第14話いよいよ街の中へ

 まだかな、まだかな。ワクワク、ソワソワが止まりません。そんな僕を、副団長さんが笑ってます。それで、もう少しで来てくれるから待っててって。僕が誰が来るのか、聞こうとしたら、

 ~おーい!~

 誰かが呼んでる声が聞こえました。声が聞こえた方を見たら、お馬さんが走って来て、そのお馬さんには、マシューさんが乗ってました。

「マシューしゃん!」

「ああ、来たみたいですね。待ち合わせはマシューですよ。」

 待ち合わせの相手は、マシューさんでした。そう言えば、先に街へ行ってるって言ってたもんね。あの時はお見送り出来なくて、ちょっと寂しかったけど、本当にすぐに会えた、よかったあ。

「悪い待たせたな。おうユーキもちゃんと来たな。」

「はいでしゅ!」

 僕は手を挙げて、元気よくお返事しました。お父さんが話しかけて、間にあったかって聞きます。

「ああ勿論。何しろ俺が着いてから、あの人すぐに動き出して、いろんなやつに指示出して、物凄い勢いで書類作成してたからな。それからあの人からの伝言。覚えていなさい、たくさん仕事を用意しておきます。部屋から出られると思わないように、だってさ。」

「あ、ああ…。」

「ははは、大変だな団長さん」

「団長、諦めて仕事してください。サボらずきちんと仕事すればすぐ終わりますよ。で、マシュー書類は?」

「おお、これだ。」

 何だか少し顔色の悪いお父さんに、マシューさんが1枚の厚手の紙を渡してきて、それをお父さんが確認します。何が書いてあるんだろう。お父さんのお顔、キリッてしてます。いつものニコニコお顔じゃありません。カッコいいお顔。僕お父さんのこのお顔も好きかも。

「よし、完璧だ。これで安心だ。」

 そう言ったお父さんのお顔は、いつものお顔に戻っちゃった。もう少し見てたかったな。それに安心って?何が書いてあるか気になって、聞いてみました。

「とうしゃんしゃま、それ、なんでしゅか?」

「何その呼び方!可愛い!ユーキお前ほんと可愛いな。」

「そうだろう、そうだろう。うちのユーキは可愛いんだ。」

 お父さんがお胸を張ってそう言ったら、それを聞いたマシューさん。もう親バカになったのか?って言って、お父さんをジーって見つめてました。


「ユーキ、これは、私とユーキが家族だって、書いてあるんだ。これがあれば、もし誰かが私たちに文句を言ってきても、家族のままでいられる、大切なものだよ。」

「ふわわ、みしぇてくだしゃい!」

 紙を受け取り、内容を確認!…出来なかったよ。書いてある文字が読めなかったんだ。

 言葉は分かるのに、神様、文字はダメななの?

 読めない僕に、書いてある事教えてくれました。僕はお父さんの家族で、これから一緒に暮らします。って書いてあるんだって。そんな大切な事が書いてある紙だったんだ。マシューさん。持って来てくれてありがとう!

 ふへへ、うれしい!僕はもうニコニコです。お父さんにも、嬉しい?って聞いたら、

「ああ、勿論。とってもうれしいぞ。」

 お父さんの顔もニコニコで、ぐしゃぐしゃと、頭を力強く頭をなでてくれます。それが嬉しくて、もっと笑っちゃいます。

「えへへ。えへへへ。」

「よし!さあ、街の中にはいるぞ!」


 いよいよ街の中に入ります。ドキドキ、ドキドキ、今度こそ街に入れるんだ。

 もう、僕のテンションは最高潮、今直ぐにでも走り出したい気分…。まあ、小さいせいですぐに転んで、お父さんに抱っこされるだろうけど…。

 でも、そんな気分なんだ!

 入り口に近付くと、そこに立っていた騎士さんが近づいてきて、ぴっと、手を頭に。オリバーさんが教えてくれました。敬礼って言うんだって。騎士さん達の挨拶です。僕も騎士さんに挨拶です。ぴっ!!騎士さんが笑いながら、僕にも敬礼してくれました。

 皆んなが、お外の様子や、街の様子を話した後に、騎士さんが僕の方を見てきました。

「それでウイリアム団長、そちらの子供は。」

 僕のことを聞いて来ました。ちょっとドキってしました。家族で良いんだよね。大丈夫だよね。僕、街に入っても、皆んなとバイバイじゃないよね。

「ああ、私の新しい家族でね、今日から一緒に暮らすんだ。これがその書類だ。」

「拝見させて頂きます…。」

 騎士さんが書類をチェックしてます。もうこの紙必要なんだ。騎士さんがじっくり確認してます。何か紙見るの長くない?お父さんの確認、もっと早かったよ。僕はちょっとだけドキドキです。

「はい、確認致しました。」

 やっと確認が終わって、騎士さんが書類をお父さんに返して、にこにこお顔で僕に話しかけてきました。

「名前は?」

「勇輝でしゅ。よろしくでしゅ。とうしゃんしゃまと、かろくでしゅ!」

 騎士さんが固まちゃった。どうしたの?

