第29話男の子の憧れ
「さあ、行きましょう。」
「はいでしゅ!」
「ユーキちゃん、疲れたらちゃんと言うのよ。全部のお店見れなくても、これからいつでも遊びに来れるんだからね。」
「はーいでしゅ。」
ご飯を食べ終わって次に行ったお店は、何かごちゃごちゃと、いろんな物を売ってるお店。お庭掃除に使う道具とか、お部屋に飾る物とか、ほんとに何でも売ってる。そうだ、ここにブラシないかな。マシロの毛、綺麗にしてあげたい。ボサボサはダメ。マシロベットだもん。
僕がじっと見ているのに気付いたお母さんが、話しかけて来ました。
「何か探してるの?」
「マシロ、けがボサボサでしゅ。きれいにしてあげるでしゅ。」
「綺麗に?ああ、ブラッシング用のブラシね。マシロは綺麗な毛してるから、ブラシの先が柔らかい方がいいわね。それだと…。」
お母さんも一緒に探してくれます。そして1本のブラシを見つけました。毛の先がとても柔らかくてマシロの毛にピッタリです。
「あの、かあしゃん。」
「ん?どうしたの、これじゃダメ?」
「ぶらし、かってもいいでしゅか?」
「あら、もちろんよ。今日だって帰ったら必要みたいだしね。ディルとリュカちゃんマシロの毛、結んじゃってるんでしょう。」
良かった。買ってもらえた。考えたら僕お金なんかもってない。今まで忘れてたよ。どれくらい大きくなったら自分でお金使えるようになるかな?いつか僕が自分で買い物が出来るようになったら、お父さん達やマシロ達に、何かプレゼント買えるといいな。
「じゃあ、ブラシも鞄にしまったし、次のお店に行きましょう。」
僕の買い物とお母さんの買い物で、マシロのカバンはけっこうパンパンになってました。お母さんは、マシロが荷物持ってくれると楽で良いわ、これからもお願いねって言ってた。マシロはすごく嫌そうにしてたよ。
ちょうどお店がある道の半分くらいまで来たとき、ちょっと大きい3階くらいのお店が2つ並んで建ってました。右のお店には剣と盾の絵が書いてある看板が。左のお店は動物の顔とトンカチの絵が書いてある看板が付いてました。
「オリバーしゃん、こっちのおみしぇは、ぶきやしゃんでしゅか?あっちは…、わかりましぇん。」
「ああ、ここはお店ではないですよ。武器の看板の方が冒険者ギルド、こっちの動物とトンカチの看板の方が商業ギルドです。」
ギルド?ギルドって何だろう?分かっていない僕にオリバーさんが説明してくれました。
冒険者ギルドは、最初にあったルガーさんみたいな冒険者が、ここで魔獣を倒す依頼を受けたり、魔獣や薬になる草や花を売ったり、たくさんの冒険者が集まる所なんだって。
商業ギルドは、自分で作った新しい料理とか、道具とか、それを持って来て登録したり、それに必要な材料を売ったりする所。らしいです。
分かったような分かんないような。でも今の僕は、冒険者ギルドのことで、頭がいっぱいです。
「ふぉ、ふおおお、ルガーしゃんみたいに、ぼうけんできるとこでしゅか!カッコいいでしゅね!ぼくもぼうけんしたいでしゅ!」
「確かに冒険出来る所ですが、それはちょっと…。」
「ぼうけん、ぼうけん!」
「これは話し聞こえてないわね。でもやっぱり男の子ね。冒険に憧れるなんて。」
興奮している僕の横を、4人の男の人と女の人がギルドに入ってった。その1人の人が大きな魔獣を肩にのっけてたよ。
「ほら、今あの人が持ってた魔獣は、あの人達が倒した魔獣よ。それをここに売りに来たの。」
「おお~、おおおっ~!かあしゃん、オリバーしゃん、なかにはいるでしゅよ!みにいきましゅ!」
何故か2人が困り顔です。ギルドに入ってくれません。その時突然お父さんの声がきこえました。
「どうしたどうした、そんなに鼻息荒くして。何か面白いものでもあったか?」
「とうしゃん!」
「あらあなた。仕事は終わったの?」
お父さんがオリバーさんから僕を受け取って、抱っこしてくれました。
「休憩だ。戻ったらまたやるさ。ちゃんと許可は取ったぞ。」
「良くアシェルが許したわね。」
「まあな。ま、夜頑張るさ。それよりユーキどうした、そんなに興奮して。」
僕はお父さんにギルドの中を見てみたい事、自分んも冒険してみたい事を、説明したよ。興奮したまま説明したからちゃんと言えたか分かんないけど…。
そんな僕の話を、お父さんは黙ったまま最後まで聞いてくれました。
「そうか。ユーキは冒険がしたいんだな。」
「はいでしゅ!それにギルドのなか、楽ししょうでしゅ!」
「ユーキ、ユーキはまだ小さいから、ギルドには入れないんだよ。」
「ふえ?」
冒険者ギルドに入れるのは、大人と一緒なら8歳からで、1人で入るのは15歳からなんだって。それよりも小さい子供は、入っちゃいけないんだって。冒険者の人には、ルガーさんみたいに、優しい人もいるけれど、怖い人も、意地悪してくる人もいて、危ないらしいです。
「それになユーキ、冒険者になるには、ちゃんと勉強や訓練をしてからじゃないとダメだ。冒険は、楽しいことばかりじゃない。魔獣に襲われて怪我したり、迷子になって帰って来れなくなったり、大変な事が多いんだ。」
そうか、僕森にいた時は、マシロもお父さん達もいてくれて、守ってくれたよね。1人だったらビックエアーバードに殺されてたし、ご飯だって食べられなかった。冒険者になるには、まだまだダメだね。勉強と訓練か。お父さん教えてくれるかな?
「ぼくまだ、くんれんだめでしゅ?」
「そうだな。まだダメだな。大丈夫、大きくなったら私がいろいろ教えてやる。だから小さい今は、たくさん友達と遊んで、毎日笑ってろ。いいな!」
「はいでしゅ!おともだちと、あそぶでしゅ!」
うん、冒険も楽しみだけど、今はお友達と遊んでるほうがいいや。リク君ともお友達になれたしね。
お父さんに肩車してもらって、次のお店へ。そうだ、今度お庭冒険していいか聞かなくちゃ。お庭だったらいいよね。
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