第74話 トラップ

見た目がゴージャスな宝箱を目の前にして盛り上がる三人の女性たち。


だが俺とシャルは、女性陣とは逆にそのゴージャスな宝箱を冷静に観察していた。

見た目が如何にも胡散臭いので、何かしらのトラップが仕掛けられているのでは、と……疑っていたからだ。


ただ、彼女たち三人は宝箱の豪華さに魂を奪われてしまい、冷静さを失ってしまっている様だった。


そして、我慢の限界を超えたヘザーさんがついにやってしまった。

俺が止める間もなく、宝箱の蓋を一気に開けてしまったのだ。


するとその直後、箱の中からはモクモクと白い煙が噴き出し始めて、ドライアイスの煙のように地面へと広がっていく。

そして、その煙は次第に凄い勢いで噴き出しきて、あっという間に俺達はお互いの姿を見ることすら困難な状況へとなっていった。


そこから、5分は経った頃だろう……か?


次第に噴き出す煙の量が減り始めて、周りの景色も次第に確認出来るようになってきたのだが、しかし煙が晴れた後の宝箱の傍には女性陣三人の姿は無かった。


直ぐに、俺とシャルは行動に出た。


俺は魔力感知を使い三人の追跡を始め、シャルは三人の匂いを探し始めた。


気持ち的な焦りはあるのだが、あの三人なら何とかするだろうという信頼もあるので時間をかけて探知していく。


するとシャルの方が一足早く動き出した。


宝箱の置いてあるベンチ前の石畳の方へと駆けて行く。


俺もシャルの行動に遅れまいと、急いでベンチの方へ近付いていった。


そこには、何かしらの仕掛けがあるようだった。


◇◇◇◇◇


「もうヘザーさん。いきなり如何したんですか?」


「ごめんなさい。何かに憑りつかれたかのように行動してしまったわ」


私がヘザーさんに文句を言っていると「ここはいったい何処なんでしょうね?」と瑞月さんが冷静な言葉で私たちに問いかけてきた。


「先ずは、場所の把握から始めましょうか」


これ幸いと、ヘザーさんが矛先をはぐらかす。

ただ私もいつまでも愚図ってられないので、その言葉に従って周囲の状況を確認することにした。


「瑞月さん、此処ってやはり地下の空間ですかね」


「その様です。私の探知でも先程の宝箱があった場所よりも更に地下の空間のようです」


私が瑞月さんに確認すると如何やら肯定の返事が返ってきた。


「エディの魔力を感知出来ないからかなりの距離を飛ばされたようね」


「でもエディオン様ならきっと見付けてくれると思います」


「シャルちゃんも一緒だから直ぐに探し出してくれるのではないでしょうか」


私たち三人はその場で話し合うと、動き回らずにエディオン様とシャルちゃんが来るのを待つことにしたのだった。


◇◇◇◇◇


宝箱の周辺を隈なく精査していた俺とシャルは三人が居た辺りで魔力の残証反応を感知した。


「シャルこの残証反応からすると、この敷石に魔力を流すと何かが起動する仕掛けになっているのかも……。試してみてもいいかな?」


ウォン!


シャルの同意も得た事で、俺はシャルを傍に抱き寄せるとその敷石に魔力を流してみた。

すると敷石を中心にして魔法陣が現れて光りだし、俺とシャルは違う場所へと転移された。


「ふぅ。どうやら目的の場所に転移出来たようだ」


ウォン!


「三人の魔力反応も微かだが感じることが出来ているな。シャル、行くよ!」


先程の空間よりも更に植生が多様性に富んだ地下空間へとやって来た俺とシャルは三人の元へ急ぐのだった。

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