第15話みんな家族

 だんだんとお店の数が減ってきて、いつの間にか、お家ばかりの所までやって来ました。街の中心にほとんどのお店があるから、その他はお家ばっかりなんなんだって。

 そのお家も減ってきて、何も無くなった所にありました。大きな大きなお家が。

「ふわあ、おおきいでしゅ。だれのおうちでしゅか?」

 ここに住んでいるのは、どんな人なのかな?きっと街の中で、1番大きくてカッコイイお家だよ。

 「ここが私の屋敷だよ。ユーキがこれから暮らすお家だ。」

「ふぁっ!おうちここでしゅか!」

 びっくりです。カッコよくて、とっても大きいこのお家が、これから僕が暮らすお家でした。あんまりびっくりして、ぽけっとしたまま、門の前まで行っちゃいました。

 門の前まで行くと、門の前に立っていた2人の騎士さんが、敬礼をして門を開けてくれました。ギィーって音がして門が開きます。お父さんが中に入ります。

「では団長、我々はここで。」

「ああ、ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ。」

 お父さん以外、門の中に入ってきません。どしたの?

「どこいくでしゅか?」

「みんな自分の家に帰るんだ。仕事はおわりだからな。」

 そっか、みんな自分の家に帰るんだ…、今まで一緒だったから、少し寂しいな…。

「ユーキ君、私達はいつでも会えますからね。そんな顔しないで下さい。家だって近いですし、街を案内するって約束したでしょう。」

 そうだった、案内してくれるって約束だった、あんまり色々楽しいことあって、忘れるとこだった。イケナイいけない。じゃあ、直ぐ会えるんだね。良かったあ。

「はいです!またあちたでしゅ!」

「はは、明日か。」

「明日ですか…。ふふふ。」

「またね。ユーキ君。」

「じゃあな!」


4人にバイバイして、僕達は玄関に向かいます。玄関に着くまで、お馬さんでちょっと歩きます。

 お庭がとっても広かったです。お父さんに、お庭で遊んでもいいか聞いたら、お庭はお家の周り全部なんだって。だから誰かと一緒に遊ぶなら良いぞって。僕1人だと、迷子になっちゃうからだって。そんなに広いんだ。お家で迷子…。凄いね。

 玄関が見えて来て、そこにたくさんの人が、立っているのが見えました。皆んな綺麗に並んでます。何してるの?

「みんな、私たちの出迎えだ。みんなユーキの家族だぞ。」

「ふわわ、かじょく、ぼくのかじょくでしゅ。」

 皆んな家族だって。凄い凄い!あんなにたくさん家族になれるなんて!

 玄関の前に着いて、いよいよみんなとご挨拶。ドキドキ、ドキドキ。 

「お帰りなさいませ旦那様。」

「ああ。」

 背の高い男の人が、最初に声を掛けて来ました。スッと別の男の人が何も言わずに、お馬さんの手綱をもって、それと同時にお父さんがお馬さんから降りて、次に僕を抱き上げて、降ろしてくれました。お馬さんはそのまま、男の人がどっかに連れてっちゃった。自分の寝る小屋に帰るんだって。お馬さん、お疲れ様でした。僕を乗せてくれてありがとう。後でお父さんに頼んで、おやつ持ってくね。


 僕が地面に降りると女の人と、前の世界で高校生くらいの男の人が2人、前に出てきたよ。

「貴方、早くその可愛い子を紹介して下さい。楽しみにしていたのよ。」

「僕達だって弟が出来るって聞いて、嬉しかったんだから。」

「本当に小さいんだな。」

「分かった、分かった、お前たちどれだけ楽しみにしてたんだ。」

 お父さんが僕を、自分の一歩前に出して、自己紹介を始めた。

「名前はユーキ、森の中で見つけた。とってもしっかりした子だ。でもまだとても小さい。みんなで守って行こうと思っている。よろしく頼む。ユーキ、挨拶できるか?」

 ここはしっかり挨拶しなくちゃ、これから家族になるんだもんね。マシロを隣に降ろして、きおつけの姿勢、ピシッ!

