第135話大きな音と、始まる襲撃

「すうすう。」


「う~ん。しょのおかし、ぼくのでしゅぅ…。すうすう。」


 ~バチバチバチ~


「…この反応は!!」


「ああ。マシロ、ユーキを頼むぞ!ウイリアム来たぞ!!我は外へ行く!!」


 何々?エシェット、大きな声出してどうしたの?僕はマシロとエシェットの大きな声で起きちゃいました。まだ眠たいよ。もう朝なの?目を擦りながら部屋の中を見渡します。あれ、エシェット居ない。今声してたのに。お父さんはもうベッドから起きてて、お洋服ササって着替えて、僕の頭なでなでしてきました。


「ユーキ。お兄ちゃんに洋服の着替えを手伝ってもらいなさい。それから、今日はこの部屋から出ないように。」


 お父さんはそれだけ言うと、お部屋から出て行っちゃいました。お母さんも、


「お母さんはすぐ戻ってくるから、お兄ちゃんとマシロ達とここに居てね。」


 そう言って、やっぱりお部屋を出て行っちゃいました。どうしたんだろうと思ってたら、マシロが魔獣が来たって教えてくれました。お兄ちゃん達が言ってた魔獣が街に来ちゃったんだって。この前の足跡の魔獣。エシェットが居ないのは、結界を張りにお外に行っちゃったから。シャーナも今お外に居るみたい。


 僕はお兄ちゃんにお着替え手伝ってもらって、それからこの前の悪い人達が来た時みたいに、僕のカバンにお菓子と折り紙入れて貰いました。もしかしたら、このお部屋から移動するかもしれないからって。


 少ししてお母さんとエシェットが戻って来ました。それからアシェルもお部屋に来たよ。僕はエシェットに近寄りました。


「ユーキ。ちゃんと結界を張って来たぞ。シャーナも結界を張ったからな。これで街は大丈夫だ。」


「エシェット、ありがとでしゅ!ありがとだから、これあげるでしゅ。」


 僕はこの前買ってもらったクッキーの入ってる袋から、何枚かクッキー取り出して、エシェットにあげました。エシェットは一口で全部食べちゃったよ。大きいお口。僕そんなに入らないよ。エシェットがクッキー食べたその時、


<ドガあああああああああんっ>


 って大きな音と、お城が少し揺れました。僕は尻もちつきそうになって、後ろからマシロが支えてくれました。魔獣が街を攻撃してきたんだって。今のは結界にぶつかった音と、その時に揺れたみたい。でもエシェットとシャーナの結界で、中には入れないから大丈夫。


 僕はどんな魔獣が、あんなに大きな音出したのか見てみたくて、窓に近寄りました。お城の上の方のお部屋だから、ここから街の壁のお外の方まで見えるんだ。窓に近寄ってぴょんぴょんしてる僕を、エシェットが抱っこしてくれました。それで僕、考えちゃいました。壁のお外、木がいっぱい生えてたっけ?


「おそとに、きがいっぱいでしゅ。」


「ああ、あれはアスピドケロンという怪物だ。簡単に言えば大きい亀だな。」


「あの木の下に、かめのまじゅういるでしゅか?」


「違うぞ。大きな亀の上に木が乗ってるんだ。亀はあの木が全部乗るくらい大きいんだ。」


 ん?あの木全部が乗っかる、大きい亀?………あんなに木がいっぱい乗るくらい大きい亀!!エシェットよりも大きいよ!僕が驚いてたら、アンソニーお兄ちゃんが、


「何でアスピドケロンなんてのがここに居るの?あれって海の怪物じゃなかった?しかも人前に姿現したの、何十年ぶり?」


 って。海にいる魔獣なの?ここに海ないよ。


「ほとんど一瞬で現れては消えるを繰り返しているんだ。誰かが召喚しているんだろう。少しくらい陸にいたからと言って、力は変わらん。それよりもユーキ、亀だけではないぞ。他にも…。」


 今お外にいる魔獣、エシェットが教えてくれました。ロック鳥って言う大きな鳥でしょう、イーヴィルモンキーって言うやっぱり大きいお猿でしょう。あとねフェロウシャスベアーって言う、大きくて怖いクマに、オーガっていう、人を大きくした感じの獣だって。他にもたくさん居るみたい。大きくて強いのばっかり。


 最初に攻撃して来たのはアスピ…、なんだっけ?分かんないからカメでいいや。カメの魔獣でした。それからずっと外の魔獣は攻撃して来てるけど、エシェット達の結界っで、街は全然平気です。

