第139話虹色と黒色

 太い石の棒の上に、ディルとリュカを一緒にしたくらいの虹色の石が、キラキラ輝いて浮かんでました。よく見たら台の上にも石があります。こっちの石は虹色の石よりも少し小さくて、黒色の石でした。黒色の石も浮かんでます。


「これは…?!魔力石か?闇の石はまあ、普通に見るものだが、ずいぶん大きいな。まあそれはいいが…。それよりも、虹色の魔力石など見た事がない。古書にも記載がないはずだ。」


 僕はマシロに乗ったまま台の方に近づきます。


「こら、あんまり近寄るんじゃない。何かあったらどうする。」


「大丈夫だ。何も感じるものはない。」


 それ聞いてお父さんも近寄ってきます。僕達が近づいても、石は輝いたまま浮かんでます。そう言えばこの虹色の石、シルフィーのおでこの石と似てるね。


「シルフィー、おでこのいし、おなじでしゅね。」


「虹色は一緒。でも、力は違う感じ。僕のは僕の虹の石って感じ。」


「???」


 よく分かんないよ。おでこの石はシルフィーの石だよ。決まってるよね。お父さんが虹の石見たあと、黒い石見ます。それから台の上を手で叩きました。フワって何かホコリみたいなのが飛び散ります。僕それ吸っちゃった。くしゅん、くしゅん。くしゃみが止まんなくなっちゃったよ。


「ああ、すまんすまん、ユーキほらチンしろ。」


 お父さんはハンカチみたいなの出して、それにチンしました。やっとくしゃみ止まったよ。ふう、お鼻がくしゅくしゅした。それからお父さんはまた台を見ます。


「ん?これは…、何かの文字か?こんな文字見たことないな。昔の文字とも違う。そう言えば、ここの地層は何千年も前のものだったな。それだけ昔なら文字も変わってくるか。」


 お父さん1人でぶつぶつ言ってます。何が書いてあるの?僕もみたい。


「とうしゃん、ぼくも!ぼくも!」


 お父さんが抱っこしてくれて、台の上が全部見えます。台の上には、ふにゃふにゃしてる文字みたいなのが書いてあります。台の上全部だよ。それにね、浮かんでる黒い石の下には、丸い絵が書いてありました。その丸い絵も少し光ってるんだ。マシロが前足上げて、台に手を付きます。シルフィーはマシロの背中を登って台の上に。


「あれ?マシロ。この絵似てる。」


「そう言えばそうだな。あれに似ているが。だが魔力石にそんな事しても仕方あるまい。」


 お父さんはそのまま台を調べ始めました。僕は下ろしてもらって、お父さんの真似して虹色の石の方を調べます。冒険はいろいろ調べるのも大事。絵本に書いてあったもん。

 僕は太い石の棒を1周して、棒の下のところを調べます。棒の下にも変な文字があって、棒の所にも書いてありました。棒全部に文字が書いてあるの。何て書いてあるんだろうね。僕、今の文字もまだあんまり読めない。お父さん達の名前は読めるようになったんだけど…。


 よし次!今度は石を調べてみよう。あの石、どうやって浮かんでるのかな?僕の見たことある魔力石は、浮かんだりしないよ。マシロに乗っかって、虹色の石に近づきます。でも、マシロに乗っても、石の所に届きません。やっぱりお父さんに抱っこしてもらわないとダメ。台を調べてるお父さんを呼ぼうとした時、虹色の石が、強く光り出しました。


「何だ?!ユーキ!!」


「主!!」


 それでその光がもっと強くなって、お部屋の中がどんどん真っ白になります。僕は目を瞑りました。お父さんの声とか、マシロの声とか、皆んなの声が聞こえます。少しして周りが静かになりました。


「主、目を開けろ。」


 マシロがそう言ったから目を開けたら、周りは真っ白。ここに来る前の、神様のお部屋みたいです。あと、虹色の石が浮かんでます。黒色の石もね。マシロやシルフィー達はいるのに、お父さんが居ません。どこ行っちゃったの?泣きそうになった僕を、後ろからマシロがしっぽで包んでくれます。


「とうしゃ…。どこ?」


「大丈夫だよ。外の空間にいるから。凄いね、そんなに契約してるんだ。それに僕の仲間も居るし。」


 突然知らない声が聞こえて来ました。それから黒い石が光り始めました。少しして黒い石がなくなってそこに居たのは、黒い洋服着た、小さな小さな男の子。ディル達と同じくらいの大きさです。背中には黒いチョウチョみたいな羽が付いてます。それからおでこに変なさっきの文字みたいのが。その男の子を見て、シルフィーとキミルが近づきました。


