第120話雪のトンネルができました

 最初は折り紙で遊んでたけど、ちょっと飽きちゃった。どうして今日は出発しないのかな?僕早くお城見てみたいのに。


「にいしゃん。きょうはばしゃ、のらないでしゅか?」


「今日はまだ乗れないんだよ。」


「どうちて、のれないでしゅか?」


「うーん。」


「兄さん。見せた方が早いよ。ユーキだってもう折り紙飽きちゃってるし。言えばちゃんと分かってくれるよ。」


 ジョシュアお兄ちゃんが僕を抱っこして、窓に近づきました。皆んなも一緒にお外見ます。雪はいつもみたいに、たくさん降ってます。お兄ちゃんに外の道見てみろって言われて僕は道を見ました。大人の人達が歩いてます。歩いてる?何かおかしいです。足が見えないの。お腹のところも。


「夜にたくさん雪が降っちゃって、大人も歩けないくらい、雪が積もっちゃったんだ。今皆んなで、雪をどかしてるんだけどな。あれじゃあ馬車は動かないだろう?」


 あんなに雪が積もっちゃったの?!僕埋まっちゃうよ。そうか…。じゃあしょうがないよね。早く行きたかったけど、埋まるのは嫌だもん。


 お外見てたら、お父さん達と一緒に行っちゃった、エシェットが戻ってきました。それからマシロの事呼んで、またすぐ出て行っちゃいました。どこ行くんだろう。遊びに行くのかな?お外寒いのに。僕はお部屋の方がいいや。


 お外見てたら、魔獣がたくさん居ました。今お外にいる魔獣は、雪や寒いのが平気な魔獣なんだって。皆んながお外に出られるように、雪をどけてくれてるんだって。


「ボクは寒いの嫌い。」


「オレも!あっでも、雪は好きだぞ!悪戯できるし!」


 悪戯。どんな事するのかな。怒られない悪戯かな。後で聞いて僕も混ぜてもらおう。

 シルフィーもやっぱり寒いの嫌いだって。キミルは寒いの嫌いだけど、木やお花さんには大切なんだって。ちゃんとあったかい季節と寒い季節がないと、植物は大きくなれないし、お花が咲かないかも知れないんだって。大変なんだね。

 くろにゃんは、どっちでもいいって言ってました。でもね。僕が選んであげたマフラーあるから、寒い方が好きだって。えへへへ。僕嬉しいなあ。


 お父さん達がお部屋に戻って来て、お宿の人が、あったかいスープ持って来てくれました。そのスープを飲んで、僕はお兄ちゃんに抱っこしてもらって、またお外見ました。魔獣見てるの楽しいんだもん。


 ジィーってお外見ます。そしたら…、


「お、おお、おおおおおっ!!」


「え?!」


「どうしたんだ?」


 僕達の声に、お父さんも窓の所に来ました。そしていつもみたいに叫びました。お父さんこの頃叫ぶの多いんだ。


「な、何だこれは!!」


 あのね、道に積もってた雪が、いきなり全部無くなったんだ。ファーッて。お外にいた魔獣も、他の人達も、ビックリして止まっちゃってます。

 お父さんが慌ててお部屋から出て行きました。僕達はお外見たまま。お父さんがお宿から出てきて、大きな道のある方に走って行きました。


「奴め、やりおったな。」


「雪のことは解決したみたいですね。多分大通りの方も大丈夫でしょう。準備をはじめましょうお義父様。さあ、ユーキちゃん、お洋服着ましょう。きっとすぐに出発よ。お着替えしてお外で待ってましょうね。」


 お母さんがそう言って、僕にたくさんお洋服着せました。うう、暑いぃ。でもお外は寒いぃ。

 お兄ちゃん達も自分たちの準備しにお部屋に戻っちゃいました。じいじ達もね。

 準備して、僕はドアの前で待ちます。お母さん達は荷物運んでます。そしたらガヤガヤ、大きな声が聞こえてきました。ドアが開いて入ってきたのはお父さん達でした。


「全くやり過ぎって言葉を知らないのか。」


「別におかしな事はしていないだろう。これで他の者達も進める。いい事ばかりではないか。」


「どう見たって、おかしいだろう!」


 お父さんがエシェットとマシロのこと怒ってます。そう言えば2人ともどこ行ってたんだろう。遊んでて、怒られちゃったのかな?