「あー、中に入ってもいいか?」

 お父さんの声に、はっとなった騎士さんが慌てて返事してきました。

「ど、どうぞお入り下さい。ユーキ君、カージナルの街へようこそ。」

 どうしてたまに、みんな固まるんだろう?僕、変なこと言ってないよね?

 騎士さんがまた敬礼したから、僕ももう1度、ぴっ!!騎士さんにバイバイして、門を潜り、ついに僕はカージナルの街に入りました。

 

 カージナルは、僕の前居たところと全然違う街でした。

 まず建物は、道の両側に、小さな食べ物屋さんや、果物屋さん、野菜屋さんに、お肉屋さん、剣や盾を売っていたり、本当に色々なお店が並んでで、お店の人たちが大きな声で、お客さんに声をかけてた。

 その後ろには、木で出来てる、マンションみたいな建物が建ってて、干してあった洗濯物を取り込んだり、窓から隣のお家の人と、お話をしてたり、ただ、窓からぼうっと外をみてる人、いろんな人がいました。

「ここはな、この街で1番の、お店が沢山ある通りなんだ。大体の物はここで買うことができるぞ。後ろの建物は、いろんな家族が暮らしている建物なんだが、この奥に行けば、一軒家もあるぞ。一軒家っていうのは、1つの家族が1つの家に住んでるっていう家のことだ。」

 お父さんが詳しく説明してくれます。それとね、壁の外にたくさんの人が居たけど、あの人達が街に入らなくても、中はたくさんの人だらけ、勿論魔獣も。

 僕が1番びっくりしたのは、ウサギさん耳をしている人、猫さん耳をしている人、そう、動物の耳の人達が居たんだ。僕びっくりしたのと、よく分かんないけど、嬉しくなっちゃって、言葉が出なくなった。

「ふおお…、ふおおお!!」

 あんまり興奮しちゃって、体が前のめりに。その時、グエって声が、お腹の方から聞こえてきました。

「ぐっ…、主、苦しい…。」

 マシロ潰しちゃった。そうだ、今のマシロ小さくて、僕が抱っこしてたんだった。

「ご、ごめんでしゅマシロ。だいじょぶでしゅか?」

 慌てて体を戻します。マシロごめんね。

「ユーキ、初めてで興奮するのは分かるが、少し落ち着け。」

「…はいでしゅ。ごめんしゃい…。」

 まあ、子供なんてこんなもんだってリアムさんが。お父さんもクスクス笑ってます。僕の頭を撫でながら、

「これからここで生活するんだ。私や私の家族が一緒なら、いつでも街の中で遊ばせてやる。」

 ここで遊べるんだ。楽しみ!!あっ、そう言えば…。


 お父さんの家族…。

 そうだ、僕ただ嬉しがってたけど、お父さんの家族のこと、聞くの忘れてた。僕、お父さんは家族になってくれるって、言って貰ったけど、他の家族の人は、良かったのかな。僕、いらないって言われないかな…。

「あの、とうしゃんしゃま?」

「どうした?」

「とうしゃんしゃまのかじょく、ぼくいいでしゅか?いっしょくりゃしゅ。」

「ああ、私の家族のこと気にしてるのか、それなら大丈夫だ。」

 何で大丈夫?だって初めて会うのに、それにお家に行くこと、まだお話してないでしょう。そしたらね、さっきマシューが持ってきてくれた家族の書類意外にもう1つ、お手紙があったんだって。それはお父さんの家族からのお手紙です。マシューさんが先に街に行った時、お父さんが家族に僕の事お手紙で、伝えておいてくれたんだって。

「ぼく、だいじょぶ?」

「ああ。ユーキも、私の家族に会うの楽しみにしていろ。」

「はいでしゅ!」

 綺麗な夕日のなか、僕達はこれから僕が暮らす、お父さんのお家に進んで行きます。

 お父さんと、お父さんの家族の人達と、これから家族になるんだ。それにマシロも一緒。嬉しいなあ、嬉しいなあ。

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