第12話何て呼ぼう。親父…なんか違う
朝目を覚ますと、昨日と同じで、マシロの毛に包まれて眠ってました。
うん、マシロの毛はふわふわで、僕の前のお布団と、全然違います。いつ迄でも眠っていられるよ。お休みなさい…、すう、すう…。
相変わらず寝ぼけている僕を、マシロは昨日と同じように、襟首をくわえて僕をぶらぶらさせながら、団長さんの所まで運んでくれる。
「おはようユーキ。今日も寝ぼけてるな。」
団長さんのお膝の上に下ります。
ん?そういえば昨日、大事な話をしたような。何だっけ?確かマシロと遊んだ後に、団長さんがお話があるって言って…。………!」
僕は団長さんの方へ勢いよく振り返り、じっと団長さんを見つめた。
「どうしたんだ?」
「だんちょうしゃん、きのう、かじょくなりまちたか?ゆめでしゅか?」
「はは、寝ぼけて分からなくなったか。大丈夫、夢じゃない。私達は家族だ。ユーキは私の子供になったんだ。」
その言葉に、また僕は凄く嬉しくなって、ギュッと団長さんにしがみ付きます。夢じゃなかった!良かった。僕はほっとしてギュッてしたあと、団長さんのお顔見ました。団長さんもにこにこ笑ってます。
そう言えば、家族になったから、団長さんって呼ぶのはおかしいよね。なんて呼ぼう。パパ?お父さん?隣の家の子が言ってた親父?…親父、は、なんか違う。
「今度は何考えてるんだ?変な顔して。」
「あの…、えっと…。」
「ん?」
僕はちょっとドキドキしながら、呼んでみました。
「とうしゃん?しゃま?」
団長さんじゃなくて、お父さんの動きが止まった。
「とうしゃんしゃま、だめでしゅか…?」
僕には、お父さん居なかったから、なんて呼んだら良いか分からなくて、それに団長さんって、確か偉い人だと思ったから、様を付けたんだけど。やっぱりおかしかったかな?
反応がないから、どうしようかと思ってたら、いきなりガバッと、お父さんが僕を抱きしめて来た。そして、
「可愛い!もう1度言ってくれ!」
お父さんが、凄い勢い良く、そう言って来ました。
「とうしゃんしゃま。」
「もう1度。」
「とうしゃんしゃま。」
「もう1…。」
「いい加減にして下さい!まったく、すごく可愛いのは分かりますが、少し落ち着いて。これからいくらでも、呼んでもらえるんですから。まずはご飯です。もうすぐ出発ですよ。ユーキ君は昨日、夕飯食べていないんですから。さあ、腕を離してください。ユーキ君こっちへ。」
副団長さんに止められたけど、なかなか抱っこ止めてくれません。それに、抱っこしてくれてる、いつもはとっても優しい腕が、ちょっとギュウギュウで痛いです。それで副団長さんに、また怒られてました。
「うるさいですよ。家族になって初めての騎乗なのに、また1人で乗りたいんですか?」
「申し訳ない。」
さっと、お父さんが離してくれて、副団長さんに僕を渡しました。今日は僕、お父さんと一緒に、お馬さんに乗りたいから、副団長さんの言う事、ちゃんと聞いてね。
お父さん、また後でね。
それから副団長さんさんは、僕がご飯を食べるのを手伝ってくれました。最初の日より、少しは上手く、食べられるようになったかな?
ご飯を食べて、ノアさんのお片付け見てて、気付きました。あれ?マシューさんがいない?
「ましゅーしゃん、いないでしゅ。どこでしゅか?ごはん、おわりましたか?」
「マシューはちょっと用事があって、先に街へ行ったんですよ。」
「また、あえましゅか?」
ましゅーさん、先に行っちゃったんだ、お見送り出来なかった、…残念。
「もちろん、街に行ったらすぐ会えますよ。マシューは、ユーキ君が街で暮らせるように、準備をしに行って、くれてるんですよ。」
そっか。きっと準備たいへんなんだろうなあ。前にお引越しした時、とっても大変だったんだ。お片付け、なかなか終わらなかった。マシューさん、準備しに行ってくれてるんだよね。またすぐ会えるって言ってたから、その時にありがとうしよう。
「さあ、ご飯の片付けも終わりましたし、私達も出発しましょうか。…あまり遅いと要らぬ詮索を、受けるかもしれませんからね。」
「しぇんしゃく?しぇんしゃく、なんでしゅか?」
「あ、いえ、何でもありません。ほら団長、ユーキ君頼みましたよ。」
詮索って、何だろうね?まあいいか。
「さあユーキ、出発だ。このまま順調に行けば、街に着くのは夕方頃だな。」
やっとお父さんと一緒に、馬に乗って移動です。昨日は、マシロとお父さんのケンカで、一緒に乗れなかったもんね。嬉しいなあ。
「ここから少し行ったら、森を抜けて、一般の道に出るからな。そこから街までは、一本道だ。」
「しゅっぱーちゅつ!」
僕は片手を上げて、掛け声をかけたのに、
「待ってくれ、ちょっと聞きたいんだが。」
と、マシロが皆んなを止めました。
何なのマシロ。僕せっかく手まで上げて、出発って言ったのに。何でいつも、すぐに出発出来ないの?僕はちょっとプンプンです。お父さんも、まったく何なんだって、ブツブツ言ってます。
「いや、人間の間では主のためにも、あまり目立たぬ方がいいのだろう。」
「ああ、まあな。しかしマシロはその大きさと存在感で、すぐにフェンリルだと気付かれるからな、目立たないのが理想だが、仕方ないだろう。それがどうしたんだ?」
そうか、マシロふわふわ、モコモコで、とってもカッコイイもんね。それにワンちゃんだけど、少し大きいし。皆んなびっくりしちゃうかな。
「こんなのはどうかと思ってな。時間はかからない。一瞬だ。」
マシロがそう言って、宙返りした瞬間、そこにはとっても小さくなって、子犬みたいになった、マシロが居ました。
「ふわわわ、マシロちいしゃい!かわいいでしゅ!!」
さっきまでプンプン怒ってた僕は、マシロの可愛い姿を見て、すぐに楽しい気持ちになりました。
小さくなったマシロの前には、さっきまでマシロが腕に着けていた、魔獣の首輪じゃなくて腕輪が。小さくなったせいで、腕から落ちちゃったみたいです。マシロはそれを咥えると、ヒョイッと軽く飛ばして、頭を入れました。首輪はゆるゆるで、スルッと首に。
でもね、今まで大きいマシロが、腕に付けてたんだよ。首輪って言うより、大き過ぎるネックレスになっちゃった。マシロは全然、気にしてないみたい。お父さんに支えられて乗っている、僕の前に飛び乗って来ました。そんなマシロをぎゅっと、抱きしめます。とっても可愛いぬいぐるみです。
「これならば、目立たぬのではないか?」
「そんなことも出来たのか。何でもありだな。」
「でも、これならば、確かに目立ちませんね。他から見たら、ただの子犬でしょう。」
「ああ、そうだな。これでマシロの問題は一応解決か。当分の間は、誤魔化せるな。いや、よかったよかった。」
僕がマシロを支え?僕をお父さんが支え、さあ、今度こそ街へ出発!
今度こそ出発だよね…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます