第17話僕のお部屋と、そして…。

「ぼくのおへや、あるでしゅか?」

「ええ、ちゃんと用意してあるわよ。」

「お前、部屋がなかったらどこで寝るつもりだったんだ。」

 ああ、そっか。今までお外で寝てたから忘れてた。お母さんが僕を抱っこして移動です。僕の部屋は3階にあって、階段に1番近いお部屋でした。そしてさっきと同じで、お母さんが元気よく、バンッ!って、ドアをあけました。

「ここがユーキちゃんのお部屋よ。どう、とっても広くてカッコイイでしょう。男の子だからカッコイイお部屋にしたのだけど、ユーキちゃんの場合は、可愛い方がよかったかしら?」

「ふわわ、ここぼくのおへやでしゅか!しゅごいでしゅ!」

 お部屋の中はとっても広くてびっくり。僕には大きすぎるベッドが、お部屋の1番奥にあって、反対側にはカッコいい飾りがついた机と椅子。大きな窓からは、お外が良く見えます。

 あんまりカッコいいお部屋だったから、前のお母さんに言われたこと忘れるとこだったよ。前のお母さん、僕のお部屋はベットの上だけだって言ってた。ベッドから下りるとすごく怒るんだ。悪いことだって。

「とうしゃん?」

「ん?どうした?」

「ほんとにここ、ぼくのおへやでしゅか?まえいたところ、ぼくのおへやは、ベットのうえだけでしゅ。あのベットのうえが、ぼくのおへやでしゅか?」

「ユーキちゃん…。」

 何でだろう、皆んな何も言わなくてなっちゃった。なんか寂しそうなお顔してるし。

 ちょっとして、お父さんが頭を撫でてくれて、その時には、いつもの笑顔に戻ってました。

「ユーキ、ここは全部ユーキが使っていいんだ。この部屋全部がユーキの部屋なんだぞ。」

「いいでしゅか?だれもおこりましぇんか?」

「もちろん、だれもユーキを怒ったりしない。ここの物は、全部ユーキのだ。」

 そっか。怒られないのか。本当にここ全部、僕のお部屋なんだ。そっか、そっか…。

「とうしゃん、ありがとでしゅ。とってもうれしいでしゅ!」

「おお、好きに使え!」


 ガシガシッと、勢い良く頭を撫でられました。嬉しいなあ。ここが全部僕の部屋なんて。こんなに広かったらなんでも出来るね。マシロといっぱい遊ぼうっと。


「さあ、ユーキちゃん、今日はもうお着替えして寝ましょうね。お洋服はこのクローゼット、そうね、お洋服を入れる箱のことよ。このクローゼットの中から、私かアメリアが選ぶけどいいかしら。自分で選んでもいいわよ。でも最初はお母さんに選ばせてね。お母さん選ぶの、楽しみにしてたのよ。」

 そう言うとお母さんは、クローゼットから寝る為のお洋服を、選んでくれました。まっ白い洋服で、上のお洋服と下のズボンがくっ付いてるんだ。お母さんが前のボタンを外してくれて、僕が腕と足を入れてると、ボタンを止めてくれたよ。

「あら、やっぱり似合うわね。とっても可愛いわ。さあ、歯磨きはこっちよ。」

 1度お部屋を出て、歯磨きをする場所へ。歯磨きをして、トイレに行って。トイレね、前の世界とちょっと違ってた。先にボタン押して、水を出したままにしてトイレして、トイレが終わったら、もう1回ボタン押して、水をとめて終わりです。水出しっぱなし。勿体無い。

 お父さんにそう言ったら、魔力石があるから、いくら使っても大丈夫なんだって。お外の入れ物に、たくさんお水貯めてあるんだって。じゃあ、魔力石無くなったら大変だね。

 トイレも終わって、さあ、寝る準備は完璧です。

 ベッドに入る僕。皆んなが順番に、お休みなさいをしてくれました。

 お父さんが魔力石の光を消して、皆んなが部屋を出て行って、お部屋の中は僕とマシロだけになりました。マシロはベッドの横で、マシロ専用の小さいクッションに寝てます。


 こんなに嬉しいこと、楽しいことがあって良いのかなあ。もしかしたら、夢なのかも。次に目が覚めても、このままがいいけど…。大丈夫だよね。皆んな居なくならないよね?

 そうだ!言葉の練習しなきゃ。さっきちゃんと家族って言えたよね。きっと練習すればもっと上手く話せるようになるよ。文字も覚えよう。誰か教えてくれるかな?

 お外でたまに、鳥が鳴いている声が聞こえる以外、シーンとしているお部屋の中、なんかちょっと寂しくなっちゃった。

「ねえ、マシロ、おきてりゅ?」

「どうした主。」

「いちゅもみたいに、いっしょねてもいい?」

「もちろんだ。」

 お月様の光ので、マシロが首輪を外したのが見えた。ぼんっといつものマシロに戻って、お座りをしてくれて、僕はマシロのしっぽに包まって、そのまま夢の世界へ。




 痛いよ。足、痛い…。

 僕は大きな木になんとか上って、怪我した足をペロペロ舐めた。あの人間たちは何て言ってた?

「絶対に捕まえろ!一生遊んで暮らせるんだぞ!」

「怪我させても死んでてもいい。死体だって売れるんだ。逃すな追え!」

「まさかこんな所に、伝説の魔獣が居るなんて!」

 僕のこと怪我させて、どうするつもりだったの?僕何もしてないよ。痛いことしないで…。ふと、街の方を見る。

 あれ、あっちの方に暖かい光が見えるよ。太陽みたいに、ぽかぽかの暖かい光。何だろう、僕あの光大好き。あの光の所に行きたいなあ。

 行っても大丈夫かな?人間に追い掛けられたりしないかな?もう追い掛けられるのはやだなあ。でも…。

 あの光の所に行ったら、僕、もう逃げなくていい気がする。行ってみようかな。


 僕は怪我した足を引きずりながら、暗闇にまぎれて光に向かって歩き出した。

 何があるか分からない。もしかしたら、今度こそ人間に殺されるかもしれない。それでもあの光の所へ行きたい!

 

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