第69話 盗掘


翌日......。


俺達は城内の北エリア1階で、空間のある地下へと通じる入口が無いかと手分けして調査していた。


そして1時間ほど調査をした後、中央の大広間に集まり意見の交換を始めた。


「わたしの方は、見つけられなかったです」


「私も同じよ」


「俺の方も、手がかり無しだったよ」


残るはこの大広間だけとなった。


「最後の手がかりは、この大広間だけですね」


「地下の空間がこの大広間の真下にあるから、ここに無いとなると穴をあけるしか方法が無いわね」


「出来れば施設を壊さない方法で、地下の空間に行きたいのだけれどね」


俺達は分かれて大広間の床と壁を、魔法を併用しながら入念に調べていく。


しばらくしてシャルがウォン!と声を上げて俺達を呼び寄せた。


俺はシャルが鼻先で指示したその壁に右手を添えると、空間探知の魔法を使い調査した。


「この壁の向こう側が空間になっているね。それと、地下に通じる階段もあるみたいだよ」


すると、ヘザーさんが...


「このまま、壁を壊すしかないかしらね」


「それは、ギルドの許可を得てからじゃないと、私たちが処罰されてしまいますよ」


ヘザーさんの意見に、ソフィアが異を唱える。


俺は二人の会話を聴きながら、依頼を受ける時に受付嬢から聞いた説明を思い出していた。


そしてある事を思い出し、俺は二人に告げた。


「ギルドに、連絡は取れるよ!」


俺の告げた言葉に、?マークを浮かべたような表情を見せる二人に...


「取り敢えず、一旦騎士団の建物に戻ろうか」


と、更に告げたのだった。


◇◇◇◇◇


騎士団の建物内にギルドへ連絡する為の通信の魔道具が備え付けてある事を思い出した俺は、その魔道具を使いギルドの受付嬢へ連絡を取り、地下施設に向かうことに対しての相談をした。


するとその日の午後一番に、立会人をする為のギルド職員が船に乗って湖上の島へとやって来た。


「初めまして、エディオンさん。

私が立会人をする事になった、副ギルド長のデニスです」


「初めまして、エディオンです。そして、ソフィア、ヘザー、シャルです」


それぞれが挨拶をした後、話を本題へ...


そして事情説明を終えた俺達は、立会人のデニスさんを伴って大広間へとやって来た。


「ここですか?」


「えぇ、この壁の向こう側に地下施設に通じる階段が隠されている様なんです」


現場を確認したデニスさんは、持っていた鞄の中から複数の羊皮紙を取り出した。


「...それは」


俺がデニスさんに取り出した羊皮紙の説明を求めると。


「これはですね。この広間の見取り図で、エディオンさん達に渡してあるものよりもかなり前の古い物です。通信の魔道具で話を聞いてから、急いでギルドの資料室内を探して見つけてきました」


大広間の間取りに合わせて、見取り図を床に置いて広間内の状況を確認していく。


「確かにここの壁には、扉が設置されていたようですね」


古い方の見取り図には、確かに扉が描かれていた。


「これは、古城の管理を任されていたギルドの失態ですね。いつの間にか書き換えられていたんですから。エディオンさん申し訳ありません」


「いえいえデニスさん、俺達は依頼された事を遂行しているだけですから、謝らないで下さい」


ギルドの管理ミスに、デニスさんはハァ~と溜息をつき顔を床に向け落ち込んでいるようだった。


このままでは、先に進まないので...俺は。


「それでデニスさん、壁は壊しても大丈夫でしょうか?」


「えぇ、やっちゃって下さい」


半ばやけくそ気味にGOサインを出すデニスさんだった。


◇◇◇◇◇


壁を壊し、その裏にあった階段を下りて、俺達は地下施設へとやって来た。


階段を下りる際、壁には燭台が取り付けてあったので、先頭を歩く俺はマジックバッグの中から蠟燭を取り出して火を灯し燭台に乗せてきている。


「ソフィア、魔法で灯りを」


「はい」


ソフィアが返事とともに室内を明るく照らす。


すると、部屋の中央には棺らしき石棺が鎮座していた。


だが、その石棺の蓋は開けられ、そして床に無造作に置かれていた。


そこで、デニスさんがギルド職員として、先に石棺に近付いて検分をするようだ。


「...これは。いつの時代か判りませんが、盗掘されてしまった後ですね」


デニスさんが、石棺の中を見て悔しそうに言葉を吐く。


次に、俺たちもその石棺の中を覗いて見る...

そこには、有ったであろう金銀財宝などは一切無く、埃の積もった遺骨だけがポツンと残されていた。


「エディオンさん。私が帰った後、この室内と石棺、そして遺骨を綺麗にして頂くことは出来ますか?」


「え~と、出来ますけど。やってしまって良いのですか?」


「はい。盗掘によって穢されていますから、清める意味でもお願いします」


一通り地下の施設内を確認したデニスさんは、その日の夕方街の方へと船で帰っていった。

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