第100話 苦しみの中で朽ち果てろ!
[まえがき]
やや残酷回です。
◇◇◇◇◇◇◇◇
射撃が止み、暗がりの中ですこしずつ視界が晴れてきた。七三男がボロボロになった部屋の隅に立っているのが見える。ということは、七三男からも俺の姿が見えているということだ。
「化け物!」
ひどい言われようだ。別にこっちだってノーダメージだったわけじゃないぞ。げんに戦闘服がほこりをかぶっている。
黙って一歩一歩男に近づいていくと、
「待て! どうなっても知らないぞ。今おまえの妹はわれわれが預かっている。妹の声を確認してみろ」
男はスマホに向かって何か指示を出し、画面をこちらに向けた。
『……お兄ちゃん!……』
美登里の声が聞こえた。
「聞こえただろ? 妹が大切だと思うなら俺の言うことを聞くんだな」
なんだと。うかつだったか? ホムンクルスの二人が抜かれたってことか?
素早く美登里に取りつけた蜘蛛を通じて状況を確認する。
蜘蛛の視界を通して周りを見渡してみたところ、美登里のいるのは、どこかの建物の窓のない一室で、部屋の中には3人ほどの男たちが椅子に座った美登里を囲むように立っていた。その中の一人が美登里の隣でスマホをいじっている。
仕方ない。この七三男にはすでに蜘蛛を取りつかせている。必ずあとでじっくり時間をかけて始末してやる。
『ステルス』から『転移』
七三男を残して俺は、美登里が監禁されている部屋に跳んだ。
「ううー。お母さーん! ううー。お兄ちゃーん! ううー。お母さーん! うううー。お兄ちゃーん!」
泣きはらした目をした美登里が俺を呼んている。ステルス中の俺が見えているはずはないのに気配でも感じたか? 美登里、いま助けてやる。美登里の呼ぶ家族の中に父さんがなかったことは忘れてあげよう。
俺はステルスからの転移で現れたのだが、男たち3人は転移の気配を感じたようで部屋の中をきょろきょろ見回している。
『ヤツはこっちから消えた! おまえたちのいる場所がヤツに知れたはずはないが用心しろ』
遅れて、七三男からの注意がスマホを持つ男に届いた。
美登里の顔をよく見ると、泣きはらした目元の他、右頬が赤く腫れている。こいつら、俺のタガを外したな。
ここから先は美登里には見せられない。美登里、今は寝ていろ。おまえが起きた時にはすべて終わらせておいてやる。
『スリープ』
美登里は椅子に座ったまま、目を閉じすぐに寝入った。
「おまえたち、バカなことをしたもんだ。俺の家族、しかも妹に手を出したんだ。簡単に死ねると思うなよ」
俺の声が急に聞こえて、男たちが声のした方向に振り向いたがもう遅い。
「苦しみの中で朽ち果てろ! 『ダーク・コラプション』」
いまの俺の声を聞いた3人組は、何かの魔法が発動したことは理解したようで、すぐに身体強化系の魔法や魔法防御系の魔法を展開し始めた。発動してしまった魔法はそれよりランクが2段階以上高い防御魔法でしか防がげない。俺の知る限り『ダーク・コラプション』は呪い系統での最上位魔法なので、これを発動後に防ぐことは不可能な魔法だ。
スマホを持った男が最初に自分の体の異変に気付いたようだ。男の周りを黒い霧のような物が渦巻く。
それから間を置かず、するどい痛みを伴い末端の肉から体が腐り始め、
「ギャー!」
それは痛いだろう。しかも自分の体が腐り落ちていくわけだからな。恐怖と痛みで泣き叫べ!
男は黒い霧をはらおうと手足をばたつかせてもがくが黒い霧は自分の体から出ているものだ。逃げられはしない。
すぐに周りの男たちも黒い霧を体にまとい、一言悲鳴を上げただけで、体を少しずつ腐らせながら床に倒れ伏していった。灰色に朽ちた肉が、血管の筋を残して赤黒く変色した骨からずり落ちべちゃりと床に落ちた。その肉も床の上で融けていきやがて赤黒い血だまりになる。
男たちの腕が半分程度腐り落ちて溶け始めたところで、
「じっくり味わえ!『
すでに顔面もだいぶ腐り、唇や頬、まぶたが融け落ちている。ぎょろっとした眼球と歯ぐきが露出し鼻や耳も融け始めた。最初は大声で喚いていたがアクセル・センスの影響もあって声も出せなくなったようだ。そのうち、歯ぐきから歯がぽろぽろと抜け落ち始め、眼球も神経の糸を引いて
この呪いの魔法、『ダーク・コラプション』の恐ろしいのは、死ぬまで痛みを感じ続け、その間意識がはっきりして、気が狂うこともできない。身動きもできなくなるため自死もできない。
しかも、『×16』で体感時間が2倍になるアクセル・センスを16回重ね掛けしたため、体感時間が約6万5000倍に引き延ばされている。これから死ぬまで実時間で5分として体感時間は5400時間、255日におよぶ。
最後に残ったのは、異臭を放つ赤黒い水たまりだけだった。
3人が水たまりになったことを見届けた俺は、寝たままの美登里を両手で抱き上げてドライの
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