第121話もうすぐボルフィスに到着?

 エシェット達が作ってくれた雪のトンネルを、どんどん進んでいきます。トンネルのおかげで降ってる雪が少ないから、やっぱりお馬さん、走りやすいみたい。今までで1番早く走ってます。


「そうだユーキ。良いものを見せてやる。」


マシロに乗って移動してるエシェットが、チラチラ降ってくる雪を掌に乗せて、ふって息をかけました。


「凍らせたから我の掌の上なら、少しは長く見れるだろう。雪をよく見てみろ。」


 エシェットに言われて、僕はじぃーっとエシェットの掌の雪を見ました。あれ?ふわふわの雪じゃない。綺麗な模様してる。三角とか四角とかちょんちょんがくっついてたり、いろいろな綺麗な形してます。


「ゆきじゃ、ないでしゅか?ふわふわって、ふってたのに?いろいろなかたちしてるでしゅう。」


「ああ、それ雪の結晶ね。エシェット、ユーキちゃんに見せてくれてありがとう。すぐに溶けちゃうから、なかなかゆっくり見られないのよね。ユーキちゃんこれは雪よ。」


 これ雪なんだって。うんとね、ちゃんとしたお名前は、雪の結晶って言うんだって。雪ってふわふわしてて、わたみたいと思ってたけど、いろいろな形してるんだね。びっくりしちゃったよ。でも小ちゃくて、とっても可愛いね。

 僕が、雪の結晶、ちょんって触ったら、すぐになくなっちゃいました。


「およ?」


「ユーキ、エシェットが凍らせてくれても、とっても小さい結晶だ。あったまってる指で触ったら、溶けてしまうぞ。ほら、もう1度エシェットに別の結晶見せてもらえ。今度は触らないようにな。」


 エシェットがもう1度、雪の結晶見せてくれました。あれ?さっきのと違う模様だよ。エシェットにお願いして、また別の結晶見せてもらいます。また今度も違う模様です。ちょっとずつ違うの。ちょんちょんが違ってたり、マルの模様があったり。


「何だ?ずいぶんじっと見てるな。ユーキどうした?」


「じぇんぶ、ちがうでしゅ。おなじのないでしゅ。」


「ユーキちゃん。雪の結晶は、同じ物が1つもないの。全部違う模様なのよ。」


 全部?降ってる雪の結晶全部?ふわわ。とてもとってもたくさんなのに、全部違う模様なの?凄い凄い!僕はそのあとずっと、エシェットに雪の結晶見せてもらいました。ほんとはずっと見てたかったんだけど、お父さんが寒いから窓閉めなさいって。窓閉められちゃった。ブー。僕がプンプンしてたら、お母さんが、後でいい物作ってくれるって。だから我慢してねって。うー、しょうがない。いい物のために、我慢しなきゃ。


 お宿に着いて、あったかいお部屋に入って、お母さんが折り紙出してって。僕は折り紙をお母さんに渡しました。お母さんは折り紙を三角に折ります。2回折って小さ綺麗な三角作りました。僕はいつもちょっとだけずれちゃうだ。

 折り紙三角にしたお母さんが、次に出したのはハサミです。何するの?不思議に思ってたら、お母さんは綺麗な三角に折った折り紙、どんどん切り始めました。


「ふわわ?!いいでしゅか?」


「ふふ。これでいいのよ。ちょっと待っててね。」


 どんどん切ってちゃいます。最後に1番端っこの所切って、お母さんがハサミを置きました。切った折り紙を僕に渡してきます。


「ユーキちゃん。そっと折り紙開いてみて。そっとよ。切れちゃうからね。」


 そうお母さんに言われて、僕はそっとそっと、折り紙を開きます。そして。


「ふわわわわ!ゆきのけっちょうでしゅう!」


 開いた折り紙は、さっきの雪の結晶みたいに、綺麗な模様になってました。凄い!


「ユーキちゃん。こっちもよ。」


 お母さんが、切っちゃった三角の端っこも開きました。そしたら、こっちも小さい雪の結晶みたいになってます。凄い!凄いです!!

