第116話雪とお出かけ準備

「ほらユーキ、サヨナラの挨拶だ。」

「………。」

 僕は今、ちょっと寂しいです。寂しくてほっぺを膨らませて、口はギュってしてます。壊れたお家がほとんど直って、今日はザクスさんが、自分のお家に帰っちゃう日です。この頃ずっと一緒にご飯食べたり、たまに遊んでくれたり、とっても楽しかったのに、もう終わりです。

 お父さんの足にしがみ付いて、お父さんの足から少しだけ顔を出します。

「………バイバイでしゅ。」

「ユーキおいで。」

 ザクスさんに呼ばれて、少しずつ近づきます。ザクスさんの前まで行くと、ザクスさんが抱っこしてくれました。僕はぎゅうううって抱きつきます。

「いいかユーキ、今度はユーキが俺の家に遊びに来てくれ。」

「ザクシュしゃんのおうち?」

「そうだ。俺の兄さんもユーキに会いたいって言ってるし、それに俺の奥さんも会いたがってるんだぞ。あとな、もしユーキが遊びに来てくれたら、とっても美味しいお菓子、食べさせてやるぞ。」

「おかし!ぼく、おかしたべちゃいでしゅ!!」

「よし、じゃあ、必ず遊びにくるんだぞ。約束だ。約束守れるか?」

「はいでしゅ!!」

 ザクスさんのお家に行くお約束。お父さんも頷いてます。いつ遊びに行くのかな?明日?それともあさって?あっ、この前はザクスさんがお菓子のお土産、たくさん持ってきてくれたから、今度は僕が持って行かなくちゃね。楽しみだなあ。寂しかった僕は、遊びに行くの考えて、元気になりました。


 街の門まで行って、門の前からバイバイです。ザクスさんが手を振ってくれて、僕も一生懸命手を振ります。それからザクスさんが先頭で、騎士達が後ろからついて行きます。街の人達も皆んなバイバイしてます。ザクスさん達が見えなくなって、今度は冒険者さん達がバイバイです。

「おいちびっ子。」

 呼ばれて振り向いたら、お母さんに怒られて、おやつ貰えなかった冒険者さんがいました。僕のお菓子あげた人。

「この前はお菓子ありがとな。これはそれのお礼だぞ。」

 冒険者さんがくれたのは、たくさんのアメの入った袋でした。

「ふわわ、ありがとでしゅう!!」

「俺の名前はザイン。」

「ジャインしゃん、ありがとでしゅう!」

「ははは。また会おうな!!」

 そう言ってザインさんは、ほかの冒険者さんと一緒に、門から出て行きました。僕はまたまた一生懸命にバイバイです。

 たくさんの騎士さんと冒険者さんが、自分のお家に帰って行っちゃったから、なんか街の中が静かになった感じがします。僕達もお家に向かって歩き始めました。僕は今日はくろにゃんに乗ってます。そんな僕をマシロがしっぽで落ちないように、押さえてくれてます。少しずつ、乗れる時間が長くなってきたんだよ。だけどやっぱりたまに転がりそうになっちゃうから、一応です。


 お家の門を通った時でした。チラチラ、チラチラ。白いふわふわした物が降ってきました。上を見たら、それがたくさん落ちてきます。僕は手を上げました。

「ふわふわ!!」

「危ないぞ、手を離すな。」

 マシロがそう言ったけど、僕はふわふわの方が気になるよ。

「おっ、いよいよ雪が降ってきたか。これからもっと寒くなるぞ。」

「たくしゃん、ふるでしゅか?」

「ああ、そうだな。ユーキの背と同じくらいは降るな。ユーキなんか潜って出られなくなるぞ。」

 え?そんなに降るの?でも僕雪見たの初めてだから、たくさん積もったら、いろいろ遊ぶんだ。何しようかな。雪合戦とか、雪だるまとか、雪でおままごともしたいし、リク君はどんなお遊びしたいかな。

「いちゅ、いっぱいなるでしゅか?あちたでしゅか?」

「ハハハッ、明日は無理だな。3日くらい待ってれば、少しは積もるだろう。」

「かあしゃん、しゅぐリクくんとこ、いくでしゅよ。あしょぶおやくしょくしゅるでしゅ!!」

 僕がそう言ったら、お母さん困ったお顔してました。どうしたの?お家に入って、休憩のお部屋に行ってから、お父さんがお話してくれました。

 何かね明日から僕達皆んなで、お出かけするんだって。ちょっと遠い所に行くから、少しの間リク君とは遊べないみたい。遠い所、どのくらい遠いのかな。あっ、でも、家族皆んなでお出かけするんだよね。お父さんもお母さんも、お兄ちゃん達もじいじもばあばもみーんな。嬉しいなあ。楽しみだなあ。