 3人がおでこくっつけて、前にシルフィーとキミルがテレパシーでお話してた時と同じだね。あれ?精霊さんのテレパシーは精霊さんしか分からないんだよね。じゃあ、あの黒い男の子、精霊さんなの?3人がお話終わるの待ちます。


「マシロ、あのおとこのこ、せいれいしゃん?」


「おそらくな。だがなぜこんな所に。」


 少ししてお話終わったみたい。シルフィーとキミルが戻って来ました。黒い男の子は虹色の石の所に行きます。シルフィーがお話してくれました。

 黒い男の子はやっぱり精霊さんでした。闇の力を使う精霊さん。ずっとここに居て、この虹色の石を守ってたんだって。虹色の石を守る3人目の精霊さん。前は違う精霊さんが守ってたみたい。

 昔の人が、闇の精霊さんに契約させて、虹色の石を守らせるようにしたんだって。虹色には黒色はないでしょう。絶対に吸収される事はないから、昔の人は無理やり契約して守らせてたんだって。

 最初の精霊さんが消えても、次の精霊さんに守らせるために、特別な契約したから、闇の精霊さんは、ずっとここから出られなかったんだって。


「ひどいでちゅね。むかちのひと、ダメダメでしゅ!」


「うん。そうだよね。僕生まれた時から、ずっとここに居る。ここしか見たことない。でもね、ユーキが来てくれたから、僕、もう外に出られるんだ。」


「?」


 何で?僕が来ると何でお外出られるの?


「この虹色の石、人を選ぶんだ。自分の力を使える人間を選ぶの。」


「選ばれたのが主か。」


「そう。これだけこの石に合う人間なんていないよ。」


 もし僕がこの虹色の石をもらったら、闇の精霊さんは自由にお外で遊べるようになるんだって。それでね石をもらった僕は、いろいろな魔法を使えるようになるんだって。


「ただ主はまだ小さい。魔法を使うのはもっと大きくなってからだ。」


 そうだよね。お父さんも魔力使っちゃダメって言ってるし。でも、たまに使っちゃうけど…。僕が魔法使わなくても、持ってるだけでも良いのかな。そうすれば、精霊さんはお外で遊べるんでしょう。そう聞いたらそれでもいいって。


「ずっと、もってればいいでしゅか?ぽっけとか、かばん、いれていいでしゅか?」


「ぽっけ?かばん?」


「これでしゅ。」


 僕はぽっけとかばんを見せました。ずっともってるの大変だもん。


「ああ、そういう事。大丈夫だよ。そんな事しなくてもいいんだ。ユーキがもらってくれるって言ってくれたら、それで大丈夫。」


 そう言うだけでいいの?なら大丈夫。マシロもこの虹色の石は大丈夫って。


「まあ、ウイリアムは怒るかもしれないが。主が大きくなるまで、気をつければいい事だ。」


 えー?!お父さん怒るの?じゃあ、止めようかな。怒られるのやだ。ゲンコツ痛いもん。でも…。闇の精霊さん可愛そうだし…。だって今までずっと1人でここに居たんだよ。お外にはとっても楽しいものたくさんあるのに。う~ん。僕が考えてたらシルフィーとキミルが、


「闇の精霊さん、助けてあげて。僕お外で一緒に遊びたい。」


「キミルも!」


 そうだよね。ずっと1人は僕もヤダ。うん。やっぱり皆んなでお外に行こう。


「ぼく、いしもらうでしゅ。いしくだしゃい。」


 僕がそう言ったら、虹色の石が光り始めました。それからその光ったまま僕の方に飛んで来て、僕のお胸の前に止まりました。闇の精霊さんが動かないでって言うから、僕はじっとしたまま。じっとしてたら、石がまた動き始めました。それで、どんどんお胸の中に消えていきます。全部が僕のお胸の中に消えました。


「ふわわ、消えちゃったでしゅ。」


「ユーキの中に入って、石からユーキの力に変わったんだよ。これでユーキのものになったんだ。」


 うう、難しいお話。僕分かんないよ。でも、これで精霊さんはお外に行けるんだよね。よかったぁ。皆んなで喜んでたら、闇の精霊さんが光りました。すぐに光は消えたけど、あれ、さっきと何か違う。おでこについてた、あの変な文字がなくなってます。精霊さんはにっこり。


「やったあ!これでどこにでも行けるよ!ユーキありがとう!!」

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