第119話まだまだ遠いよ。そしてエシェットのいい考え。

(ユーキ視点)

 出発して6日経ちました。王国までまだまだです。たまにね馬車の窓からお外見るんだけど、雪ばっかりで他に何もありません。雪ね、たくさん降ったんだよ。ずっと降ってるんだ。今も降ってて、道じゃない所は、僕の背と同じくらいの高さまで積もってます。道はね、たくさん人が通るから、積もってるけど、少しだけ。


 でもね雪がたくさんで、とっても寒くなっちゃった。お外出るときはたくさんお洋服着ないとダメダメです。僕お洋服たくさん着たら、丸っこくなっちゃった。それにお洋服着過ぎて、とっても重いの。雪で遊びたかったけど、これじゃあ遊べないよ。

 それからね、もう1つ大変なこと。ご飯のお店や、お宿に入るとあったかいから、今度は脱ぐのが大変なんだ。脱がないと暑すぎてお顔が真っ赤になっちゃうの。


「かあしゃん、おようふく、ちゅかれるでしゅう。」


「ごめんねユーキちゃん。王国に着いたら、もう少し動きやすいお洋服買ってあげるから。もう少しだけ我慢してね。貴方、王国に着いたら、私達の洋服も買わないと。」


「そうだな。まさかこんなに早く、これだけ雪が積もるとは思わなかった。王国から帰るくらいに買い物すれば良いと思ってたからな。」


 お洋服着て、重すぎてフラフラな僕を、お父さんが抱っこしてくれます。シルフィーも、お洋服何枚か一緒に着て、帽子も被せてもらったから、僕みたいに丸っこくなってます。ディルとリュカとキミルは、小さい入れ物にキミルにわたぼこ出してもらって、3人でその中に潜ってます。あったかそう。いいなあ。マシロとくろにゃんは大丈夫だって。本当に?僕心配だったから、この前お泊まりした街で、マフラー買ってあげたんだ。2人とも大きいから、マフラー5つ繋げて、首に巻いてあげました。

 それからねエシェットは…。


「おい、エシェット。大丈夫なのは分かるが、その格好だと目立ちすぎる。頼むからこのコートを着てくれ。一応今は、人の姿なんだから。」


 最初エシェットは、僕達がたくさんお野菜が採れる季節に着る、ちょっとだけあったかい格好してたんだ。それで平気だからいいって。でもねお父さんが、無理やりコート着させてました。エシェット、コートもとっても似合ってます。僕はまん丸なのに。


 今日のお泊まりするお宿に着いて、ちょっと歩かないといけなかったから、お母さんと手を繋いで歩きます。シルフィーはアンソニーお兄ちゃんが。ディル達はジョシュアお兄ちゃんが持ってくれました。靴はね、長靴みたいなの履きました。長靴にひもがついたやつ。これも脱ぐのが大変なんだ。

 お部屋に行って、やっと全部脱いでさっぱり。お父さんがあ~寒いって言いながら、お部屋に入って来ました。


「本当に今回の雪はよく降るな。このままじゃ、ユーキが雪だるまにみたいに、まん丸になっちゃうな。今だってほとんどそうなのに。」


 僕雪だるまじゃないよ。雪だるまは作りたいけど。王国に着いてお洋服買ったら、少しはお外で遊べるかな。

 お部屋の中はあったかだけど、廊下はとっても寒いの。だから、サーッて歯磨きしに行って、サーッておトイレに行って、サーッてお部屋に戻りました。お父さんが先にベッドで寝てて、僕はすぐにお父さんの隣に潜りました。