「みんなでおでかけ、うれちいね。」

「ああ、そうだな。そうだユーキ、持って行きたい物があったら、用意しておきなさい。あんまりたくさんはダメだぞ。」

 そうか!明日から行くんだよね。急いで用意しなくちゃ。僕のお洋服とかは、もうお母さんとアメリアが用意してくれたんだって。じゃあ、僕はおもちゃとかぬいぐるみとか用意しよう。あとお絵かきのお道具パスミルも持って行かなくちゃ。もちろんお菓子もね。そうだ。おでかけする所は雪が積もるのかな?

「とうしゃん、おでかけのところ、ゆきふるでしゅか?」

「着く頃には、たくさん積もってるぞ。」

 じゃあ、雪でも遊ぶよね。おままごとのお道具持って行こうかな?僕はいろいろ考えて、とっても楽しみになって、お顔がずっと笑ったまんまになっちゃった。

「ふへへへへ。おでかけのじゅんびしゅるでしゅよ。」

 僕は休憩のお部屋を飛び出してました。

「きゃあああああ!」

「ああもう、あんなにはしゃいで、アンソニーちょっと見ててくれ。それで余計な物持って行かないように注意しといてくれ。」

「分かった。ユーキまって!僕も一緒に準備するよ!!」


 まずはお遊びのお部屋から。お兄ちゃんがお部屋に入ってきて、僕に僕と同じくらいのカバンわたしてきました。何かね、このカバンに入るだけにしなくちゃダメって。おもちゃも、お菓子も全部でこのカバンです。えー、僕、おもちゃたくさん持って行きたいのに。おでかけの途中でお菓子もたくさん食べたいし。

「ユーキ、途中でお菓子は買えるよ。きっと食べたことのないお菓子もあるし、家からたくさんお菓子持ってったら、そのお菓子食べられなくなっちゃうよ。だから少なくしておこうね。」

 食べたことないお菓子!!そんなのがあるんだね。そっか。じゃあ、お菓子は少しだけ少なくしとこう。お菓子は壊れちゃうから1番最後に入れます。

 まずはオモチャから。シルフィー達と遊べるのは、やっぱりおままごと。皆んなのお気に入りのおままごとのお道具ひとつずつ、カバンに入れていきます。キミルとくろにゃんは、まだ遊んだことないから僕が選んだよ。キミルにはお花の絵が描いてある小さなコップで、くろにゃんには黒と白のしましまのお皿です。全部カバンに入れて、次はパスミル。パスミル入れたら、あと少しお菓子が入るだけになっちゃった。ぬいぐるみどうしよう。

「何そんなに、ブスッとして考えてるの?」

「ぼく、うさぎしゃんと、ルーリアのぬいぐるみ、もっていきたいでしゅう。でも、はいらない…。」

 ルーリアは、リスさんみたいな魔獣で、とっても可愛いんだよ。

「ああ、そういうこと。ぬいぐるみは抱っこして持っていっちゃえばいいよ。どうせ馬車で移動だし。ね。」

「カバンいれなくていいでしゅか?」

「うん。大丈夫。」

 お兄ちゃんが大丈夫って言ってくれたから、ぬいぐるみは馬車で僕が抱っこするか、隣に乗せよう。シルフィーも抱っこしてあげたいしね。あとはお菓子の置いてあるお部屋行って、お菓子入れたら準備完了です。

 荷物は、玄関ホールに置いておくんだって。後でまとめて馬車に乗せるんだって。馬車は全部で3つ。僕とお父さんとお母さんとお兄ちゃん達の乗る馬車と、じいじとばあばが乗る馬車と、あとは荷物を乗せる馬車です。

 アシェルが荷物の確認してました。今度のお出かけは、アシェルもアメリアも行かないんだって。それ聞いて僕はしょぼんです。皆んなでお出かけじゃなかったの?アシェルもアメリアも、お仕事がたくさんあるんだって。そっか…。残念。じゃあ、僕お土産買ってくるからね。


 お出かけ楽しみで、ずっとワクワクしてたら、夜なかなか寝られませんでした。

「ユーキ、ほらもう寝ろ。」

「ふんふん♪ふんふん♪」

「これじゃあ明日は、馬車の中でほとんどおねむかしらね。」

「だろうな…。私達もそうなりそうだな。はあ、ユーキ早く寝てくれ。」

「ふんふん♪ふんふん♪」

 とっても楽しみ!!

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