第45話優しくて大きくてカッコイイ友達
<ドラゴンおじさん視点>
ガサッ、ゴソッ。
現れたのはこの森に住む魔獣や妖精だった。見回りの時に見たことのある者もチラホラ見える。だが、何故こんなに集まってきたのだ?森でまた何かあったのか?
我の心配をよそに、誰も慌てる事なく、皆大人しくしている。そしてその中からそこそこ力のある猫型の魔獣と、妖精の代表が我の前に出てきた。
「何だ、どうかしたのか?」
「おいじじい、この子供と一緒に行ったらどうだ。」
「そうだよ。僕達はそれを言いに来たんだよ。」
何だ。此奴らは何を言っているのだ。こんな大勢集まって、何を言いに来たかと思えば、そんな事を言うために集まったのか?
「何を言っている。ふざけた事を。」
「ふざけてなんか無いぜ。本気に決まってる。」
「そうだよ。僕達本気で言ってるんだよ。」
まだふざけるか。まったく揃いも揃って。
だが次の言葉に、私は返事を返す事が出来なかった。
「じじいあんた、気付いて無いんだろう。だがオレ達は気付いたぜ。…じじい、笑ったのいつぶりだ?そりゃあ、少しは笑う事はあったろうが、あんなに声を上げて笑ったのを、少なくてもオレ達は聞いた事なかったぜ。長生きしてるオレ達がだぞ。」
…そうだったか?私は自分でも、久しぶりに笑ったと分かっていたが、そんなに長く笑っていなかったのか?
「それなのに、その子が来てからほんの少しで、あんなに笑うんだもん。僕達だってびっくりしたんだよ。それでね、その後僕達チラチラ見てたんだ。気配で知ってるでしょ。」
そうだったのか。ウロチョロしていた気配は、此奴らがチラチラ覗きに来ていた時のものか。来ては帰りを繰り返していたから、少し気になってはいたが。
「それでね、僕達分かったんだ。おじさんはこの子と一緒に居るべきだって。あんなに楽しそうに、幸せそうに笑ってるおじさん始めてだった。その子の言う通り、僕達の幸せを守ってくれるおじさんが、幸せになれないなんて、僕達嫌なんだ。」
そんなに我は楽しそうにしていたのか。気付かんかった。確かに少し話しただけで、この子供の澄んだ魂に惹かれたのには気付いた。こんなに無垢な子供が居るのかと。我の力を求めるのではなく、ただカッコイイと目を輝かせて嬉しそうに笑う。
だが、自分がそこまでこの子供にハマっているとは思わなかった。
まったく言われて気付くなど、我もまだまだのようだ。しかし。
「我が居なくなったら、この森は誰が守るのだ。話を聞いていたなら知っている筈だ。今この森には変な奴らが住み着いてしまっている。その者達から守る者が必要だろう。それは我の仕事だ。」
猫型の魔獣が大きなため息をついた。それはそれは盛大に。何だ失礼な奴め。
「まったくじじいは…。それただの言い訳だろ。本当はこの子供と一緒に行くのが怖いんだろう。途中でまた1人になるかも知れないってな。でかい体してすげえ、長生きのくせに弱いじじいだ。それにオレ達のことも言い訳にすんな。オレ達がこの森を守れないとでも思ってるのか。そりゃあ勿論じじいが居なくなれば、力は落ちるかも知んないが、それですぐにこの森が無くなるもんじゃ無いだろう。オレ達が力を合わせれば、この森を守っていける。」
「しかし…。」
痛い所を突かれた気がした。そうか我は恐れているのか。この子供に捨てられる事を。また1人になりなってしまう事を。
「ああ、もう!いいよ、おじさんはそこで黙ってて!ねえ、そこの君、ユーキって言うんでしょ。」
<ユーキ視点>
僕は突然、妖精さんに声を掛けられました。
「はいでしゅ!ユーキでしゅ。」
「悪いんだけど、このおじさんに名前つけてあげて。お互いが惹かれあってれば、簡単に契約出来るから。」
契約?お友達になるって事?良いのかな。おじさんに友達になるって言って貰って無いけど。リュカが妖精さんに言いました。
「ユーキの契約は、友達って言う意味だよ。いいの?」
「いいよ。どっちにしたって、おじさんにはユーキと一緒に行ってもらわなきゃ。ユーキあのね、このおじさん、ちょっと怖がりで自分から友達になりたいって言えないんだ。だから代わりに僕達が言ってあげてるんだよ。おじさんユーキと友達になりたいって。」
そうなんだ。おじさん怖がりなんだね。でもお友達になりたいと思ってくれてるなんて、僕嬉しいよ。怖がりでも、皆んなには優しくて、大きくて、カッコいいおじさんだもんね。そんなおじさんと友達になれるんだもん。
「うん。ぼく、おなまえちゅけるでしゅ!えっと…。」
「ま、待て、おい!」
「主!待つのだ!」
マシロとおじさんが何か言ってるけど無視です。今はお名前考えないと。
どんなお名前が良いかな。あれ?そう言えば、お名前考えたの、マシロだけかも。どうしよう。僕、お名前考えるの大変かも…。
うんと、うんと。確かエンシェントドラゴンって種類のドラゴンなんだよね。
じゃあ、エシェットなんてどうかな?エンシェントドラゴンのエシェット。どう?変じゃない?
僕は大きな声で、名前を呼びました。
「エシェット。きょうから、おじしゃんのおなまえ、エシェット!」
おじさんの体が、ほんの少し白く輝きました。僕のお胸も少しあったかくなりました。
「じじい、これでもう言い訳できないぞ。」
「良かったね。2人とも友達になれて。」
ネコの魔獣と妖精さんが、エシェットにそう言いました。おじさんは黙ったまま。どうしよう、お名前ダメだったかな?もっと他の名前が良かった?
「エシェット、おなまえダメでしゅか?」
「…はあ、いや、もういい。我の負けだ。」
負け?何に負けたの?
「お主と居れば、毎日が楽しいだろう。我は楽しいのが好きだからな。ユーキ契約…、ではなく、友になってくれて感謝する。」
感謝はありがとうって意味だよね。じゃあ僕もありがとう言わなくちゃ。
「ぼくも、ありがとでしゅ。おともだちふえたでしゅ!うれしいなあ~でしゅよ。」
僕はエシェットの腕に抱きつきました。
新しいお友達ができました。エンシェントドラゴンのエシェットです。とっても嬉しいなあ。早くお父さん達に、お友達できたって言いたいなあ。
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