第132話アシェルが遊びに来たよ

 次の日の夜、僕はマシロ達とお兄ちゃん達と一緒に、とっても広い玄関ホールで遊んでました。とっても広いから何でも出来ちゃいます。でも、使用人さんもメイドさんも、たくさんお仕事してる人が居るから、あんまり邪魔しないようにしなくちゃね。

 今は昨日のベッド洞窟冒険の続きです。玄関ホールを冒険です。玄関ホールには色々なもの置いてあるから、見つけて調べるのが、今回の冒険です。


 最初に行ったのは、この前のお鍋の置いてあった所。やっぱりこれお鍋だよね。何でずっとここにあるんだろう。壊れてるからだと思ってたけど、早くお片付けしないのかな。


「おなべはっけん!こわれてるかもでしゅ。みんなきをちゅけるでしゅ。」


「このお鍋なら、ユーキやボクたちのご飯作るのにぴったりだね。」


「えー、ちょっと小さくないか。マシロ達も食べるんだろう。」


 みんなでマシロ達を見ます。マシロもエシェットもくろにゃんも、みんなご飯いっぱい食べるもんね。これじゃあダメダメだね。そう言えば、前にばあば達が倒した魔獣、全部食べちゃったけど、いつも食べてる夜ご飯だけで、お腹いっぱいになるのかなぁ?今度ご飯の時に、ちゃんとお腹いっぱいか聞いてみよう。このお鍋は小さいから、残念だけど、宝物じゃありません。


「じゃんねんでしゅう。ちゅぎのたからもの、しゃがしゅでしゅう!」


「完璧に鍋になっちゃってるけど、いいのかあれ?」


「ユーキが鍋って言ってから、鍋にしか見えなくなっちゃったんだけど。まあ、良いんじゃない?作った本人が聞いてる訳じゃないし、だいたいここに居ないしね」


 次に見つけたのは、誰かの肩から上の部分の置物。長いお髭で目が細いの。それから凄く睨んでるんだ。この置物は要らないね。ちゃんと皆んなで使えるお道具とか、食べられる物の方がいいもん。怖いおじさんの置物何か僕要らない。皆んなもそうみたい。見てすぐに、次探しに行こうって。

 次はキラキラ光る、花瓶の所に行きました。これはキラキラで綺麗だから、宝物になるね。


「これはお宝って感じだな。リュカ、これなら良いんじゃないか。」


「そうだね。やっと発見って感じ。皆んなもどう?」


 皆んな最初の宝物発見で、頭の上で拍手です。花瓶には黄色と赤と青の花が入ってました。この花は、ボルフィの近くの森にだけ咲いてる花なんだって、お兄ちゃんが教えてくれました。なかなか枯れないお花で、花瓶に入れておけば、2年くらいずっと咲いたままです。凄いね。じゃあ、このお花も宝物に決定。また皆んなで拍手します。


 冒険して遊んでたら、騎士さんが1人玄関から入ってきました。それで僕達の事見て笑いました。


「良かった。探しに伺おうかと。今門の所に、ウイリアム家の関係者だという人間が来ているのですが。名前はアシェル。顔を確認して頂けますか。緊急の用があると。」


「アシェル?確かに家の人間だけど。分かったよ僕が確認する。ジョシュア、ユーキの事よろしくね。」


 そう言ってアンソニーお兄ちゃんは騎士さんと一緒に、暗いお外に出て行っちゃいました。今アシェルって言ったよね。アシェルがお城に来たの?お仕事終わって遊びに来れたのかな?僕達は冒険者ごっこ止めて、お兄ちゃんが戻ってくるの待ちました。ここから門まで遠いから、少し待たなくちゃね。僕はシルフィーなでなでしながら待ちます。くろにゃんもなでなでしてほしいって言うから、くろにゃんもなでなで。くろにゃんはなでなですると、いつもあんまり動かないしっぽを、いっぱいフリフリするんだぁ。でも2人だけなでなではダメだから、皆んなの事順番になでなでして待ちました。

 少ししてアンソニーお兄ちゃんが帰って来ました。その後ろからアシェルも入ってきます。僕はアシェルに駆け寄って足に抱きつきました。


「アシェル!!」


「ユーキ様、お元気そうで。ボルフィスは楽しいですか。たくさん遊びましたか。」


「うん!ぼく、いろいろあそんだでしゅ!あとあと、おうしゃまにもおうじしゃまにもあいまちた。それから…。」


「待って待ってユーキ。アシェルに会えて嬉しいのは分かるけど、アシェルお仕事で来たんだって。先に父さんの所に行かなくちゃいけないんだ。」


「…あしょべないでしゅか?おちごと?」


「すみません。後でゆっくりお話お聞きしますので、今は少々お待ちくださいね。」


 すぐに2人はお父さんの所に行っちゃいました。アシェル遊びに来たんじゃなかったよ。お仕事しに来たんだって。アシェルいつもお仕事ばっかり。いつ遊んでるの?

