第47話再開の兆し

「主、主、朝だぞ。ご飯を食べて出発だ。」

「ふええ…。ねみゅい…。」

 もう1度寝ようとしたら、無理やり起こされました。そしてぼけっとしながら朝ご飯です。食べてる時、こっくりこっくり。

「夜中に起きていたからな。仕方ないんだが。まあ主は我の背に乗せて行くから問題ないが、エシェットはどうするんだ。途中までは勿論飛んで行くんだろう?」

 僕がエシェットの顔を見ると、エシェットは不思議そうな顔してました。そして何で飛ばなくちゃいけないんだって言いました。え?せっかく飛べるのに飛ばないの?

「お前達、我をドラゴンと思って話しているからダメなのだ。我は今人間の姿だぞ。我がユーキを抱っこして、マシロに乗れば良いではないか。」

 …そうだよね!人の姿だった。僕は抱っこして貰えるし、マシロには乗れるし、とってもいい方法だよね。ドラゴンの姿ばっかり見てたから、人の姿になってるの忘れてたよ。今だって抱っこして貰ってるのに。失敗失敗。

「いや、我はエシェットを乗せるなど嫌だぞ。我が乗せるのは主だけだ!」

 マシロが嫌がってます。いいじゃん。みんなで一緒に行けるんだよ。マシロなら僕達乗せても全然平気で走れるでしょう?

「マシロ、良く考えてみるのだ。我はエンシェントドラゴン。お前は上位種とはいえフェンリル。どちらが上なのか。」

 おお、何かエシェットがニッと、カッコ良く笑ってます。そしてふんっとお鼻を鳴らしました。

「ぐっ、夜の我を持ち上げたのは、何だったのだ。」

「これはこれ、それはそれだ。それに良く考えてみろ。途中までとはいえ、もし人間に姿を見られたらどうする。ドラゴンはダメなのだろう。」

「………。」

「よし決まった事だし、ユーキさっさとご飯を食べろ。そしてユーキの家へ帰るぞ。」

「はいでしゅ!」


 僕もやっと目が覚めて来たよ。ご飯を頑張って早く食べます。早く出発したいから。

 ご飯を食べて、木の実を持って、抱っこされながらマシロに乗ります。シルフィーは人の居るところに着くまでは、お洋服着ないで、ゆっくりマシロに乗ります。お洋服着たシルフィー可愛いけど、さっぱりしてた方がシルフィーはいいよね。

「しゅっぱーちゅでしゅ!」

 僕の掛け声で、マシロが木の上に上がり、走り出しました。

 あの黒服の人達に見つからない様に、気をつけて走ります。とりあえず、森のお外に出るのは今日の夜くらいだって。森の奥まで来ちゃったから、街に着くのに1日多くなっちゃった。街まで3日です。でも、エシェットに会えたからいいや。

 ご飯もちゃんと持ってるし、夜寝るときはマシロベッドあるし、これなら大丈夫だよね。

 どんどんマシロが走ってくれて、真ん中くらいまで来たときに、お昼になりました。1回目の休憩です。みんなでお昼ご飯です。ご飯食べてちょっと休憩したら、また出発です。

 食べ終わって、僕はマシロに寄っかかって休憩したけど、エシェットはもう少し、木の実探して来るって行っちゃった。採れるときに採っといた方が、後が楽だからって。僕もって言ってシルフィーも行っちゃった。

 僕はちょっとお昼寝です。ウトウトしてた時でした。


 ドッガアアアアンッ!!


 突然、爆発みたいな、大きな音が聞こえました。近くじゃなくて、ちょっと離れてる感じ。

「な、なんでしゅか?マシロ?」

「………。」

 エシェット達が、走って戻って来ましたきました。

「おい、今の爆発は、お前達が昨日来た方向ではないか?」

 あのお家がある所?黒服の人達が何かやってるの?

