第68話 古城の守護樹
この城は3階建てで、俺の実家ウエスフィールド家の屋敷8個分ほどの大きさがあり中庭も造られている。
俺とシャルは、北東エリアの1階から3階までの各部屋を巡回して状況を把握していった。
その際気付いたのだが、各部屋の窓は全て中庭を望むように造られていて、その中庭にはひと際大きな樹が立っていた。
世界樹では無いようだが、樹高で20mほどはあり綺麗なドーム型の樹形をしている。
ただ、俺が見た感じでは樹に元気がないように感じられた。
午前中の巡回を終えて、騎士団の建物内のキッチンへと戻って来た俺達は、食事をしながら状況を共有するための話をしていた。
「北西エリアの方は、特に変わった感じは有りませんでした」
「強いて言えば、城内が綺麗に保たれているという事かしら」
「北東エリアも概ねそんな感じだね」
ウォン!
「エディオン様、午後は南側の巡回警備でよろしいでしょうか」
「そうだね。あっ、そうだ。
二人とも、中庭の樹には気が付ているよね」
「はい、勿論です」
まぁあれだけの大きさだし、二人があれを見過ごす事は無いか。
「それで、気になったのが...樹に元気がないと感じたことなんだよ」
「そうね。エディオンが言うように、確かに樹には元気が無かったわね」
ヘザーさんも、そのことには気が付いていたようだ。
「そこで午後は、一番最初に樹の様子を見てみようと思うんだけど...二人はどうかな」
「良いと思いますよ」
「私も、良いと思うわよ」
ウォン!
こうして、食事と休息を終えた俺達は中庭の樹木のところへと足を運んだ。
「近くで見ると、圧倒される感じですね」
ソフィアが言うように、その樹には圧倒的な存在感があった。
俺は、その樹木の幹へと近付くと掌をそっと添えてみた。
すると、生い茂っていた葉の先端から柔らかな光の光線が俺へと降り注いできた。
「わぁ、凄く綺麗です」と、ソフィアの声が聞こえてくるが。
俺は降り注いできた光線の光の繭の中に入ってしまい、残念だがその光景は見れなかったのだ。
少しして、光の繭から解放された俺の下に二人が近付いてきた。
「エディオン、どんな感じだったの?」
「それ、わたしも興味があります」
ん~、どう説明したら良いものか。
「そうだね。凄く優しさに溢れた暖かな感じで包まれているかな。
それから、人と会えたことへの嬉しい感情かな」
「じゃ、この樹には意思があるという事かしら」
「凄いです」
二人も樹に触れてみたいという事で、今度は二人+シャルが樹の幹に近付いていった。
俺は先程の光景が気になったので、急いで樹から離れるとその時をまった。
そして、彼女達が樹の幹に触れると、生い茂っていた葉の先端から柔らかな光の光線が彼女達へと降り注いだ。
「おぅ、なるほど納得」
それはとても幻想的な光景だった。
俺達が一通り体験したところで、樹の状態も気になるところなのだが、取り敢えず午後の巡回警備を終えてから、その原因を調査する事にした。
午後の組み合わせは、俺とソフィアが南西エリア、ヘザーさんとシャルが南東エリアを担当。そして、俺達は速やかに動き出すのだった。
一日目の巡回警備を終えて......。
初日という事で、ほぼ城内の状況を把握する事に時間を費やしたのだが、建物自体には問題はなさそうだった。
気になると言ったら、樹の症状とその原因の元を調査する事だろう。
そこで俺達は、陽が落ちるまでの時間を使って、樹の周りの土壌と地中の調査を行う事にした。
「本当は幹の周りを手をつないで囲えれば良かったんだけれど」
「流石にこの幹の太さでは、三人では届きませんね」
「五人いてやっと...と、いうところかしら」
そう俺達は、幹を囲んで調査をすれば何か分かるのではないかと思い、チャレンジしたのだが幹のその太さに断念せざるを得なかった。
まぁ、見れば分かる事ではあるのだが。
小さい頃を思い出したので、物は試しにと無謀にもやってみたのだ。
さて、次は真面目にという事で......。
俺達は、樹の近くに立つと手をつないで魔力を練り始めた。
そして、魔法陣を展開する。
「investigation《インヴェスティゲーション》」
魔法陣の光が地上から地中へと透過していき、土壌と地中の状況を調べ始めた。
数分後......。
土壌を担当したソフィアが...
「中庭の土壌は問題ないようですね」
地中を担当したヘザーさんが...
「地中も何かしら、空洞があったり水脈が切れていることは無いようね」
そして、建物の地下を担当した俺が...
「でも、少し気になる箇所があるかな」
俺は気になる箇所を、二人に説明する為に手をつないだまま。
「二人とも目を閉じて...」
俺は二人にマップ機能を使いイメージを共有していく。
「ここ、北側の建物の地下に空間が有るのが分かる」
「あ~、確かに有りますね」
そこを更に拡大して、二人の意識の中に投影していく。
「あら、棺かなにかかしら」
「しかも、蓋が開いていますね」
俺は二人から、つないでいた手を離すと...
「ここに、原因があるんじゃないかと思うんだよ」
と、口にした。
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