 だから僕達、皆んなでゆっくりご飯食べました。朝ご飯もお昼ご飯も。アシェルが用意してくれたよ。お昼ご飯が終わって少しして、お父さんが戻って来ました。


「あなたお帰りなさい。避難は完了したの?」


「ああ、だいたいな。後は父さん達とソルイ殿達が面倒を見る。それにしても、さすがボルフィスだな。地下に街の住民が隠れることの出来る空間を作っていて、そこに全員逃げる事が出来るんだ。しかも食料なども完璧に用意してある。我々の街も見習わなければ。」


 帰って来たお父さんに抱っこしてもらいながら、僕はお菓子食べます。そのあとまたお外見て、お空の方見たらロック鳥の他に、他の魔獣が居ました。絵本で見たことある恐竜みたいなの。


「とうしゃん、あのまじゅうのおなまえ、なんでしゅか?」


「あれはワイバーンだな。ドラゴンの仲間だぞ。」


 ドラゴンの仲間?エシェットと同じなの?全然違うよ。エシェットの方がとっても大きくてカッコ良くて、街を攻撃なんてしない、皆んなを守ってくれる、とっても優しいドラゴンだもん。僕がエシェットにそう言ったら、エシェットがお父さんから僕を交代で抱っこして、ぎゅうううってしてきました。それからありがとうって。


「エシェット、くるちいでしゅぅ。」


「すまんすまん。嬉しい事を言ってくれたものだからついな。よし!嬉しいついでに、あ奴らを少し倒してくるか。くろにゃんお前も手伝え。お前の闇の力が役に立つ。」


 僕を下ろしたエシェットがくろにゃんと一緒にお部屋を出ていきます。お父さんが慌てて追いかけました。エシェット、くろにゃん頑張って!僕応援してるよ。


(エシェット視点)

 部屋を出た我を、ウイリアムが追ってきた。


「エシェット待ってくれ。アスピドケロン何て簡単に倒せるのか。」


「そう簡単ではないだろうがな。」


 さすがにあれだけの魔力を持っている魔獣ともなれば、防御も攻撃も桁違いだろう。この間のように、弱い人間と何もない森を消すのとは訳が違う。それに、他にもいろいろと魔獣がいる。全てを一気に相手をするのは我にも難しい。少しだけだがな。


 我がどんどん廊下を進めば、ウイリアムが後ろで頭を下げたのが気配で分かった。戦いに行く前に、あいつの所にも寄らなければ。あれだけの魔獣達を全て殲滅するなら、あいつの力も必要だ。

 匂いを辿り、シャーナがいる部屋へたどり着くと、ドアを蹴り開けた。中にはシャーナとその契約者の王子が居る。王子の方は我を見て一瞬驚いていたが、シャーナは我にも気付いていたため、部屋に入ってすぐの顔が、嫌そうな顔だった。


「シャーナ、我はユーキのために、これから魔獣どもを倒しに行くつもりだ。お前も手伝え。」


「何で私が?」


「このまま放って置いても、我達の結界が破られる事はないが、それだけではユーキにカッコいい姿を見せられないからな。我はもっと褒めてもらいたい。」


「は?あなた何言ってるの?」


「それにいつまでも、こうしている訳にはいくまい。さっさと倒して、安全な街になった方が、そこの王子にもいいはずだ。違うか?」


「それで私に手伝えって?」


「我はユーキのため、お前はその王子のため。手を組んで倒した方が早く終わる。何しろ相手はなかなかの力を持っているアスピドケロンだからな。それ以外にもまあまあの奴も居る。どうだ?」


 我はさっさと倒して、ユーキの元へ戻りたいからな。シャーナにとってもこの話は悪くないはずだ。自分の大切な王子を守ることになるし、さっさと終わらせれば、それだけ王子と一緒にいる時間がのびるのだ。


 少しの間考えていたシャーナだったが、最終的には我の言葉にのってきた。それを聞いていた王子が、国王には自分が伝えておくと言い、シャーナの頭を撫で、部屋を出て行った。

 くろにゃんの闇魔法で外へ向かう。くろにゃんには影を駆使し、雑魚を減らしてもらう。もちろんくろにゃんにはちゃんと結界を張る。大物は我達だ。


 窓から見ているだろうユーキに、カッコいい姿を見せて、後で褒めてもらい、ぎゅうううっとしてもらおう。さて気合を入れるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る