「ちょっと上から見て来る。主を頼むぞ。」

 マシロが僕をエシェットに抱っこさせて、木の上に登って行きます。ちょっとして、突然ディルとリュカが騒ぎ始めました。大きい音は止まってません。

「マシロ!降りて来て!」

「あの音の近くに居る妖精が、連絡くれたぞ!」

 マシロがすぐに降りて来ました。2人が教えて貰った事を、話してくれます。

 そしたら、あの大きな音は、人と人が戦ってる音だって。黒いお洋服を着た人達と、白いお洋服着た人達が、戦ってるって。

 黒いお洋服の人達は、あの黒服の人かな?白いお洋服の人達は誰だろう?戦ってるなら、悪い人達じゃないのかな?

「2人とも、もう少し詳しく聞けるか?黒服は奴らだろうが、白服の方をもう少し詳しく聞いてくれ。」

「うん!」


 2人が黙って、時々頷いてます。そして白いお洋服の人達の事が分かりました。

 黒服の人達があのお家に戻ってくる前に、その白服の人達は来たみたいです。全員馬で来て、腰に剣持ってたって。お家の中を調べてたみたい。

 お外には、何か置いてあったみたいで、2人がそれが何かは教えてくれなかったよ。白服の人達の中に女の人が2人いて、その1人の女の人がそれ見て泣いてたって。その女の人を、1人の男の人が抱きしめてたって。

 その人達が帰ろうとして、馬が歩き出した時、黒服の人達があのお家に来たみたい。

 最初はどっちとも、動かなかったけど、白服の方にいた女の人達が、突然攻撃始めたって。

「白服は悪い奴らではないのか?」

「そう決まった訳ではあるまい。悪い者同士の争いの場合もある。」

「あっ、ちょっと待って!多分名前言ってるって!ええと…、!!」

 どうしたの?誰だか分かったの?ちょっとドキドキです。もう悪い人達に会いたくないよ。 2人が勢い良く、僕の目の前に飛んできたよ。

「団長とか、ウイリアム団長、オリビアって名前が聞こえたって!」

「ユーキ!今あそこに居るの、ユーキの家族だぞ!!」

「………とうしゃん、かあしゃん?」

「そうだよ!みんなユーキを探しに来てくれたんだよ!」

 とうしゃんとかあしゃんが、あの音のする所に居るの?なら行かなきゃ!

「マシロ!いくでしゅよ!ぼく、とうしゃんかあしゃん、あいたいでしゅ!あえるでしゅ!はやくのしぇてくだしゃい!」

 僕はマシロにお願いします。でもマシロはダメだって言います。どうして?会えるのに何でダメなの?

「いやでしゅ、いくでしゅ!マシロ!」

「ダメだ!怪我する可能性もある!」

「いやでしゅ、いやでしゅ、いくでしゅ…、うわああああん。」


 会えると思ったら、我慢出来ませんでした。エシェットがポンポンと背中を叩いてくれます。

「マシロ、我から頼みがあるんだがな。我もそのユーキの家族とやらの手伝いに行ってはいけないか?勿論ユーキ達も行ってもらわんと、もし間違えて攻撃してしまってはいけないからな。」

「どういう事だ。」

 森のみんなが、安全に暮らせる様にしてあげたいんだって。みんなに感謝したいから、僕と友達になる事、みんなが喜んでくれたからだって。だから森から出る前に、この森に要らないもの、無くしたいんだって。

「だが…、もしユーキがまた捕まる様な事があれば…。」

「結界を張る。我の張る結界だ。簡単には破られん。それに我が行けば、ユーキの家族も守る事が出来るし、あんな黒服ども、我の足元にも及ばない。」

「………。」

「我がユーキを守れないとでも…、フェンリルの分際で、我に逆らうか…。」

 急にエシェットがおっかない顔しました。ビックっと震えちゃった。

「エシェット…、ヒック、こわいでしゅ、えっく…。」

「ああすまない。此奴がどうにも弱腰なものでな。で、どうするんだ。」

 エシェットはすぐいつもの笑顔に戻ったよ。マシロははあーってため息。そして。

「分かった。だが必ず主には頑丈な結界を張れ。いいか、絶対に怪我などさせるな。もし怪我をさせれば、無理やりにでも契約は解除して貰うからな。」

「分かっている。怪我などさせる訳があるまい。よし、ユーキ、あそこへ向かうぞ!」

「ヒック、はいでしゅ!」

 マシロに乗って、お父さん達の所へ。

 待っててね、すぐに会いに行くからね!早く早く会いたい!!

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