第10話危険な遊びと、大事な話
「マシロ、なにしてあしょぶ?」
「主は、何かしたい事はあるのか?」
ご飯が出来るまで、自由時間です。うーん、何がいいかな。前の世界では、何してたっけ?いつも公園に行ってて、いろいろな遊ぶ物があったけど、誰かが必ず遊んでて、なかなか遊べなかったな。お砂遊び、鉄棒、ジャングルジム、シーソー、ブランコ…、…、…。ブランコ!!
僕はある事を思いついて、マシロに相談した。
「きゃっきゃっ!」
「お、何だ、楽しそうな声が聞こえるな…、て、何してるんだ!!」ノア!どう言う事だ、何で止めない!」
「もちろん止めましたよ。でもね。僕がマシロを止められると思いますか?」
団長さんが、大きな声で叫んでます。どうしたの?それに止めるって何を?今ね僕、とっても楽しいお遊び考えたから、それで遊んでるんだよ。このお遊びはマシロが居ないと出来ないんだ。マシロも良いよって言ってくれたし。楽しいなあ。
「よし!もう1回だ。ほら行くぞ!」
「きゃー、たかーい!」
僕が考えたお遊び、それはスペシャルブランコ!
ふへへへ。あのね、これは今日の朝、マシロが僕の襟首くわえて、ブラブラさせたでしょう。それで思いついたんだ。
まず僕が、マシロのしっぽを掴みます。
次に、マシロがそのしっぽを振り上げて、振り上げたと同時に手を離します。
僕は上に放り出されて、落ちて来るところを、マシロが上手に咥えて、そのままぶら下がります。ぶらんぶらん揺れて、揺れが止まったら終わりです。
ね、スペシャルブランコでしょう?
「しゅごいでしょう!たのちしょうでしょ!」
ルンルン気分で団長さんにそう言ったら、団長さんが怒りました。何で?
「楽しそうじゃないだろ!まったくなんて遊びを、思いつくんだ。危ないだろうが。」
「あぶなくないでしゅ、マシロ、いっかいも、おとしてましぇん。」
僕はお胸を張ってえっへんです。マシロは絶対失敗しないもんね。もう何回もやってるけど、大丈夫だもん。マシロもフンって、お鼻鳴らしました。
「これぐらいも出来ないようでは、死の森で生きて行けんは。我にかかればこんな事、朝飯前だ。」
「落としたら駄目だし、それにマシロお前、落として怪我でもさせたら、どうするつもりだったんだ。自分の主人に、積極的に危ないことさせてどうする。ユーキ、この遊びは禁止だ!もうやるなよ。」
「ぶうー…。」
何で?マシロは大丈夫だよ。僕のこと、落としたりしないよ。僕はほっぺを膨らませて、ぶーぶーです。
「うっ、そんな可愛い顔しても、駄目なものは駄目だ!いいな。」
せっかく楽しい遊び考えたのに…、禁止になっちゃった。僕はほっぺ膨らませたまま、団長さんに抱っこされちゃいました。遊びは終わりだって。
「ところでマシロお前、死の森に居たのか?どの位居たか知らないが、だから上位種になれたのか?」
「まあ、そんなところだ。細かい事は気にするな。」
「ああ、そうするよ。いちいち気にしてたら大変だからな。」
死の森ってどんな所かな?なんだか怖そうな森だね。僕はそんな怖そうな森に行きたくないなあ。楽しい森とかないのかな。とっても綺麗な森とか。そうだマシロみたいにもふもふの魔獣がたくさんいる森なんてあったらいいなあ。
団長さんは僕を副団長さんの隣に下ろして、それから他の3人を呼びました。何かお話あるみたい。3人が団長さんと、テントに入って行っちゃっいました。僕はスペシャルブランコ、ダメって言われて、まだ少しプンプンです。
プンプンしてる僕に、副団長さんが面白いもの見せてくれるって。
副団長さんは、袋のから魔力石を何個か出しました。えっと水と火と光の魔力石です。そして、その3つの石が一緒に、ポワアって光りました。そしたら、水と火と光が、くるくる絡まって、最後にボールみたいに丸くなりました。3つとも全然混ざってないんだよ。凄い凄い、そんな事も出来るんだね!面白いもの見せてもらえて、プンプンの気持ちなんて、全然無くなっちゃいました。
