第46話変身。そして勇輝とマシロ。

<ユーキ視点>

「はあ~。」

 マシロがのそのそと僕の側に来ました。何でため息?せっかくお友達出来たんだから喜んでよ。

「新しい友達が出来て嬉しいのは分かるが、おじさんを家に連れて行って、寝る場所はどうする。主の部屋は勿論入れないし、庭も無理だぞ。色々な物が置いてあるんだ。おじさんが庭に降りたら、物が壊れるぞ。」

 あっ、そうだ!どうしよう。エシェット大きいもんね。うんとね、僕のお部屋には入れないって言ったけど、3階のお家くらい。お羽広げたら、もっと大きくなっちゃう。ここは広いからいいけど、お家に行った時の事、考えてなかったよ。

 僕がうんうん唸ってると、おじさんが話しかけて来ました。

「小さくなれば問題なかろう。」

「エシェットちいしゃく、なれましゅか?マシロくらいがいいでしゅ。」

 マシロが自分くらい小さくなっても、ドラゴンって言うことが問題だって。ドラゴンもいけないの?それじゃあ、一緒に居られないよ。僕そんなのやだ。

「ああ、確かに人間の前でドラゴンは不味いな。そうかそうか。では久しぶりにあの姿になるか。」

 そう言うと、エシェットの体が光りました。光はだんだん小さくなっていきます。そして光が消えた所に。

「だれでしゅか?」

 光が消えた所に、1人の男の人が立っていました。アンソニーお兄ちゃんよりもちょっと大人な感じの人です。お洋服は黒と青色のカッコいいお洋服着てます。

「誰とはなんだ。我はエシェットだ。どうだ。ちゃんと人間の男に見えるだろう。」

「………。」

「ユーキどうした?人間に見えないか?」

 僕はじっとエシェットを見ます。そして。

「ふわわ、ふわわわわ。カッコいいでしゅ!へんしんできるでしゅか!」


 僕はエシェットの足に抱きつきました。凄い凄い。変身出来るなんて。これなら僕のお部屋入れるし、街の中でも一緒に歩けるから、他の人達気にしないで、お店とか見に行けるね。

 僕がわあわあ喜んで、エシェットに抱きついてたら、後ろでマシロが何か言ってた。でも小さい声だっだから、何言ってるか分かんなかったよ。

 エシェットが僕を抱き上げてくれます。背が高いから、ちょうどお父さんみたいな感じです。

 あっ、何かお父さん達思い出しちゃった…。

「とうしゃん、かあしゃん、にいしゃん…。」

「ん?どうしたユーキ。具合でも悪くなったか?」

 急に静かになった僕に、エシェットが心配してくれます。僕は何か泣きそうになっちゃって、ぎゅうっとエシェットにしがみ付きました。

「家族を思い出したか…。おいおじさん、少しの間そのまま抱っこしていてやってくれ。離れた家族のことを思い出して、少し寂しくなったようだ。」

「そうか。良いぞ。いくらでも抱っこしていてやろう。」

 僕はお父さんの抱っこを思い出しながら、そのままエシェットに抱っこされて眠っちゃった。


<マシロ視点>

 主はエシェットに抱かれたまま、すうすう寝息を立てながら眠ってしまった。今まで泣かずに頑張っていたが、やはり相当寂しいのだろう。朝になったらすぐに移動を始めて、家へ帰ろう。

 しかしその前に大事な問題が残っている。

 森の生き物達は、ユーキを抱いたおじさんに別れの言葉を述べると、森の中へ戻って行った。おじさんは、ニコニコ顔で主を抱いたまま、その場に座った。

「おいおじさん、話がある。」

「何だ。ユーキが眠っている。静かにしろ。それに我はエシェットだ。おじさんではない。ユーキに貰った大事な名前だ。」

「そんな事はどうでもいい。いいか良く覚えておけ。主をまあ、しょうがない、エシェットと呼んでやるか。エシェットに任せるのは今だけだ。主が起きたら、また我が面倒を見る。分かったな。」

 そう。大事な問題とは、主のお世話の事だ。

 まったく主は、我が止めるのも聞かず、エシェットと契約してしまって。これではどんどん我の存在が、小さくなってしまうではないか。主に友達が増えるのは構わないが、同じような立ち位置の者は、なるべく避けたいものだ。今だって本当だったら我のベッドで寝かせたいのだ。

 そんな私の気持ちに気付いたのか、エシェットがフンと鼻を鳴らした。

「やきもちとは、心が狭いことだ。ユーキの気持ちを1番に考えるのが、お前の役目ではないのか。まったく余裕がなさ過ぎるぞ。」

 エシェットの言葉に、我はチッと、舌打ちをした。すると急に真面目な顔をして話し出した。

「我はそこまで、ユーキの信頼を勝ち得てはおらん。今回ユーキが我の腕の中で眠ったのは、たまたまだ。気付いていない様だから教えてやる。ユーキは何か考える時、喋る時、殆どと言っていいほど、お前の様子を確認していたぞ。本人は気付いていないがな。」

 おじさんは、我もエシェットの存在が気になって、気付いていなかっただろうと言ってきた。まったくその通りだ。おじさんのせいで全然気付いていなかった。

「無意識にお前を頼っているという証拠だ。それだけお前の存在は大きい。出会ったのはいつだ?」

 

 我は主との出会いを話した。主が1番最初に出会ったのが我である事。これまで1度も離れた事がない事。寝る時も必ず一緒にいる事。色々なことを話した。

「それであれば、お前はユーキの特別だ。我は絶対にお前の様な存在にはなれん。友達としては大事にしてくれるだろうが、そこまでの存在になるには、どれだけ年月がかかるか分からん。お前はもうユーキの友達ではない、家族なのだ。」

 エシェットの言葉に、ディル達も頷いている。

 そうなのか?主は我を無意識にでも、家族と思ってくれているのか?それだけ大切だと思ってくれているのか?

 それならば、こんなに嬉しく、幸せな事はない。


 我は静かに主に近づき、そっと鼻を主の頬に擦り寄せる。主の匂いが香ってくる。我の心はとても暖かいものでいっぱいだ。

「朝になったら、街へ出発だ。少なくとも2日はかかる。必ず無事に主を家へ返す。」

「勿論だよ!」

「オレだって、出来ること何でもするぜ!」

「僕ユーキ守る。」

「我も友達にしてもらった。こらからはユーキを守る仲間だ。」

 空が明るくなって来た。出発の時間が近づいていた。

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