まず始まりは【表層編】より、ロウダン・ウォルテールという一人の若い将軍を主軸としてこの物語は展開されます。周囲から真面目で心優しいと評されるウォルテールは、帝都で親や兄弟、部下、果ては王族までと、様々な人と関わり合います。
その中には、皇帝に溺愛されている帝国で唯一の王女、エウラリカがいました。
彼女はとても美しいですが、振る舞いは子供のように無邪気で、そして酷く残酷にウォルテールに映ります。その側には、エウラリカの奴隷として仕える黒髪の少年、カナンがいました。彼は王女の身勝手過ぎる我が儘に、ことごとく振り回されているようでした。
カナンにとある負い目があったウォルテールは、出来るだけ彼の手助けをしようと心がけます。
その中でウォルテールは、帝都で発生する様々な事件と遭遇します。
ここでは【表層編】な訳ですから、ウォルテールは結果として残った『綺麗な真実』のみを手にして進んでいきます。
チラつく裏を垣間見ながら…。
そして、場面が映り変わって【深層編】。
ここからはエウラリカの奴隷、カナンくんの視点より話が展開されます。
【表層編】で起こった話をカナンが時系列順に追っていく形になるのですが、そこで彼が目にするものはウォルテールと同じであって、全く別の物語です。その名の通り、『深く』なります。舐めてかかった人は度肝を抜かれることでしょう。
特に気になるところはエウラリカ様です。彼女の側で、彼は一体何を見たのでしょうか……。
☆☆☆
個人的にこの作品の素晴らしいと思うところは、【表層編】と【深層編】とが密接に関わり合っているところです。
本人たちの自覚があるなしに関わらず、登場人物たちのとった些細な行動が互いに影響を与えているんですよね。そこが細かい。そして深い。
長くなりましたが、簡潔に言えばこの作品はおすすめです。
現場からは以上です。