少したって、4人がテントから出て来ました。副団長さんが、僕の頭を撫でながら、優しく笑ってくれます。
「ユーキ君、団長が、お話があるそうですよ。」
「うにゅ?」
団長さんは僕の前まで来て座ると、僕のことを膝に抱っこしました。
「ユーキ、大切な話があるんだ。よく聞くんだぞ。ユーキだから話すんだ。いいか?」
どうしたんだろう。いつもと違う、団長さん雰囲気に、僕は黙ったまま頷きました。僕、何かいけないことしたのかな?団長さんは静かに、とっても静かにお話始めたよ。
「ユーキは今、私達騎士団が保護してる。それは分かってるな。」
「はいでしゅ。」
「保護したからには、必ず街まで送り届ける。それが私達の仕事だ。これから話すのは、街に行ってからの事だ。ユーキは今、家族が誰もいなくて1人だろう。」
「マシロいましゅよ?」
「違うぞ。私達、人の家族のことだ。マシロは魔獣だろう?」
僕はコクリと頷いてマシロのこと見ました。マシロも静かにお座りして団長さんのお話聞いてます。
「そういう子供はまず、教会に預けられる、そういう決まりがあるんだ。教会っていうのは、ユーキと同じような子供がいて、みんな一緒に暮らす場所だ。そしてそこで、新しい家族を見つける。それが今のユーキの状態なんだ。街についたら係の人が、その教会まで連れて行ってくれる。」
僕は慌てました。だってマシロは、団長さん達が家族になってくれるって。皆んな優しくて、少ししか一緒に居ないのに、僕ね、もう皆んなの事大好きだよ。それなのに、家族になれないの?バイバイなの?
「まちにちゅいたら、しゃよならでしゅか?もう、いっしょ、だめでしゅか…。」
「ああ、そうなる。私達とは、街に入った所でお別れだ。」
団長さんの言葉に、僕はおもいきり団長さんに抱きつきました。
「いやでしゅ!おわかれいやでしゅ!いっしょにいるです!うわあああん!」
僕はとっても寂しくて、泣いちゃった。せっかく家族になれると思ったのに、神様が楽しく過ごせるって言ってたのに。これじゃ、全然楽しくない!
「ユーキ、私の話を…。」
「いやでしゅ!わあああん!」
「ユーキ!私の話はまだ終わっていない!よく聞くんだ!」
団長さんの大きな声にビクッとして、僕は、少しだけ泣き止みました。
「ヒック、ヒック。ふえ…?ヒック。」
「ユーキ、これが1番大切なことだ。」
団長さんが、僕の目を見つめて来て、そして…。
「ユーキ、私の家族にならないか?」
「ヒック、…かじょく?」
家族。団長さんと家族。僕が楽しみにしていた家族。
「そうだ、私の子供になって、家族になるんだ。そうすれば、別れなくていいし、ずっと一緒にいられる。」
ほんとに?今、ほんとに家族って言った?マシロの方見たら、マシロが頷きました。団長さんが、家族って言ってくれた。大好きな団長さんと、みんなと一緒に居られる!
「いっしょ、ヒック、ずっと、いっしょでしゅか?」
「ああ、ずっと一緒だ。絶対にユーキを1人にしない。必ずそばにいる。どうだ?私と家族になってくれるか?」
「なるでしゅ。だんちょしゃんと、ひっく、かじょくになるでしゅ!うわあああん!」
僕は団長さんに、ぎゅうって抱きつきました。僕の新しい家族。大切な家族。これからずっと一緒に居られるんだよね。ほんとにほんとに家族になれるんだよね。
僕は不安だった気持ちと、嬉しすぎる気持ちで、なかなか落ち着けなくて、ずっと泣き続けました。その間ずっと団長さん、僕のこと抱きしめてくれてました。
団長さんの温かい腕の中、僕は泣き疲れちゃって、とても幸せな気持ちのまま、いつの間にか眠っちゃいました。
「寝てしまったな。」
「良かったですね団長。ユーキ君が家族になると言ってくれて。」
「ああ、良かった。…良かった。家族になってくれてありがとう、ユーキ。」
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