召喚
まずは僕と彼女の現状についてだが
僕は素敵な港町で日々を過ごしている
もっとも、海の男と言う訳ではない
彼女も又、素敵な港町の住人なのだが・・・
僕は横浜
彼女は神戸
いわゆる遠距離恋愛の関係なのだ
この状態になってから二カ月が経過して
その間は一度も逢っていない・・・
ラインや電話では連絡は取りあっているけど
彼女の手に触れる事は簡単にはできない
その距離560km
新横浜ー新神戸の新幹線は最速ののぞみでも二時間半
片道料金は14,090円
思い付きで逢いに行けるものではない
それでも電話やラインの向こうにいる彼女は
全く変わらない
沖縄旅行に誘う前に、機会があれば
機会を作ってでも、とりあえず一回逢いたい
そう思う毎日だったが
最初のチャンスが来た
寧ろ、無理やりチャンスに認定した感は否めないが
それでもチャンスは来た
僕の職場の同僚が移動する
送別会があるのだ
移動する方は、僕にとっても彼女にとっても共通の大切な仲間
彼女が遠路遥々、送別会に出席しても何ら不思議ではない
寧ろサプライスゲストとしては、これ以上はない程、主役に喜んでもらえる役どころ
かくいう彼女も、2か月前に送り出された立場
今回の主役と違うのは
彼女は移動ではなく、退職だった事・・・
彼女の名は亜美
僕と同じ職場にいた美しい亜美
今は港町神戸に住む年上の可愛い亜美
恐る恐る
そんなに期待せずに
冗談交じりに
僕は亜美に電話で言ってみた
僕 送別会来れば?
亜 うん、行こうと思ってるのよ?
僕 え?
僕 マジで?
亜 そうなの、いろいろお世話になったし
僕 僕に逢いに来るって事?
亜 いやいやw
亜 送別会に行くだけだよ
興奮が抑えられない・・・
僕 そう言うのいいからw
僕 逢いに来るんでしょ?
亜 行きたいとは思ってる
僕 ま、そこはいいよ
亜 うんw
亜美がこう言う時は、九分九厘来るつもりだろう
僕 来た日は一緒に過ごす?
亜 いやいや、それは無理でしょw
僕 だから、そう言うのはいいよw
僕 路頭に迷いたくないから、宿は押さえておくから心配しないで
亜 それは心配してないけど、本当に行けるかどうかは未だ未定だよ
僕 OKOK
僕 それも踏まえて予約だけはしておくから
亜 わかったわw
亜美が一応拒むのは儀式みたいなもの
このやり取りは僕には感無量の極み
僕 少し時間はあるから、無理のない範囲で出来るだけ来る方向で調整よろしく
亜 うん、そうするわ
この後も取り留めのない話しは延々と続いた
Xデーまでは密に連絡を取る事を約束して電話を終えた
亜美に準備が必要なように、僕も早速準備を始めた
亜美に逢える
既に“かもしれない”は僕の中で忘却の彼方
夏に行きたい沖縄よりも
目の前にある送別会への召喚
僕が亜美を呼べる理由を隠蔽しつつ
そこまで乗り気ではなかった幹事の役割を
丁寧に慎重に完璧に粛々と進めた
首里城で 小川三四郎 @soga-bee
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。首里城での最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
最愛/小川三四郎
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 4話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます