第二章―現世は世知辛い―

第22話

翌日、放課後になり俺はある人物と共に赴く。


「どうしてあなたがいるのよ!」


「そ、そう言われても・・・」


不遇にも幼馴染の楓に怒られるのは、ある人物のイケメンの同い年である留守海斗るすかいとだ。一年にして野球部から

エースを継ぐ者というカッコいい二つ名を持つ。


「楓、いくらなんでもひどすぎないか?一応は彼氏なんだから」


楓の彼氏である海斗かいとを伝えず一種のサプライズで

誘ったのだが海斗は何故か辞退しようとするのをほとんど強引に連れてきたらこうだ。

俺は海斗に近づき声を潜めて訊くとしよう。


「もしかして喧嘩ケンカ中だったか?」


「ああ、違う。そうだな・・・

やっぱりそうだなぁ」


「なんだよ、ハッキリしないなぁ。そういうことなら任せろ」


二人の友人として取り成してやろう。俺って本当に優しい!


「えっ!?ちょ、待っ――」


「おっと、楓わりぃけど用事が出来てしまった。そんじゃあカップルさんデートを楽しんで行ってくれ」


俺はきびすを返して去る。用事というのは口実で、こういうのは二人にさせるのがいいはず・・・まぁ、マンガの知識だけど。


「えっ?ま、待ってよ!ねぇ、

用事ってもしかしてあの人と合うんじゃないの」


しかし、先回りされて俺は逃げられなかった。楓は涙目になってどこかすがるように必死そうに見える問い掛けだった。


「あの人?」


芦名詩端あしなうたは。あなたがシリウスブラックって呼んでいる美少女」


どうして楓が俺とシリウスブラック関係を気にしているのか。

もしかして幼馴染として心配とか

してくれているのではないか。

俺も素直に何があっても言わないが楓の恋を応援している。


楓の場合は恋を心配している節がある。それはからかわれている

だけじゃないか嘲笑されていないかを恐らく思っている。

だとすれば、今までの行動に辻褄つしつまが合う。


「いや、今日は会わないよ」


「そうよかった」


(安堵した!?もう疑いもなく確信だ!)


「そう心配しなくてもシリウスブラックは優しい人だよ。

たぶん今まで会ってきた女の子の中で」


「・・・今まで会ってきた中で」


あ、あれ?おかしいなぁ。

楓が鬼のような形相になっている。


「ふぅー」


「?」


自分の豊かな胸を触れて深呼吸している。俺は無言で彼氏である海斗かいとを視線で問うが

首を横に振り知らぬと返答。

キッと顔を上げる楓。


「そうなの、それじゃあ行こう」


笑顔を作って俺の腕を優しく引っ張る。


「どこに?海斗は」


「ほら、海斗」


「雑っ!?一応は彼氏にしているから設定を守ろうよ」


海斗のツッコミに設定をなんとか?あったけど、楓の突拍子のない

発言に困惑して言い間違いしたのか?

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