「えへへ。あったかいでしゅう。」


「そうだな。今日はお母さん、ばあばとお話あるみたいだから、父さんと先に寝てような。」


「はいでしゅ!あのねとうしゃん、ぼうけんのおはなち、ちてくだしゃい。」


「ああ、いいぞ。」


 お父さんが学校に行ってた時の、冒険した時のお話。とっても楽しいんだよ。僕はそのお話聞きながら、あったかいベッドの中で、ゆっくり眠りました。


 朝、誰かがお話してる声で目が覚めました。


「そうか。」


「ええ、ですから、この雪をどうにかしないと、先は進めません。今雪をかき出してますが、まだ雪は降り続いてますし、いつ出発できるか。」


「分かった。」


 ドアが閉まって、お父さんが僕に気がつきました。僕のところに来て抱っこしてくれます。


「おはようユーキ。」


「おはよでしゅう…。だれかきてたでしゅか?」


「ああ、御者が来てたんだ。さあ、顔を洗って、ご飯を食べに行こう。」


 朝の準備が終わって、ご飯食べて、またいつもみたいにすぐに出発と思ってたら、今日はなかなかお部屋から出ないんだ。どうしたのかな?お母さんが折り紙して待っててねって。僕はお兄ちゃん達とばあばと、シルフィー達と一緒に折り紙して待ってました。


(ウイリアム視点)

 さて困った。今私はオリビアと一緒に、父さんの部屋に集まっていた。これからの話をするためだ。何故かエシェットも私達にくっついてきたが。


「さて、まさかこんな事になるとはのう。何十年ぶりの大雪が、何も今回でなくてもよかったのにのう。」


「まさか夜中にこんなに降ってたなんて。」


「このままだと、ボルフィスにつくのは、相当遅れそうだな。」


 私達が真剣に悩んでいる隣で、エシェットがとても不思議そうな顔をしていた。何を悩んでいるんだと言わんばかりに。エシェットにどうしてそんな顔してるんだと聞いてみれば、また厄介なことを言ってきた。


「我がボルフィスの近くまで、全員を運べばいいだろう。」


 まったく何を考えてるんだか。確かに私達ぐらいだったら、ドラゴンになったエシェットなら、簡単に運べるだろう。だがドラゴンだぞ。人目につかずに飛べる訳がない。ドラゴンが出たなんて、いろんなところに情報がいってみろ。大騒動だ。仮にドラゴンは別として、この大雪の降る中を飛んでみろ。結界を張った所で寒さはしのげない。皆んな凍死するだろう。

 そう説明してやれば、人間は軟弱な生き物だと、呆れ顔をしてため息を吐いていた。呆れるのはこっちだ。まったく。本来のドラゴンの姿に、人前でなれないことも忘れていたと笑っていた。忘れないでくれ。大事な事なんだから。

 話をまた元に戻そうとしたとき、またエシェットが話に割り込んできた。今度は何だ。


「雪がなくなればいいのだろう。道のところだけでも。」


「ああ、そうだ。だからそれの方法を考えてるんだ。」


「ふむ…。」


 そう言った後、エシェットは何か考え始め黙ってしまった。私達もどうするか考えるが、いい考えが浮かばないまま、少しだけ時間が過ぎた。雪が止む方法なんてないし、今雪かきをしてくれている、魔獣やその主達に任せるしかないだろう。

 その時、ずっと黙って何かを考えていたエシェットが、また話しかけてきた。


「道が通れるようになれば良いのだな?」


「ああ、そうだが。」


「では、我とマシロで雪を払ってこよう。」


 部屋から出て行こうとするエシェットを慌てて止める。


「ちょっと待て。まさかドラゴンになって、吹き飛ばすとかじゃないだろうな!」


「まさか。さっきはドラゴンになれないのを忘れていたが、今は忘れていない。それにこれからやる事はドラゴンにならなくても、簡単に出来る事だ。人に見られないようにだったな。安心しろ。では行ってくる。」


 それだけ言うと、さっさと部屋から出て行ってしまった。何をする気だ。本当に大丈夫なんだろうな。本気のエシェット達に私達が敵わないのは分かっているが、今すぐにでも、今からやろうとしている事を、止めさせたい気持ちでいっぱいだ。

 本当に頼むぞ。厄介ななことだけはしないでくれ。

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