第16話呼び方再び

 お母さんは僕を抱っこしながら、どんどんお家の中を進んで行きます。お家の中に僕が気になるものが、チラホラ見えるけど、お母さんのスピードについて行けなかったよ。

そしてあるお部屋の前に着くと、勢いよくドアを開けました。

 お部屋の中もとっても広くて、前の僕の家の部屋が何個も入っちゃうくらい。部屋の中には、大きな机と沢山のイス。10人くらい座れるんだよ。天井には、キラキラしてる電気?がついてた。きっとこのお部屋は、お父さんや、団員さん達、偉い人達がお話しする場所なんだろうな。

「ユーキちゃん、今日からご飯を食べる部屋はここよ。時間になったら、皆んな揃ってご飯食べるのよ。」

「ごはんでしゅか…。」

 皆んなのお話し合いの部屋じゃなかった。ご飯食べるとこだったよ。こんな大きいお部屋でご飯食べるの?ビックリだね。だって今までの僕のお家、ご飯のお部屋、お母さんと2人でいっぱいだったんだ。

「メイドさんがいつも案内してくれるけど、一応ここがご飯を食べる場所よ。さあ、次に行きましょう。ここはたまたま通りがかっただけだから。」

 そう言うとお母さんは、またどんどん歩き始めました。ただ案内してくれただけだったんだ。今行きたいお部屋じゃなかったみたい。そして次のお部屋に着くと、また勢いよくドアを開けたよ。お母さん、結構元気がいいね。ドアがバンっていうもん。お父さんが、

「お前はいつもいつも、もう少しドアは静かに開けないか。」

 お父さんがそう言うと、あら、これでも抑えてるのよって言ってたから、いつもそうなんだね。元気がいいお母さん僕好きだよ。


 今度のお部屋も、さっきのご飯のお部屋より小さいけど、でもやっぱり広くてカッコイイお部屋でした。

「ここは、ご飯の後にゆっくりしたり、ゆっくりしたい時に使うお部屋よ。さあ座ってお話ししましょう。」

 お母さんは僕をソファーに座らせて、自分もその隣に座りました。他の皆も、それぞれソファーに座ります。このお家に来て、最初に話しかけてきた、背の高い男の人と、女の人が1人立ったまま。何で?

「それでユーキちゃん、どうしておとうしゃんしゃまって呼んでるの?教えてくれる?」

「えと、とうしゃんはとうしゃんで、しゃまは、みんなだんちょうしゃんてよんでました。だんちょうさん、いちばんえらいひとでしゅ。えらいひとは、しゃまっていいましゅ。だからとうしゃんしゃまでしゅ。」

 僕が説明すると、お母さんが頷きました。

「ああ、そう言うことなのね。だからそんな呼び方になっちゃったのね。ユーキちゃんが言うと可愛いからいいのだけど。ユーキちゃん、私達は家族でしょう?」

「はいでしゅ!」

「家族には、様は要らないのよ。だから…。あなた、2人はお父さんだったけど、パパって呼ばれてみる?」

「パパか、呼ばれ馴れないな。ユーキ、パパって言ってみてくれ。可愛い方が良い。」

 可愛い方?可愛いって何だろう。分からないや。普通に言えば良いよね?

「パパ?」

 少しの間、お部屋の中が静かになりました。

「………。うんやめよう。何かダメだ。そのつぶらな瞳でパパなんて言われたら、俺がユーキから離れられなくなりそうだ。」

 離れるって聞いて、僕慌てちゃってよ。

「ふぁっ!はなれるって、バイバイでしゅか!」

「あ、いやいや違う違う。」

「お仕事が、出来なくなるっていうことよ。まあ、貴方の場合は、いつもですけどね。もう少しどうにかしたら?いつも怒られて、まったく…。」

 お父さん、お仕事嫌いなの。何か皆んなから同じこと言われてるけど。お仕事は大切。お母さん一生懸命お仕事してた。お昼にちょっとしか一緒に居られなかったもん。

「ま、まあ、その辺は置いといて、2人と同じお父さんで行こう。とうしゃんしゃまのしゃまを、なくして言ってみろ。とうしゃんだ。」

「とうしゃん!」

「うん、それで良い。」

 お父さんから、合格を貰いました。

「じゃあ、私はお母さんね。母さんよ。」

「かあしゃん!」

「じゃあ僕達は、お兄ちゃんだね。」

「おにいしゃん!」

「えー、俺は兄貴がいいなー。」

「ジョシュア貴方は黙りなさい。こんな可愛いユーキちゃんに、そんな呼ばせ方させないわよ。」


 皆んなの呼び方決定です!

