第140話岩のお人形

「外に行ったら何しようかな!」


 精霊さんがとっても喜んでます。そうだ。そろそろ元の場所に戻らなくちゃ。お父さん心配してるよ。


「せいれいしゃん、とうしゃんところ、もどちてくだしゃい。とうしゃんしんぱいちてるでしゅ。ぼくも、とうしゃんとこ、かえりたいでしゅ。」


「もうすぐ戻れるよ。もう虹色の石の空間は消えるはずだから。」


 精霊さんがそう言ってから少しして、またお部屋の中が光始めました。さっきとおんなじ。皆んな一緒にかたまります。眩しくなって目を瞑って。それから。


「ユーキ!!」


 お父さんの声がしました。目を開けたら目の前にお父さんが居ました。お父さんは良かった良かったって言って、抱きしめて来ました。さっき僕達が真っ白のお部屋にいた時、お父さんの前で僕達、固まってたんだって。全然動かなくてとっても心配したって。お父さんごめんなさい。でも、いろいろいい事があったんだよ。


 マシロが何してたか、お父さんに全部説明してくれました。僕じゃダメだって。もう、いつも僕の説明じゃダメって言うんだから。プンプン。前よりも上手に説明出来る様になったよ。たぶん…。

 マシロからお話聞いたお父さん、とってもガックリしてました。何で?でも、ゲンコツはないみたい。よかったぁ。


「何でユーキはいつもいつも、いろいろやらかすんだ。今度は虹色の石と闇の精霊か…。それで、ユーキの体に害はないんだな。」


「ああ、それは大丈夫だ。魔力が強くなったくらいだろう。だがそれも今は関係ない。主は小さいからな。これからの訓練次第だ。力を使わなければ、問題ない。」


「そうか。それと、闇の精霊とは契約してないんだな。」


「まあ、そうだが…。ちょっと話してくる。」


 そう言ってマシロは、部屋の中飛び回ってる闇の精霊さんの所に行きました。シルフィー達もね。僕は皆んながお話してる間、お父さんと一緒に、お部屋の中見てました。台と石の棒以外には、何もないみたい。お部屋の1番奥まで来た時、あのふにゃふにゃ文字を見つけました。何でこんな所に書いてあるんだろう?お父さんに報告しようとしたとき、マシロ達のお話合いが終わりました。


「闇の精霊は、主と契約したいそうだ。ディル達の話を聞いて、楽しそうだと思ったらしい。我も賛成だ。何しろ今まで外に出た事がないからな。外の事を何も知らないで出て行ったら、すぐに死んでしまうかもしれん。それに闇の精霊だ。くろにゃんと相性がいい。」


「はあ、絶対そうなると思ったんだ。はぁ、また報告する事ができたじゃないか…。国王様は喜びそうだが…。」


 精霊さん、お友達になってくれるの?本当?やったぁ!!またお友達増えたよ。さっそくお友達になる準備しなくちゃね。精霊さん、お名前あるのかな?

 なんかガックリしてるお父さんの横を通り過ぎて、精霊さんの前に立ちます。


「せいれいしゃん、おなまえ、あるでしゅか?」


「うん。僕の名前はモリオンだよ。ユーキ、僕とお友達になって。」


「はいでしゅ!モリオン、おともだちになってくだしゃい!」


 モリオンが皆んなとお友達になった時みたいに、少しだけ光ってすぐに元通り。チョウチョみたいな羽が、少しキラキラの羽に変わりました。皆んなで拍手です。お父さんはずっとぶつぶつ言ってました。


 モリオンがすぐにお外に行こうって言ったんだけど、マシロや皆んなが止めました。お外はきっとまだ危ないからね。お怪我しちゃうかも知れない。モリオンはそのお話聞いて、何か思い出したみたい。急に慌てだしたんだ。


「どうしたでしゅか?」


「大変大変。僕、あの文字消すの忘れてた!急がなきゃ!」


 そう言って、僕がさっきお部屋の奥で見つけた、文字の方に飛んで行きます。お父さんにあそこに文字がある事言ったら、何か嫌な予感がするって。マシロがモリオンの隣に行きます。


「どうしたんだ?」


「虹色の石が消えたら、すぐに僕がこの文字を消す事になってたんだ。ちゃんと持ち主に渡した時はね。もし盗まれた時のために、昔の人はこれ作ってたんだ。取り返すための石の人形。早くしないと動いちゃう!」


 モリオンはパタパタ、一生懸命に飛んで何かしてます。戻って来たマシロは何か起きるかも知れないから、この洞窟から出ようって言ってます。モリオン残して行けないよ。


「僕は大丈夫。闇に隠れられるから。ユーキ達は洞窟の前で待ってて!」


 そう言われて、僕はマシロに乗って洞窟の外に出ます。入る時にお父さんがつけた光の魔力石はいつの間にか消えちゃってて、リュカが周りを明るくしてくれます。石は壊れちゃってました。古い石だったからだろうってマシロが。

 やっと入り口まで戻って、そこでモリオンを待ちます。でも、なかなかモリオン出てこないんだ。

 あっ!洞窟の向こうから、キラキラしたの見えた!


