幕間
「……本気で言ってんのか」
「灯籠がやらんなら、やれへんけど」
「は。よく言うぜ。脅しかよ」
大門の先でのことを話した私にそう笑って、灯籠は黒子のある口元をゆるりと撫でる。男が機嫌のいい時にしか見せないその仕草は、私の気持ちに拍車をかけた。
「私は、やれる」
「わかってんのか、女郎や喜助が足抜けするのとはわけが違ェんだぞ。羽柴の面目もあんだろうが。ただの折檻で済むと思うなよ」
「灯籠慣れとるやろ、折檻」
「おめェもな」
そう、肩を寄せて笑い合う。
昔から私と灯籠はよく無茶をやった。それこそ、私が「次郎」になったその日に、一緒に仕置き部屋に入れられるくらいには。
そうや、灯籠。あんたが灯籠、私が次郎になってもう十二年。着飾り、着飾らせ、大門を抜けたら溶けて消える儚いあぶくのような夢を見させ続けて、何年経った?
「一遍くらい、長い夢、見させたろうや」
大門の先、夢のその先へと。
私の言葉に灯籠は「悪かねェな」と、煙管をくわえた口の端を上げて、ひどく楽しそうに笑った。
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