第44話黒い森へ。ユーキは何処に。

(ウイリアム視点)

 出発から2日目の夜。私達はレシックの街へ着いた。

 領主に話を通し、そのまま休憩なしで、アジトの摘発に向かう。

 領主はユーキのことをとても心配してくれた。また、自分達の街や人々にも関係あることだと、協力までして貰える事になった。

 私達が、大きいアジトへ。領主はこの街に点在している、アジトと関わり合いがあるとされる、酒場などの摘発を引き受けてくれた。

「これより摘発を開始する。各自速かに位置につけ!」

 時間は夜中になっていた。

 アジトとされる建物に着き、一斉に中になだれ込む。なかなかに大きな建物だった。私は一階で総指揮をとり、2、3、4階と、オリバー達が指揮を取った。

 中には何十人と男や女が居たが、やはり闇ギルドのメンバーと言ったところか。それぞれがまあまあの力の持ち主だった。所々で小さな爆発なども起きた。

 が、最終的には、建物に居た全員を捕まえる事が出来た。こちらに負傷者は1人も出す事なく、摘発は成功に終わった。


 捕まえたら奴らを全て冒険者ギルドに移し、尋問はそっちに任せて、我々は建物内を捜索する。部屋の隅から隅まで1つの証拠を見逃さないように、丁寧にしかし素早く捜索して行く。

 その最中にザクスが、他の摘発を終えてレシックの街へ到着した。

「どうだった?」

「摘発は成功だ。だが今回の事件に関係するような証拠は何も出なかった。こっちはどうだ?」

「こっちも今のところは何も。領主も協力してくれているんだが。だがまだ全て調べ終わっていないからな。諦めんよ。」

「ここからは私も手伝う。お前は1度、体力を回復させて貰ってこい。何か見つかってもすぐ動ける準備は必要だろう。」

「ああ、すまない。ちょっと行ってくる。」

 私は体力回復の為、ノアの所へ行き回復してもらうと、集まって来たたくさんの資料に目を通した。

 まあ、奴らの犯罪の証拠になりそうなものが、それはそれは集まっていた。

 それを見ていると、突然上の方が騒がしくなった。何だと思っていると、ザクスが隠し部屋を見つけたと、私を呼びに来た。

 部屋の中に入ると、そこには1人の男の死体が転がっていた。顔には黒いヘビの刺青が入っている。

「摘発中の爆発で、たまたま壁と壁の継ぎ目がズレてて気付いたんだ。中にこの男がいて、この世界を我々の手にって言って、自害しやがった。」

「おい、まだ運びきれてない奴らが居たな、連れて来て顔を確認させろ!」

 2人の男が連れてこられた。2人とももう諦めているようで、質問した事に一応はちゃんと答えている奴らだ。

「この男を知っているか?」

「こんな顔にヘビの刺青が入った奴なんて…。」

「おいこいつ、ここ数週間前に入って来た下っ端じゃないか。」

「は?本当かよ。」

 男が顔をよく見直す。

「本当だ、こいつ下っ端だ。だが、刺青なんかしてるの見た事ないぞ。」

「知っている顔か?」

 聞くと、このアジトでは1番下っ端のメンバーで、力が弱いと言われ、ご飯や掃除などの雑用をやらされていたらしい。

 2人を戻し、部屋の中を調べる。見つかった資料の中には、消えたとされる魔獣の資料などが、複数見つかった。

 ザクスが資料を見ながら、自分の持ってきた資料とみくらべていた。

「闇ギルドに紛れ込んで、何かしていたみたいだな。」

「何かあっても、矛先を闇ギルドに向けさせる為か。」


 やはり新しい、何らかの組織が出来ていた。最悪だ。ユーキは一体何の組織に拐われたんだ。この先何処を探せばいい。

 私が焦っているのが分かったザクスが、落ち着けと言ってくるが、そう簡単に落ち着く事が出来ない。死んだ男の方を忌々しく眺めた。このままではユーキの事が何も分からずに、助けに行くことも出来ない。あの消える瞬間約束したのに、あの時のユーキの不安そうな顔を思い出す。

  ふと男の洋服、袖のところに目がいった。何だ?何かがおかしい気がする。私は死体に近くと両方の袖の部分をみくらべた。

「どうした?」

 ザクス達が寄ってきた。

「右の袖の縁の所、左よりもほんの少しだけ膨らんでないか?」

 それは本当に見過ごしてしまうような僅かな膨らみだった。

「どうでしょうね。私には違いが分かりませんが、調べてみましょう。」

 オリバーがナイフで袖の部分を切っていく。切り終わり袖を広げると中から2枚の紙が出てきた。1枚目には地図と思わしき簡単に書かれた図と、その図には黒い点が書いてあった。2枚目には、この男宛てなのか、

『作戦は順調。黒い点の場所で待つ。』

 と書いてあった。


 私はすぐ動いた。領主に会い地図を見せる。簡単に書かれたものだ。これで分かれば苦労はしないのだが、もし分かればユーキに少しでも近づけるかもしれん。

 領主は少しの間紙を眺めた後、大きな地図を持って来させた。分かったのか?アレが何の地図なのか。ドキドキしながら答えを待つ。そして。

「これは多分、黒い森の物だろう。この地図にある、この独特の木の形。この木は黒い森の中の特定の場所にしか生えていない木に似ている。私が持っている地図と合わせたが、木の生えている場所が一致している。」

「では、その黒い点の所に何かが。」

「おそらくは。私の部下に案内させよう。あの森は迷いやすい。すぐに探しに行くといい。」

「ありがとうございます!」

 改めて準備を整えて森に向かおうとした時、オリビアが追いついてきた。冒険者ギルドは仲間に任せて、急いでここへ来たらしい。

 追いついてきたオリビアを加え、案内のもと森へと向かう。案内の騎士によると、この黒い点の場所は、人が入れるギリギリの場所らしい。今はもう朝方。目的地に着くのは昼くらいになるらしい。

 私達は望みを掛け、黒い森の中を進む。ユーキどうか無事でいてくれ!

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