第114話名前とあだ名

 お父さん達の頭痛いのと気持ち悪いの治ったのは、それからずっと後でした。だからお母さんとばあばそれからアシェルに、役に立たないって言われて、皆んな自分のお仕事に行っちゃいました。僕はばあばと、お庭のお片付けです。

 ばあばや騎士さん、冒険者さんが要らない物を集めて台に乗せて、それをマシロとルドックが運びます。ゴミを集める場所決めて、最後に全部燃やすんだって。僕もばあばの隣でゴミ拾いです。うーん、この木は要らない、こっちの木も。僕が持てるのは3つくらい。拾って台に乗せて、それを何回もします。けっこう大変。

 そういえば、昨日はたくさん悪い人たち倒れてたのに、今は全然誰も居ません。

「ばあば、わるいひとたち、どこいったでしゅか?」

「悪い人達は皆んな、悪い人達が入れられる小さなお部屋に入ってるのよ。皆んなお仕置きされるのそこで待つの。」

「しょうでしゅか。じゃあ、もうわるいひと、おうちにいましぇんか?」

「ええ。もう居ないわ。」

 良かった。たくさん悪い人達転がってたから、掃除する時邪魔だもんね。またお母さんに蹴ってもらわなくちゃいけないよ。

 皆んなで掃除してるから、僕達がお掃除したところはすぐに片付きました。なので次の場所に移動です。


 次の場所は、さっきの場所よりも、たくさんゴミがありました。ばあばは疲れたらお部屋に戻ってて良いって言ったけど、僕だってお手伝いできるもんね。またゴミ拾い開始です。ゴミ拾ってたら、木の下に壊れたイスを発見です。僕はイスの方に走って行きました。僕の背より大きなイスです。それに飾りみたいなのもいっぱいついてて重そう。

「このいしゅ、おおきいでしゅね。」

「ユーキ運べる?」

 シルフィーがそう聞いてきました。大丈夫なはず。引っ張れば運べるよ。イスの背中のところ持って引っ張ります。シルフィーも噛み付いて、一緒に引っ張ってくれました。

「ふにゅにゅにゅにゅ!!」

 力いっぱい引っ張って少しだけ動きました。マシロの所まで遠いけど頑張らなくちゃ。もう1回引っ張ります。

「ふにゅううううう!!」

 今度も少しだけ動きました。ふう、大変。エシェットとばあばが近寄ってきて手伝ってくれるって言ったけど、僕が見つけたんだから、僕がお片付けしないとね。

「ふゆゆゆゆ!!………あれ?」

 急にイスが軽くなりました。エシェットを見てもばあば見ても、2人とも何もしてません。

「ユーキどうした?早くマシロの所に運んでしまえ。それでそれが終わったらおやつの時間だそうだぞ。」

 おやつ!!どうして軽くなったか分かんないけど、早く運んでおやつにしなきゃ。軽くなったイスをマシロの所にさささって持っていって、今日のお手伝いは終わりです。僕はスキップしながら、臭くなくなった休憩のお部屋に行きます。エシェットとばあばが何か話してました。

「あなた、あれは風の魔法ね。それでイスを少し持ち上げたわね。」

「あれくらい良いだろう。ユーキも手伝いが出来るし、早く終われる。」

「ありがとうね。」


 おやつ皆んなで食べてたら、お母さん達がお部屋に来ました。お母さん達のお話し合い終わったんだって。それでね僕にお話があるんだけど、おやつ食べてからでいいって。お母さんは僕が喜ぶって言ってたよ。何かなあ?凄く気になるけど、でも、このお菓子美味しいから、ゆっくり食べたいし。袋はサッて開けて、食べるのはゆっくり。うん、これなら少しは早く食べ終わるよね。

「大して変わらないじゃん。」

「しっ、ジョシュア貴方はそういう事言わないの。」

 ジョシュアお兄ちゃん何か言った?僕忙しいから後でね。おしゃべりしてる時間はありません。アシェルがくれたお菓子も、ザクスさんがくれたお菓子も、とっても美味しかったです。またくれないかなあ。あっ、でも、この前貰ったお菓子まだ残ってるから、まだ美味しいお菓子食べられるね。


