第43話おじさんのお怪我の原因と、おじさんのお仕事
夜のご飯が終わって、明日のお話です。
マシロは帰る時間少し長くなるけど、あの捕まってた場所と、その近くは通らないで帰ろうって。あの黒服の人が、絶対探してるって。ディル達もその方が良いって言ってます。もう捕まりたくないもんね。
「ところでお主ら、聞いていなかったが、なぜこのような場所に来たのだ?人間の子供が来るような所ではない。それどころか人間の来る所では無いが。」
僕達は今までの事、おじさんにお話したよ。
いきなりこの森に連れてこられたこと。悪い人達がいっぱいいたこと。意地悪されて、その人達から逃げてここまで来たこと。おじさんは黙って最後まで聞いてくれました。
「そうだったのか。近頃森で魔獣や妖精が騒いでいたから、何かあると思っていたが、怪我をしていて動けなかった。怪我も治ったから、これから調べようかと思っていたところだ。」
「おじさんは、なんで、おけがしたでしゅか?」
「………。」
おじさんが黙っちゃった。あれ、聞いちゃいけない事だったの?ごめんね。マシロがお鼻をふんふん鳴らして、匂い嗅いでます。そして。
「ほう、この匂いは…。」
おじさんじゃなくて、他のドラゴンの匂いがするって。
「ふおお、まだドラゴンいるでしゅか?どこでしゅか。」
僕は周りをキョロキョロ。まだ他のドラゴンの見れるの?見たい見たい!
「いや、匂いが残っているだけだ。なるほど、喧嘩でもしたか。くくくっ。」
何だ、もういないの…、残念。でもおじさん、そのドラゴンとケンカしちゃったんだね。それでお怪我したんだ。ドラゴンのケンカ、なんか凄そうだね。それでマシロは何で笑ってるの?
「ケンカしちゃ、ダメでしゅよ。なかなおり、しまちたか?」
「いや、なあ~…。」
仲直りしてないの。ダメだよちゃんとごめんなさいしないと。
「ユーキ、このおじさんはな相手の気持ちを考えないで、友達になろうとしたんだ。だからドラゴンは怒って、おじさんにお仕置きしたんだ。」
「この匂いは…、女の子怒らせちゃったんだ?そう言うこと、へえ~。」
ドラゴンって女の子もいるんだね。僕ドラゴンって男ばっかりだと思ってた。
それよりも、相手の気持ち考えないで、お友達になろうとしたなんて、いけないんだあ。オリバーさんが言ってもん。ダメだって。僕ちゃんと約束守ってるよ。偉いでしょう!
「ダメでしゅよ。いやがることしちゃ、いけないんでしゅ。しょれに、おんなのこいじめちゃ、めっでしゅ。ぼくのとうしゃん、いってたでしゅ。おんなのこには、やしゃしくでしゅよ。こんどあったら、ごめんなしゃいしゅるでしゅ。いいでしゅか?」
「…面目ない。」
面目ないって何?マシロが教えてくれました。大人なのに、ちゃんと相手のことを考えなくて、恥ずかしいっていう事だって。おじさんはガックリと、頭を下げちゃった。マシロは相変わらず笑ってるし、リュカは、あの男の人達バカにした時みたいな顔してる。ディルにまで、あ~あって言われてました。
「さあ、おじさんの話は終わりだ。明日は朝早くから出発だ。準備も終えたし、さあユーキ、もう寝る時間だ。」
「はーいでしゅ。」
大きな葉っぱに、木の実たくさん包んだんだ。休憩の時食べ物探さなくていいようにね。それと、虹色の実、お父さん達にお土産。
マシロベッドに寝転がって、シルフィーを抱っこして、お休みなさいします。
ふと、誰かの話し声で目が覚めました。あれ、マシロベッドがなくなってる。僕の下には、たくさんのふわふわな葉っぱがしいてありました。しょぼしょぼの目でお話がする方を見ます。少し離れたところで、みんながお話ししてました。
「こんなに騒がしく楽しかったのは久しぶりだ。最初はすまなかった。怪我でイライラしていたものでな。」
「何、主を休ませてもらった。こちらこそ礼を言う。」
「でも、女の子にちょっかい出すの、やめた方が良いよ。だからあんな怪我するんだよ。いい歳したおじさんがさ、何やってるのさ。」
「ぐっ、それは我が悪かったと反省している。久々のドラゴンだったものでついな。」
おじさんまたリュカにバカにされてる。そんなにバカにされることだったんだ。僕には分からないけど。
「だが、本当に楽しい時間だった。いつも我は1人だからな。我もこの森に住まわせて貰っている。少しでもこの森が過ごしやすい様に、この森を見守るだけの毎日だ。少しでも楽しい時間がおくれた。」
おじさんなんか寂しそう。そっか、おじさんいつもここで1人なんだ。今の僕は、たくさんお友達いて、お父さん達ががそばに居てくれるけど、前の世界の僕と一緒だね。いつも1人。1人は寂いよ。時々お母さんが笑ってくれて、僕とっても嬉しかった。きっと、おじさんも誰かそばに居て、一緒に笑えたら嬉しいよね。
「ねえおじさん。」
シルフィーがおじさんの前にちょこんと座りました。
「僕達と一緒に、ユーキと一緒に行こうよ。そしたら毎日皆んな一緒。きっと楽しいよ。僕もおじさんと一緒うれしい。」
そうだよ!それが良いよ!僕は立ち上がって、皆んなの所に行きました。
「おじしゃん!いっしょいくでしゅよ!」
「主、起きてしまったのか?ほら、もう1度寝るぞ。」
マシロが僕の襟首噛んで、寝ていた所に戻ろうとします。
「マシロおはなししましゅ。おじしゃん、いっしょにいくでしゅ!」
「マシロ、待て。」
僕を連れてこうとしたマシロを、おじさんが止めました。そしておじさんの前に座りなさいって言われました。僕はシルフィーの隣に座りました。
おじさんは静かに話します。
おじさんは伝説のドラゴン。でも僕が思っているよりも、とってもとっても珍しいドラゴンで、本当だったら僕みたいな人間は、会うことが出来ないくらい珍しいんだって。僕が会えたのはたまたま。だから忘れなさいって。
おじさんはずっと1人で生きてきて、これからも1人で生きて、自分が今いる場所を守るんだって。それで、他の魔獣とか妖精さんとか守る。皆んながこの森で暮らしていけるように。それがおじさんのお仕事。だから、一緒には行けないって。
「…もりは、おじしゃんしか、まもれないでしゅか?」
「そうだな。我しか守れんだろうな。お主達を拐ったような悪い奴らから守らねば。皆が幸せにこの森で暮らせるように。」
「おじしゃんは、だれがまもるでしゅか?だれがしあわしぇに、してくれるでしゅか?みんなしあわしぇ、おじしゃんもでしゅか?」
おじさんが目を大きく開いて黙っちゃった。だってそうでしょ。皆んなはおじさんに幸せにして貰えるけど、おじさんはいつも1人って言ったんだよ。一緒に笑ってくれる人居ないんだよ。それじゃダメだよ。皆んなの幸せの中におじさんも居ないと。
ガサッ、ゴソッ…。
突然草が揺れました。マシロが僕を隠します。
「魔獣と妖精が集まっている。」
マシロがそう言いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます