第3話 バイトの出来事
「こんにちは〜」
僕はあるカフェの裏口を通った。そしてその先にいる人物に挨拶した。その人物とは……
「また店長一人ですか。」
「ははっ、バイトが一人だけだとこの店が人気じゃないみたいだな。」
松村陽平である。見た目は頼りがいのあるおじさんみたいな感じだ。カフェの店長とかそう言う感じの顔だ。まぁそう言う事。
「そうですけどこの店不思議ですよね。店員は僕一人だけなのにちょっと人気がありますから。」
そう。この店は僕一人しか店員がいないのにそれなりに人気がある。この人気だとバイトとか一人ぐらい来てもいい気がするけどね。
「それはだなぁ〜…お前のせいでもあるんだぞ。いや、お前が原因だ。でもその原因のおかげでこの店が人気なんだけどな。」
「……?」
意味が分からないので首を傾げると店長は何でもない。と笑って僕を更衣室に行かせた。店長は時々変なことを言う時がある。まあ僕は歳を取ってるからとしか思ってないけど。
僕はこの店の服に着替え、前に下ろしていた髪を掻き上げてワックスをつける。店長曰く、前髪を長くするのは清潔感があまりないと言われワックスをつけるようにしてる。だけど、はじめてワックスをつけたら店長に、「誰なんだ……?」と驚かれた事がある。まぁイケメンになった訳ではないけどね。
ワックスをつけたお陰で中学校ではバレることはなかった。だからワックスをつけるようにしてる。何故僕が中学校でも働いてるかと言うと店長と仲が良かったからだ。だから中学校でも秘密に働いてた。
「いらっしゃいませ。」
扉を開けると鈴の音がなるので客が来たことが分かるようになっている。だからその音で反応し、キチッと立つ。そして客の方を見ると今日隣の席になった八雲美桜がいた。一瞬焦ったけど、今の姿ではバレることは無いと思い、ブスなりの愛想笑いをする。
「ご注文は何にしますか?」
「えっとぉ〜……サンドイッチと……飲み物はアイスティーをお願いします。」
「かしこまりました。では3番のテーブルに座って待っていて下さい。」
「は、はい!」
そう言って顔を赤くしてモジモジしながら席に着く。初めて来たから緊張してるのかな……とりあえずバレなかった事に安心して注文された物を作る。
そして八雲美桜に持って行った。八雲美桜はこっちに気づくと顔を赤くした。まだ緊張解けてないのかな。
「あっ、ありがとうございます……」
「ではごゆっくりして行って下さいね。」
そう言ってレジに戻ろうとすると……
「あれ?あの……名前って浅草蓮って言うんですか?」
「え?あっ、えっと……そうですよ。」
バレた。多分胸に書いてあるネームプレートを見て気づいたんだ。僕は冷や汗をタラタラと垂らしながら八雲美桜の方を見る。一応笑顔を作っているけど引きつっているかもしれない。
「ん〜…人違いかな。でも………あっ、すみません。人違いでした!」
「そ、そうでしたか……で、ではごゆっくり……」
八雲美桜は小声で何かを呟いてこっちに気付くと謝った。なんとかバレてないようだ………めっちゃ心臓に悪かったけど、なんとかバレてないようだった。
そうこうしている内にバイトが終わった。そして2日目の学校が始まった。
「おはよう!蓮君!」
「お、おはよう」
教室に入ると八雲美桜が挨拶をしてきた。なんかソワソワしながら。とにかく席についてホームルームが始まるまで眠ったフリをしよう。
眠ったフリをしようとすると八雲美桜が声を声をかけてきた。
「あ、あの蓮君!」
「ん、何?」
呼ばれたので顔を上げると前髪を持ち上げられた。やばい。昨日見せてしまった顔を見られると働いてることバレる!
急いで前髪を下ろそうとしてると完全に上げられてしまった。そして驚かれた。
「ご、ごめん!大丈夫だよね……?」
「えっとぉ……大丈夫」
顔バレした。これ多分、「あの陰キャがこの学校では禁止なのに働いてます。退学させて下さい」とかチクられるんだろうなぁ。顔バレしてブスな事もバレてバイトしてる事もバレた。このままではやばいぞ。
「もしかして本当は秘密にしてたの?だ、大丈夫だよ!秘密にするから!」
「え!本当に!?」
これはラッキーだ。八雲美桜は顔を赤くして慌てている。面白そうにしてる様子はないしこれはありがたい!
「う、うん!そっ、そんな顔してたら人気になるもんね!」
「うん?」
八雲美桜はまだ顔を赤くしながら慌てている。だけど八雲美桜が言ったそんな顔してたら人気になるもんねって……ブスな事気を遣ってくれてるのかな?でもそんな気遣いが心を抉るッッ!!
※本当にイケメンです。
と、とにかく……バイトの事を秘密にしてくれる事は助かった!!
僕の八雲美桜に対する好感度がグッと上がった。
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