第67話 湖上の古城

このエマールの街に来て四日目、俺達は冒険者ギルドへと足を運んでいた。


「何だか、凄く久しぶりな感じがするわ」


「そうですね。この雰囲気も懐かしい感じです」


「そうだね。息抜きの時間を長く取り過ぎたかな」


ギルドの建物内に入りホールの中ほどを歩きながら、俺達はそんな会話をしていた。

そんな俺達を怪訝な目で見ている冒険者たちもいたが、俺達はそのまま窓口まで歩いて行き、俺が代表して窓口の受付嬢へと声を掛ける。


「済みません、何か受けられる依頼は有りますか?」


俺は手にしたギルドカードを提示しながら、受付嬢に聞いてみた。


「エディオン様ですね。いま、Aランクの依頼になりますと......」と言いながら、ファイルを捲り始める。


......数分後。


「あっ、これなどはいかがでしょうか」と、一つの依頼票を手に取り窓口のカウンターの上に乗せて見せてくれた。


その依頼票には、【古城の巡回】と書かれていた。


「この依頼の内容なんですが、説明をさせて頂きますね。

古城というのは、数百年前に湖上の島に建てられた城のことなんですが、半年に一度その島に渡り、城の中を巡回して問題が無いかを確認するお仕事なのです」


「Aランクの冒険者向けという事は、危険を伴うという事ですか?」


「毎回という訳では無いのですが、稀に飛行タイプの魔物が巣作りをしていたりするので、その排除をして頂くことはあります」


「そうですか、分かりました」


俺は、後ろへと振り返りソフィアとヘザーさんに如何するか聞いてみた。


「二人は、どう思う」


「わたしは、依頼を受けて良いと思います」


「私も、良いわよ。その湖上の古城、直に見てみたいわ」


俺は二人が依頼の受注に賛同したので、受付嬢の方へと視線を戻すと「その依頼を受けます」と返事をした。


シャルは、いまコテージでお留守番をしているのだが、俺達についてくるのは判っているので、俺はシャルも賛同と判断して置く。



翌日......。

ギルドの手配した船に乗り、俺達は湖上の島へと上陸した。


「では、五日後に迎えに来ますので、よろしくお願いします」


案内役のギルド職員が島に上陸した俺達に向かってそう言うと、ギルド職員を乗せた船は対岸の街の方へと戻って行った。


俺達は船着場から城内に入る為に、石畳で整備されている道を歩いていく。

そして、城壁に設置されている大きな門を通り抜け城内へと歩を進めた。


「それにしても、随分と綺麗に保たれているじゃない」


城内の光景を目にして、ヘザーさんが第一印象を言葉にすると。


「古城と言っていましたから、もう少し古い感じを想像していたのですが」


ソフィアもつられて感想を口にした。


「でも、鬱蒼と草木や苔に覆われているよりも良いんじゃない」


ウォン!


古城のイメージが強すぎたのか、少し残念そうな二人だった。


「取り敢えず、使うように指示されている宿泊所に向かおうか」


「「はい」」


ウォン!


城内での宿泊は騎士団が使用していた建物を使うようにと、説明を受けているので俺達はそこへ向う事にした。


「この城内の案内図によると、この先にあるようですね」


ソフィアが案内図を指し示しながら、俺達に向かう先を教えてくれる。


数分後......。


「ここじゃない」


「そうみたいだね。ここも綺麗に保たれているね」


俺達は、騎士団が使用していたとされる建物内に入ると、宿泊の準備をする為に設備の点検を始めた。


「キッチンにお風呂、トイレも使用可能な状態です」


「後は寝床の確認くらいかな」


それから30分ほど建物の中を確認して回り、建物内の配置などを把握した俺達はキッチン内に集まり一息入れる為のお茶を飲んでいた。


「本格的な巡回警備は明日からかな」


「そうですね。見回りをする場所をブロック分けして二人一組でやれば効率が良いのではないでしょうか」


ソフィアからの提案に乗る形で、そこからは一息入れる為のお茶会が対策会議へと変わってしまったのだった。


その中でも、変わり種として...


「毎日同じメンバーだと飽きちゃうから、日ごと時間ごとでパートナーチェンジをしながら巡回警備をしていきましょう」


と、ヘザーさんらしい提案なども採用となっていた。



翌日...巡回警備、一日目。


城内を四つのブロックに分けたので、午前中は北西のブロックをソフィアとヘザーさんが、北東のブロックを俺とシャルが担当することになった。


「じゃ、お昼にここのキッチンに集合という事で良いかな?」


「「はい」」


騎士団の建物から出た俺達はそれぞれの持場に向かい、城内の巡回警備を始めるのだった。



「シャル不審な匂いとか感じたら教えてね」


ウォン!


元気なシャルの返事を聞いて、俺は頼もしくなったなぁ~と思いシャルのその頭を撫でてやる、するとシャルは嬉しそうに尻尾を大きく振り回していた。


俺は俺で、空間探知を発動して問題が起きていないかの確認を始めた。

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