「勇輝でしゅ。えと、かじょくになりましゅ。よろしくおねがいでしゅ。」

 これで大丈夫かなぁ。もっと何か言ったほうがいい? お父さんを見ると、大きく頷いて、にっこり笑ってくれました。自己紹介は成功したみたいです。ふう…。良かった…。

「あらあら、本当にしっかりした子なのね。」

「すごいね、ちゃんと自己紹介出来てる。」

「ちゃんと、きおつけまでしてるし。」

「よし、よく出来たな。今度はこちらの番だ。こっちが妻のオリビア、隣がアンソニー、でまたその隣がジョシュアだ。」

 最初にご挨拶してくれたのは、お母さんでした。お母さんは、髪が長くて、腰のところくらいまであります。とってもサラサラ。風で揺れると、ちょっとキラキラしてるみたい。金色みたいな髪の色だからかな?それにずっとにっこり笑ってて、すごく綺麗なお母さんです。

「ユーキちゃん、初めましてオリビアよ。貴方のお母さんになります。これから宜しくね。」

 お母さんの次は2人のお兄ちゃん。

「僕はアンソニー、18歳だよ。宜しくね。僕の部屋には、たくさん本があるから、読みたかったらどんどん持っていってね。あ、でも、ユーキが読める本ないか。」

「俺はジョシュア17歳、剣が得意だ。父さんと同じ騎士を目指してる。剣とか弓とか、訓練したかったら俺と一緒にやろうな。」

「いやいや、剣とかまだ早いだろう。こんなに小さいのに、歩くだけでも大変だろう。」

「そうか?」

 アンソニーお兄ちゃんは、本が好きなんだね。でもお兄ちゃんが言った通り、お兄ちゃんのお部屋にある本、難しい本ばっかりな気がする。

 ジョシュアお兄ちゃんは剣が得意。そうか、お父さんみたいに、カッコイイ騎士さんになるんだね。

「2人とも何ですか、ユーキちゃんは私と一緒に、お庭でお話するのよ。」

「ダメだよ母さん、独り占めさせないからね。」

「そうだ、俺と剣の練習するんだから。」

「だからダメだって。」

 お話、止まらなくなっちゃった。僕がポカンと皆んなを見ていると、お父さんが僕の頭を撫でてきて、優しく微笑んでくれました。

「これからみんなで、楽しく暮らそうな。」

「はいでしゅ!とうしゃんしゃま!」

 そう答えた時でした。お母さんがガバッと、僕を抱き上げたと思ったら、目の前にお母さんの顔。横にはお兄ちゃん達も、物凄く近くで僕を見てる、…何?どうしたの。

「ちょっと待って、今の何?ユーキちゃん、何て言ったの!」

 ふええ、お母さんちょっと怖い、本当にどうしたの?

「もう1度、もう1度言ってみて!」

 え?何を?…お父さんのこと?やっぱり呼び方おかしいかな?

「えっと、とうしゃんしゃま…?」

 みんなが動かなくなっちゃった。ほんとに皆んな、よく固まるよね。何なんだろう?

 ふと何となくお母さん達の後ろを見ると、後ろで立っていた女の人達が、何人か座り込んでる。ふわ!今度はどうしたの!

 慌てる僕は、お父さんを探して、キョロキョロ。助けてお父さん!みんな変だよ。

 「あー、皆んなやられたな。おいオリビア!」

 慌てる僕とは反対に、お父さんはのんびりしてます。お父さんの声に、お母さんが復活しました。

「ハッ、あなた。あなたが教えたの、そう呼ぶように。」

「いいや、ユーキが自分から言ってきたんだ。」

「そう、そうなのね。ユーキちゃん早速私とお話ししましょう!さあ!」

 お母さんにしっかり抱っこされ、そのままお家の中に入って行きます。

 ま、まだマシロ紹介してないよ、ちょっと待って!ハッ、マシロは?マシロどこ!さっき僕が下ろした場所に、マシロはお母さん達の勢いにビックリしたのか、ボケッとしてた。

「マシロ!ちゅいてきて!」

「!!」

 マシロが慌ててついて来て、その後をお父さんが、やれやれって言って、さらについて来ます。もう皆んな、バタバタです。

 よく分からないまま、僕はお母さんに連れて行かれちゃった。座り込んでた女の人達も、いつの間にか復活して、お家に入ると、バッてもの凄いスピードで、何処かに行っちゃった。ほんと皆、どうしたの?

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