしないで。僕ちょっと心配。

 全部しまって貰って、急いでお兄ちゃん達の所へ向かおうとした時、いきなりくろにゃんが闇から出てきました。それで僕に駆け寄って来て、お顔すりすりしてくれます。


「ユーキ大丈夫か。怪我してないか。」


「だいじょぶでしゅう。くろにゃんもだいじょぶでしゅか?」


「エシェットが闇の精霊と一緒に戦えと。お前が闇の精霊か。」


「お前じゃないよ。モリオンだよ。僕は闇の精霊なんだから、お前の力の源なんだぞ。ちゃんと名前で呼ばないと、力貸さないからね。」


 モリオン、シルフィー達とお話した時、くろにゃん達の事もお話してたみたい。くろにゃんの事知ってました。それで、マシロと3人でお話し合いして、くろにゃんとモリオンは、エシェット達の所に行きます。


「よし、僕早くユーキ達と遊びたいから、頑張ってさっさと倒してくるよ。ね、くろにゃん。僕が力貸してあげるんだから、さっさと倒してね。」


 くろにゃんは何かぶつぶつ言ってたけど、頭の上にモリオン乗せて、影の中に消えて行きます。僕は2人が消える前に、2人を応援。


「くろにゃん、モリオン、がんばれでしゅう!あとで、おかしでしゅよ!」


 モリオンが手を振って、くろにゃんはしっぽを振って、影に消えて行きました。僕達もお兄ちゃん達の所に急ぎます。


 お兄ちゃん達がいるのは、お城の1階の玄関ホールです。たくさんの騎士さんが、いろいろな所を守って戦ってます。最初のエシェットの結界は壊れちゃったけど、またエシェットが結界を張ってくれたみたい。だから今いる魔獣倒せばいいんだって。


 玄関ホールに行くと、お兄ちゃん達とサルバドールさん、それから騎士さん達が、魔獣と戦ってました。お父さんがマシロから飛び降りて、ジョシュアお兄ちゃんが戦ってた魔獣に斬りかかりました。魔獣がドサぁーって倒れます。


「父さん!!」


「旦那様御無事で。」


「2人とも頑張ったな。ユーキの所へ行って少し休め。それと、ユーキを守ってくれ。危なくてあの泊まってる部屋に置いて置けなかった。」


「「はい!!」」


 お兄ちゃんが僕の所に走って来て、マシロがお兄ちゃん達も結界の中に入れてくれます。それで2人が僕の事、ぎゅううううってしてくれました。それから皆んなでお父さん達が戦うところを見ます。

 お父さん達とっても強いよ。今まで見た中で1番強いの。僕、ばあばの弓見えなかったけど、今のお父さん達の剣も見えません。お父さん達が魔獣に近づいて、それで離れると、魔獣が倒れちゃうんだ。ね、凄いよねぇ。

 僕の周りで、ディルとリュカとキミルがお父さん達の真似して、剣を振る真似します。シルフィーは…。僕に抱っこされてこっくりこっくりしてます。マシロの風結界の中、とっても静かなんだ。だから眠くなっちゃったみたい。


 最初はたくさんいた魔獣も、だんだん少なくなって来て、新しく入ってくる魔獣もいなくなりました。他のお城の周りに居た魔獣も、騎士さん達が頑張ったから、もうほとんどいないってマシロが教えてくれたよ。


 それで、玄関ホールにいた最後の魔獣を倒した時、マシロが叫びました。


「城の周りに残ってた、イーヴィルモンキーの変異種がこちらに集まって来たぞ。3体だ。なかなかの魔力の持ち主だ。気を付けろ!!」


 お父さん達が剣を構えます。他の騎士さんも。僕はマシロにお願いしました。


「マシロ、とうしゃんとアシェルてちゅだってくだしゃい。ぼく、にいしゃんとここにいるでしゅ。」


「絶対にここから出るな。」


「はいでしゅ!!」


「お前達もだ。主の側にいろ。」


 お兄ちゃん達が頷きます。マシロが結界から出て行って、お父さん達の隣に並びました。玄関の大きくて重たいドアが、いきなりガガガッ、ギギギィ、バリバリバリッて音がして、外れちゃいました。騎士さんこれでもう重いドア開けなくてすむね。

 ドアを壊して入って来たのは、大きなお猿さん。イーヴィルモンキーです。僕が最初に見た時のお猿さんは白かったけど、今ドアの所にいるのは赤色です。


「あれはとっても強いイーヴィルモンキーだよ。マシロと同じ、普通のイーヴィルモンキーじゃないんだ。」


 リュカが説明してくれてたら、いつのまにか起きてたシルフィーが、前に見た事があるって教えてくれました。前にエシェット達がいた森に、今と同じ色のイーヴィルモンキーが居たんだって。突然現れて、森の魔獣達襲って、お怪我した魔獣たくさん居たんだって。それでね怒ったエシェットがそのイーヴィルモンキー倒したんだって。


「エシェットが叩いたら、どっか飛んでちゃった。森を通り越して、たくさんの森や林を飛び越したから、もう2度と現れないって。エシェット言ってた。リュカ、あいつ弱い。マシロいるから大丈夫。」


「………。それ、エシェットだったからじゃない?ま、でも確かにマシロ居るから大丈夫だよね。」


「エシェット凄いな。オレ、それ見てみたかった!」


「キミルも!!」


 僕も見たかったな。お猿さん飛んで行くところ。マシロもやってくれないかな?あっ、でもマシロは噛みつくの得意だよね。魔力石粉々にしちゃうんだから。お猿さんのあの黒いお尻、噛んでくれないかな。お猿さんのお尻の所、ちょうど黒くなってて、噛みやすいと思うんだけど?皆んなにそう言ったら、皆んなもそれ面白そうって。


「何だろう。とっても今危ない状況のはずなのに、緊張感が全くないんだけど。」


「ぷっ、想像したら、クククッ」


(ウイリアム視点)

 何を話してるんだまったく。隣で殿下が肩を震わせている。アシェルも苦笑いだ。目の前にイーヴィルモンキーの変異種がいるんだぞ。


「ふむ。主はそれが見たいのか。チャンスがあればやってやろう。とっても喜ぶ顔が見られるだろうからな。」


 マシロまで何を言ってるんだ。はぁ。ユーキ達が何か考えれば、緊張感も何もかもなくなってしまう。まあ、あんまり緊張するのも良くないが、あんまり力が抜けるのもなぁ。だが、イーヴィルモンキーの変異種を前に、肩に力が入り過ぎていたからな。今回は良しとするか。


 イーヴィルモンキーは、最初すぐに襲ってくる勢いだったが、マシロに気づきその場に止まった。マシロの力を感じたのだろう。睨み合いが続く。

 最初に動いたのは、イーヴィルモンキーの1匹だった。マシロが我々に指示を出した。


「2匹は任せろ!お前達はそっちの1匹をどうにかしろ。我もこちらを倒したら、手伝ってやる。」


 殿下、私、アシェルで攻撃をし、他の騎士達がイーヴィルモンキーが、場所を移動しないように支援する。

 このイーヴィルモンキー達を倒せば、城の方はとりあえず大丈夫になる。そうしたら次はオリビア達の所へ行かなければ。

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