おやつの時間が終わったから、お母さんのお話です。最初にお父さんが、

「ルドックすまん、止められなかった。」

 そう言ってルドックに謝ってました。ルドックはポカンってお顔してました。

「ユーキちゃん、ルドックのお名前の事なんだけど、ユーキちゃんは本当はくろにゃんが良いのよね。」

「はいでしゅ!!でも~、ルドックいやでしゅ。とうしゃんもだめでしゅう。」

「ユーキちゃん、あだ名って知ってる?例えばね、私のお友達に、ミリアリーって言う名前のお友達がいるの。お母さんはミリアリーのことミアって言ってるのよ。」

 ミリアリーなのにミア?何で?

「それがねあだ名って言うの。本当のお名前はあるけど、言いにくいとか、もっと呼びやすい呼び方にするの。あだ名で呼べるのは、お友達だけなのよ。だから、ルドックもそうしたらどうかしら。ちゃんとお名前言わなくちゃいけない時はルドックだけど、お家にいるときや、お部屋?で遊んでる時とか、いろいろな街に遊びに行ってる時とか、くろにゃんって呼べばいいわ。」

 よく分かんないけど、遊んでる時は、くろにゃんって言ってもいいの?でもルドック嫌がらない?僕はルドック見ました。ルドックはお口開けて固まってました。マシロ達は皆んな笑ってます。何で皆んな笑うんだろう。こんなにいい名前なのに。お母さんが今度はルドックにお話です。

「今回ユーキちゃんに怪我させたのは、ルオンだったけれど、少しは貴方の責任でもあるのよ。これくらい良いんじゃない。それに貴方は、ユーキちゃんのおかげで怪我も治ったとか。貴方の主がそれが良いって言ってるのよ。何か問題が?良いじゃないルドックって言う、立派な名前も付けてもらったんだからそれくらい。」

 ルドックが何か言おうとしても、お母さんはお話やめません。それでね、やっとお母さんのお話が終わって、ルドックが

「分かった。それでいい…。」

 そう言いました。いいってことは、どういうこと?僕が考えてたら、お母さんがくろにゃんって呼んでもいいってこと、そう教えてくれました。いいの?くろにゃんって呼んで。

「でも、ちゃんとしたお名前言う時は、ちゃんとルドックって言うのよ。お約束よユーキちゃん。」

「はいでしゅ!!くろにゃんでしゅ!くろにゃんありがとでしゅう!!」

 僕はくろにゃんに抱きつきました。くろにゃんは何か静かになっちゃってたけど、僕はとっても嬉しいです。マシロ達はずっと笑ってたけど。


(ウイリアム視点)

 ルドックの落ち込んだ姿を見て、可哀想になった。そして心の中でもう1度謝る。本当にすまん。

 二日酔いがなんとか治り、私は父さん達に、森で起こった出来事を全て話した。ユーキが怪我させられたこと、それに怒ってエシェットが、すべての人間、魔獣を消そうとしたこと、その後ルオンがどうなったか。全てを詳しくだ。

  ルオンの事に関しては、全員がそれでいいと言った。ルオンにとって、今できる最高の罰だろうと納得していた。


 しかしそれからが、オリビアの質問攻めだった。ルオンに関しては、やっぱり自分もその場にいて、少しは何かしてやりたかったとか、森を破壊したエシェットに関しては、これから別に何か罰を与えると言い、そしてルドックの話だ。

 確かに1番悪いのはルオンだ。しかし、少しでも原因のあるルドックに、オリビアは罰がいると言った。そして名前に関しては、何でユーキの言うことを聞かなかったんだと私まで怒られてしまった。

 だってくろにゃんだぞ。ワイルドブラックキャットなんだぞ。可哀想じゃないか。だがオリビアは引かなかった。最後にはあだ名にして、ユーキにそう呼ばせると言ってきた。もうそう決めてしまったらしく、その顔を見て、もう何を言っても無駄だと思った。

 ルドック、頑張れ…。私はそう思いながら、ユーキがおやつを食べている、休憩の部屋へと向かった。向かっているオリビアの足取りは、やけに軽く見えた。

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