「マシロ、モリオンきたでしゅ!」


「ああ、だが…。それにこの感じ。ウイリアム、逃げるぞ!」


 凄いスピードでモリオンが洞窟から出て来ます。それでね、


「皆んな逃げて!!」


 って。凄く慌てた顔してます。


「ウイリアム!我に乗れ!壁を走る!!」


 お父さんが急いで僕の後ろに乗りました。お父さんが乗ったとき、洞窟の横の所の壁が、ドッガァーン!!って大きい音して壊れました。それで中から、お父さんの2倍くらいの、大きな岩の人形?が出て来ました。それも2つも。目のところが赤く光ってて、それで僕達見て、僕達の事を攻撃して来ました。マシロがサッて攻撃避けて走り出します。壁を走ったり、地面を走ったり。マシロが風魔法で、僕達が落ちないようにしてくれてます。


「とうしゃん、あれなんでしゅか!!」


「お父さんにも分からない!マシロ!」


「我も見たのは初めてだ!モリオン、アレは何だ!!」


「昔の人間が作った岩の人形だよ。勝手に石を持って行こうとしたら、その持って行こうとした人間をやっつけるために作ったんだ。」


 昔の人達が、虹色の石を守るために作ったんだって。もしかしたらモリオンだけじゃ、守れないかもしれないから。それでね、あの岩のお人形は魔力石で動いてるんだって。その石を取っちゃうか、壊しちゃえばあの人形止まるんだって。

 本当は僕が虹色の石もらったらすぐに、さっきの壁のところの字を消すはずだったんだけど、モリオン忘れてたんだって。あの文字は人形を動かすための文字だったんだ。


「こんな危ない物の事を忘れるなど。主を危険にさらしおって。」


「ごめんって。外に出れるのが嬉しくて、忘れてたんだよ。ほら来るよ。逃げて逃げて!」


 マシロの走るスピードが速くなります。でもちゃんとお人形もついてくるんだ。それからいろいろな攻撃してきます。火と水と風とそれから土の攻撃。その4つの魔力石が人形の中に入ってるんだって。

 マシロは逃げながら、人形に攻撃します。でも、避けられちゃって、全然当たらないんだ。


「ちっ!らちがあかん!ウイリアムこれからもう少しスピードを上げて、奴らを引き離す。そうしたら我の風魔法で結界を張る。その中でじっとしていろ。我1人ならば、戦いやすい。モリオンお主も手伝え。我が奴らを動けなくしたら、闇に引きずり込め!出来るだろう?」


「うん。少しでも止まってくれたら出来るよ!」


 マシロ1人で戦うって。危なくない?お怪我とかしないかな。お怪我してもディルがいるからすぐに治してもらえるけど、でもお怪我しないのがいいよね。

 僕は走ってるマシロの頭なでなでしました。それから1人で大丈夫か聞きました。僕、何にも出来ないけど、少しだけなら魔力貸してあげられるよ。前に黒服の人達から逃げた時みたいに。お父さんに怒られちゃうかも知れないけど。でも、マシロがお怪我する方がヤダ。


「主、大丈夫だ。あれくらい我には何て事ない。すぐに終わる。」


 スピードを上げたマシロ。人形が離れました。見えなくなってからマシロが僕達を下ろして、風で結界を張ってくれます。僕はお父さんの洋服ギュッて掴みました。お父さんは僕の頭なでなでしてくれて、


「大丈夫マシロは強い。マシロが言っただろう。すぐに終わる。だからあのお人形に勝ったら、ちゃんとありがとうしような。」


「はいでしゅ!ぼく、ましろおうえんしゅるでしゅ!!がんばれー!!」


 僕は両手を上げて、マシロを応援。ディル達も皆んなで応援です。頑張ってマシロ!終わったら、ありがとうとなでなでと、それからお部屋に戻れたら、お菓子たくさんあげるからね。

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