第21話

数分前の回想終了。

女の子ってもっと仲良くキャキャするイメージがあったんだけどなぁ。


「「・・・・・」」


お二人は完全に敵視して睨み合う。あー、この喫茶店に当分は入れないかな?

シリウスブラックは優雅に珈琲コーヒーをリスのように飲み

楓はパフェを食べる。

歓談をする空気は過去のものとなった。


(あぁー、帰りたいよぉぉぉ!!)


シリウスブラックといるのに、怖いんですけど。

それから黙々と食事するのだった。会計票を持ってレジの前に

立ち俺が財布を出そうとすると。


「待たれよアグニ、ここは我に任せよ!」


シリウスブラックは視線を落とさずスマホを操作して俺を見てカッコいいポーズする。

バイト大学生の女性がクスッと笑った気がしたが無視。


「もしかしてシリウスブラックがお支払いを?」


「うむ。食を言ったのは我。

ならば、支払うのは道理」


「い、いえ女の子に支払いを任せるのは・・・ここは俺が!」


「それなら割り勘で良いんじゃないの」


視線を落としてスマホをいじる楓が淡々とした声で言う。

その提案に俺達はそれが妥当かと

考えが一致して俺と楓、シリウスブラックで払う。

店を後にして駅の前。


「それではまた会おうアグニ」


「はい。えーとシリウスブラックの家って渋谷に近いのですか?」


「そんなところだ。夜道には気をつけるのだぞ」


シリウスブラックは言葉とは裏腹に表情はお淑やかな笑みと控えめに手を振る。


「はは。それは俺のセリフだよシリウスブラック」


なんがかんだで今日は楽しかった。このやりとりが。


「・・・・・」


シリウスブラックと別れて改札を通り待たつすぐ車内に入れた。

帰宅ラッシュタイムで座れる所は無いが。


「・・・ねぇ、明日は私と二人で久しぶりに映画とか行かない?」


「えっ!?」


静かになっていた楓が急にそんな事を言った。理不尽な怒りを吐くと思っていたけど眩い頬に赤く染まる。


「まぁ、別にいいけど・・・彼氏じゃなくていいのか?ならその彼氏と一緒に行くのも――」


「いいわよ。子供の頃、二人で行っていたでしょう」


「まぁ、そうだけど・・・」


子供との頃って、それ親と同伴で一緒に観に行ったことじゃないか。あの頃の楓は素直だったよなぁ・・・そう感慨深くなるほど俺と楓は家族の次に一番と長い付き合い。

もしかしたら寂寥感せきりょうかんを・・・いや深読みのし過ぎだな。

明日はシリウスブラックと約束は無いし楓とたまには幼い頃みたいに遊ぶのも楽しみだ。

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