 アシェルとお話したくて待ってたけど、寝る時間になっちゃったよ。今日もお父さんはお仕事でいません。明日になったら皆んなのお仕事終わってるといいなぁ。またお店も見に行きたいし。それに、雪でも遊びたいし。

 いっぱい降ってた雪は、今日は降りませんでした。使用人さん達喜んでたよ。これで雪かきしなくて良いって。僕ねマシロ達にお願いしようとしたんだけど、お父さんにダメって言われちゃったんだ。これ以上ビックリさせちゃダメなんだって。ビックリって何の事だろう。マシロ達は凄い事するけど、ビックリする事は少ししかしないよ。


「かあしゃん、とうしゃんもじいじもみんな、あちたはあしょべましゅか?」


「うーん。もう少し無理かしらね。でも、お仕事終わったら必ずお父さん達遊んでくれるから、待ちましょうね。」


「…はーいでしゅう。」


 早くお仕事おわらないかなあ。


「ユーキ、明日は雪で遊ぼうぜ!」


「僕、雪合戦がいい。キミルは?」


「僕はね、雪の中に飛び込んで遊びたいな。」


 キミルはこの前雪で遊んだ時、勢いつけすぎて雪に飛び込んじゃったんだ。そしたら自分の形が綺麗に雪に残ったから、それが面白かったみたい。その後雪にたくさん自分の跡付けて遊んでました。僕もやってみようかな…?

 よし明日は雪遊びで決定!!


(ウイリアム視点)

 アンソニーがいきなりアシェルを連れて来たからビックリした。何でここにアシェルがいるんだ。

 アシェルは慌てた様子で、すぐに国王にも同席して貰いたいと言ってきた。この慌てよう何かあったな。もしかして、森の事と関係があるんじゃないか。そう思った私の考えは当たっていた。しかもそれは、さらに状況を悪くする知らせだった。


 まさかカージナルの方から、あの足跡と破壊が続いて来ていたなんて、思いもしなかった。確実に移動して来て、私達が見てきた場所が今の所、足跡が現れた最後の場所になっている。私達の方はこの前の足跡以来、他の報告が来ていない。

 これは本格的にまずい事になった。そのままこの変な魔獣の移動が、街を通り越してくれればいいんだが。


「こちらで足跡が発見されたのは、いつだったのですか?」


「私達が発見したのは2日前だったが、それよりも前だろうから、実際には4日くらい前だな。」


「アシェルといったな。そなた、ここへ来るまでに、魔獣の姿はみたか?あれだけの魔獣だ。誰かが見ていて当たり前なのじゃが。」


「いいえ。私は何も見ておりません。来るまでに見た魔獣は全て人と契約している魔獣ばかりでした。野生の魔獣など、1匹も見ていません。」


「そうか…。」


 国王様は黙ってしまった。それもそうだろう。

 今回の魔獣の行動や移動には、変なところが多すぎる。縄張り争いなら、自分達の場所だと、牙でつけた傷や爪で引っ掻いた傷を残すものなのに、その跡もない。ただ単に木々を倒しただけだ。

 それに一部にしか残っていない足跡、そこに来るまで通り、帰って行ったと思われる足跡が1つもない事。我々に気づかれないように現れ、そしてすぐにいなくなる。誰もその様子を見た者がいないことから、恐らくそんなに長い時間、その場所に留まってはいないだろう。

 黙り込んでいた国王様が再び話し始めた。


「誰かが故意に魔獣に森を破壊させながら、ここまで移動してきたか?…狙いはここボルフィスか。」


 全員の顔が一気に引き締まった。ボルフィスを襲う。それは国に宣戦布告したも同じ。国王様の言う通りそれが本当なら、どんな者達がそれをやっているか分からないが、これから大変な事になる。


 国王様は関係者を全て集めて、緊急の会議をすることになった。重鎮やそれぞれの隊長格を集め、もし攻め込まれた時のことを話し合う。我々もその会議に参加する事になった。

 何でこうも、ユーキの遊びに来るところで、重大な事件が起こるのか。会議に参加するため準備をしながら、そう思わずにいられなかった。


 そして会議の後の行動が早かった。さすがボルフィスと言ったところか。国の中心というのもあるのだろうが、私が考えていたよりも物凄い速さで、これから起こるかも知れない魔獣の襲撃に対する備えをしていった。

 街の人々も落ち着いていて、それぞれが自分のしなくてはいけない準備を、着々とこなしていった。




              ************

登場する人物が多いため、少しの間、視点が変わりやすくなるかも知れません。

あと、2話くらい?ご了承下さい。

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