「とうしゃん!!」


「ん?ああ、ユーキ。何だもう準備出来てるのか?オリビアが様子見て、準備したのか?」


「もうしょっぱつ、できるでしゅか?」


「勿論だ。我とマシロが雪を上手く片付けたからな。出発だぞ。」


 エシェット達、遊んでたんじゃなかったんだ。雪を片付けてくれたの?ありがとう!!今日の2人のおやつ、たくさんあげるからね。

 でも、せっかく雪なくしてくれたのに、どうしてお父さん怒ってるのかな?お母さんが1階に荷物持ってきて、お父さんとエシェット達のこと見て、なんか困ったお顔してました。


 全部荷物を運んで、それを馬車に乗せて、エシェット達のおかげで出発です。僕は雪のなくなった道を見てました。なくなった雪はどこに行っちゃったのかな?溶けちゃったのかな?僕は溶けちゃったと思ってたんだ。でもね、大きな道のところに行ったら。


「ふわわ!かべでしゅう!ゆきのかべでしゅ!トンネルみたいでしゅう!!」


 道の両側に、雪の壁が出来てました。マシロに乗ってるエシェットが説明してくれました。エシェットとマシロが風の魔法で、道に積もってた雪を吹き飛ばして、その吹き飛ばした雪を、今度はエシェットの水魔法で固めたんだって。


「トンネルみたいで面白いだろう?ただトンネルばかりじゃ飽きるからな。たまに普通の雪の道にもしてある。」


「しゅごい、しゅごいでしゅう!!」


 凄いね2人とも。こんな道作っちゃうなんて。お家のお遊びのお部屋の小さいトンネル好きだけど、雪のトンネルも大好きです!トンネルのおかげで、雪も降ってないから、馬車を運んでくれるお馬さんも、楽ちんだね。


(その時のエシェットとマシロ)

 我は部屋へ戻り、マシロを外へ連れ出した。後ろでウイリアムの声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。マシロに乗り、人が我らを見えない速さで移動し、街から離れた。我らだけだからな、すぐに遠くまで来ることが出来た。このくらいまでくればいいだろう。


「どういうことだ?」


 マシロの問いに、説明するのを忘れていたことに気づく。我は軽くマシロにこれからやる事を説明した。マシロは大丈夫なのか、ウイリアムは良いと言ったのかと心配していたが、ユーキが早くお城を見たいと言っているんだぞと言ってやれば、すぐに了解した。我らはユーキが1番だからな。


 マシロと一緒に風魔法を使い一気に、道に積もっていた雪を吹き飛ばす。その雪を熱で溶かそうかと思ったが、すぐにその考えは止め、ユーキが喜ぶだろう、物があることに気がついた。もう1度雪を舞い上がらせ、それを道の両側に積もらせると、水魔法で今度はその積もらせた雪を固めた。

 ユーキがいつも家で遊んでいるトンネルを雪で作ったのだ。もちろん完璧なトンネルは出来なかった。上が少し開いてしまっているが、ほとんどトンネルだ。きっとユーキは喜んでくれる。


 再びマシロに乗っかると街へ戻る。途中までしか雪は片付けていないが、通るたびに片付ければ問題無いだろう。

 ユーキのいる街の入り口に着くと、ウイリアムが待っていた。しかも何だか知らないがとっても怒っている。本当にウイリアムはいつも怒っているな。少しは気分を落ち着かせたらどうなんだ。宿に戻るまでずっと、ウイリアムのグダグダを聞くハメになった。


 しかし、やはりユーキは喜んでくれた。目を輝かせ、雪のトンネルを見つめている。マシロもユーキが喜んでいるのを見て、だらしない顔になっているが、我も一緒だろう。我はユーキのこの顔を見るのが好きだ。とても可愛い顔で、本当に心の底から喜んでくれている笑顔。いつもこの笑顔を見ていたい。そのためにも、これからもユーキを中心に、いろいろな事をやっていこう。誰が何と言おうと。

 そしてユーキ。今日のおやつは少し多めにくれないだろうか。

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