 お母さんが僕に、作り方教えてくれます。ハサミは危ないから一緒にだけど、一生懸命に折り紙切ります。切るところは決まってないんだって。だから自由に切っていいって。チョキチョキ、チョキチョキ。最後に端っこの切って。折り紙開きます。


「できたでしゅう!けっちょうでしゅう!」


「おお、うまく出来たじゃないか。凄いぞユーキ。」


「えへへでしゅう。」


 その後もたくさん雪の結晶作りました。大きいのや小さいのいっぱいです。お部屋は結晶だらけになりました。お兄ちゃんちゃん達がお部屋に入ってきて、


「何?部屋の中まで雪が降ってるの?」


「これ以上寒くしないでくれよ。」


 そう言って笑ってました。

 折り紙って、なんでも出来るんだね。たくさん作り方過ぎちゃって、お父さんに怒られちゃったけど、でも楽しかったからいいんだもん。お母さん教えてくれてありがとう!


 次の日も次の日も、まだ王国にはつきません。たくさん馬車で遊んで、お外も見たけど、僕、つまんないよ。馬車の中は、おままごとのセットと、折り紙でいっぱいです。ディル達も飽きちゃったみたい。お外寒いのに面白い事ないから、くろにゃんに悪戯してくるって、お外に出て行っちゃいました。お外でくろにゃんの怒ってる声が聞こえます。お外見てみたら、くろにゃんのお耳引っ張ったり、わざと目を塞いだり、しっぽ引っ張ったり。シルフィーとキミルがそれ見て僕もって。今度はお髭引っ張ったりしてます。あーあ。

 僕はお父さんのお膝に座って、聞いてみました。


「とうしゃん。まだちゅかないでしゅか?」


「さすがに飽きちゃったか。でも、ここまでよくもったな。王国まで後3日くらいだな。後2回寝れば、王国に着くぞ。雪が降りすぎて、ちょっとだけ遅くなっちゃったんだ。もう少しだけ我慢な。」


 後2回も寝なくちゃいけないんだ。王国って、とっても遠いんだね。でもあと2回寝たら、そしたらお城が見られるんだもん。僕頑張って我慢しなきゃ。


 お宿に着いて、ご飯が食べ終わって、お部屋でお兄ちゃん達と遊びます。『トントン』誰かが、ドアをノックしました。お父さんが返事します。


「夜分すみません。ご面会の方がいらしてますが、どうしますか?」


「ご面会?名前は?」


「ボルフィスからの使いの者だと。」


「分かった。すぐに行こう。ユーキ、もう少ししたら寝なさい。明日も早いからな。オリビア後は任せる。父さん連れて会ってくる。」


 そう言って、お父さんはお部屋から出て行っちゃいました。


(ウイリアム視点)

 食堂で待たせていると聞いて、父さんと2人で食堂へ行った。そこには2人の騎士がいた。1人は父さんと同じくらいの歳だろうか。もう1人は若い騎士だ。


「ソルイか!!」


 どうも父さんの知り合いみたいだ。そうか、王国に仕えていた時の。


「ひさしぶりじゃなオルガー。」


 2人が握手をし、それぞれ椅子に腰掛ける。どうも2人は、この大雪で到着の遅れた我々を心配したリチャード様が、様子みてくるようにと、言ってくださったようだ。もう1人の若い棋士はソルイ殿の、お孫さんらしい。名前はウルイ。昨年騎士になったばかりだそうだ。


「いやあ、驚いたわい。この街に近づいたら、雪のトンネルが出来ているではないか。どんな魔獣があんな事をやったのだろうのう。」


「ハハハ…。そうですね。」


「まあ幸い、ボルフィスの方は雪かきが終わっております。馬車で通っても問題はありません。祖父と私もお供しますから、何かあれば言って下さい。」


 いや、冷や汗をかいた。まさかうちのが、あの雪のトンネルを作ったなどと言えるわけもない。部屋に帰ったら、すぐにエシェットに、トンネルはもう必要ないと言わなければ。

 父さんとソルイ殿は、少しお酒を飲んでから部屋に戻ると言うので、私とウルイはそれぞれの部屋に戻った。部屋に戻ると、すでにユーキは夢の中だった。可愛い寝顔だ。 オリビアが起きていたので2人の事を伝へ、それからエシェットに、明日はトンネルを作るなと言った。絶対だと念をおせば、エシェットは分かったと言った。本当に分かっているんだか。

 取り敢えず話を終えた私もベッドに入る。

 ユーキがお城を見たら、物凄く興奮するんだろう。落ち着かせるのが大変そうだ。それよりも大変なのは、今回の本当の目的なのだが。きっとユーキはいつも通りなんだろうな。いつもの笑顔で、乗りきってくれれば。

 私はユーキの頭を、優しく撫でた。

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