 嬉しいな、お父さんお母さんお兄ちゃん、いっぱい家族が出来ちゃった。

 僕が嬉しくてニコニコ笑っていると、背の高い男の人が話しかけてきました。

「旦那様、私たちの紹介も。」

「ああ。ユーキ、この背が高い男は俺の執事だ。執事っていうのは、この家のことや、私の手伝いをしてくれる何でも出来る人だ。名前はアシェルだ。呼び方はアシェルで良いぞ。」

「アシェルしゃん!」

「ただのアシェルですよ。さんは要りません。呼び捨てで良いのです。私は旦那様に、そしてこのお屋敷、仕えていますからね。でもユーキ様には分かりませんよね。」

 ???。うん、全然分かりません。何言ってるのかさっぱりです。何でアシェルさんはアシェル?頭の中がぐるぐるです。どうしたらいいの?アシェルさんが困った顔で、お父さんの顔を見てます。

「分からんよな。いいかユーキ、何も考えなくていいから、私の言うとうりに。アシェルのことはアシェルだ。言ってみろ。」

「アシェル!」

「よし、それとアシェルはユーキのことを、ユーキ様って言うが気にするな。そういう決まりなんだ。」

 ………。なんで僕は様って呼ばれるの?考えても分かんない。もういいや、お父さんの言うこと聞いておこう。

 次のご挨拶してくれたのは、女の人です。ご飯になったら呼びに来てくれたり、お着替えの手伝いしてくれたり、お部屋の掃除をしたり、色々してくれる人なんだって。

「ユーキちゃん、こっちの女の人は、メイドのアメリアよ。ユーキちゃんのお手伝いをしてくれる人よ。呼び方はこうよ。アメリア。それだけよ。言ってみて。」

「アメリア!」

「アメリアもユーキ様って呼ぶけど、気にしないでね。」

 アメリアもアシェルと一緒だった。どういう人に様って言うのかな?

「ユーキ様、アメリアです。よろしくお願いしますね。ああ、こんなに可愛いお子様のお世話ができるなんて。私はなんて、幸せ者なのでしょう。奥様、選んで頂きありがとうございます。ユーキ様のすべて、私がお世話いたしますわ。さてでは、私は仕事に戻ります。」

 アメリアはニコニコわらって、可愛いは正義!って叫んで、スキップしてお部屋を出て行った。

 …何か近づいちゃいけない気がする。でも、初めて会った人だし、どうしよう。お父さんの家族だから、大丈夫だよね?

 お父さんは、今自己紹介したお母さん、お兄ちゃん達、アシェルとアメリアだけ、名前を覚えなさいって。他の人は、だんだんと覚えれば良いって。


 疲れてるだろうから、今日は夜ご飯を食べて、少しゆっくりしたら、すぐ寝るように言われた。マシロの紹介は明日します。マシロのこと、ゆっくり説明しないと、皆んなびっくりしちゃうんだって。

 みんなでお話しているとアメリアが呼びに来てくれて、みんなでご飯を食べるお部屋に移動です。

 ご飯は皆んなとは、ちょっと違うメニューです。僕のご飯は、やっぱり食べやすいスープや、とっても柔らかいお肉を少しずつ。すっごく美味しくて、すぐに全部食べちゃった。デザートにケーキも出たんだ。

 でもね、ご飯よりも楽しかったこと。皆んなで楽しくおしゃべりしながら、ご飯を食べれたこと。これからも今日みたいな日がたくさんあるといいな。

 ご飯の後、さっきの部屋でゆっくりしていたら、アメリアが、僕を呼びに来ました。

「ユーキ様、そろそろお休みの準備を致しましょうね。お部屋にご案内しますよ。」

「お部屋?」

「ユーキちゃん、貴方だけのお部屋よ。さあ、行きましょう。」

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