第66話 謎の一枚岩
どうやら、先程感じた違和感は結界で、この空間が魔法によって拡張されている事を隠すためのものだったのだろう。
元日本人として、鳥居の左端に立ち一礼をしてから
そして、祠に近付いてみると階段がありその左右には
俺は、籠に薪を数本投入すると松明の火を薪へと移した。
そして、左右の篝火が勢い良く燃え始めると、松明の灯りでは見えなかった祠の全容を確認することが出来た。
そこから更に階段の方へ近付いて行くと、
俺は、階段を登り扉の前に立つ。
すると、格子状に組まれた扉が、自動的に手前へと開いた。
そして、開いた扉の奥には定番の賽銭箱が鎮座しており、俺にはこの祠が貴賤を求めているようにしか思えなかった。
まぁ、ここまで来たら賽銭を投げ入れるしかないのだが...
何か、釈然としない思いも湧いてくるのであった。
ただ、ここまで手の込んだ事をしておいて、神様を利用した新手の詐欺も無いだろうと思い、俺は賽銭箱に白金貨1枚を放り込んだ。
チャリ~ン!
賽銭箱の底に落ちた白金貨の音がなった瞬間、賽銭箱の更に後ろにあったのだろう。稲荷神のシンボルである神使の白い狐の像が光り輝き始めた。
そんな演出効果まで施されているとは思ってもいなかった俺は、多分惚けた顔をしていたと思う。
その後、我に返った俺は弐礼弐拍手一礼は忘れずにしておいた。
ここまでの間、シャルはずっと俺と一緒に居たのだが、俺が何をしているのかと不思議そうに俺の行動を眺めていた。
そして、神社に行った時に行う簡略的な儀式を終わらせた俺は、篝火の後始末をすると来た道を戻って、一枚岩の穴の外へと出た。
そして、俺とシャルが振り返ると、一枚岩は忽然とその姿を消していた。
俺とシャルがランニングの帰り道で聞いたゴォー!という音は、俺達に対して意図的に聞こえるようにしていたんだと、この時理解したのだった。
◇◇◇◇◇
「エディオン様とシャルちゃんは、どこまで走りに行ったんでしょうね」
「そろそろ、帰って来るでしょう」
わたしは、ヘザーさんと朝食の支度をしながら帰りの遅い二人の心配をしていた。
すると......。
「ただいまー」
ウォン!
「帰って来たようですね」
「じゃ、支度を急ぎましょう」
わたしたちは帰って来た二人の為に、そこから急いで朝食の支度を終わらせました。
そして、ダイニングルームに出来上がった朝食を運び込み、セッティングを終わらせると、そこに汗を流して身綺麗にして来たエディオン様とシャルちゃんが入って来ました。
「遅かったですね?」
「いやぁ、帰る途中で寄り道をしてしまって遅くなってしまったんだ。
詳しい事は、朝食を食べ終わったら話するよ」
何やら、事件があったようです。
メインの食事が終わり、お茶を飲みながら話を聞くことになりました。
エディオン様がカップのお茶を一口飲むと、静かに話し始めました。
「ランニングを終えて帰るところだったんだけど。
小道を歩いていると、俺とシャルの耳にゴォー!という風の音が林の方から聞こえて来たんだ。俺はその音が気になったので、林の方にあるいて行くと、そこには大きな一枚岩があって、そしてその岩には人も通れる穴もあいていたんだ。
そこで、俺とシャルはその穴の奥へと入ってみたんだ.........で、最後はその一枚岩が消えて無くなったという話なんだよ」
「何と言って良いのか分かりませんが、二人がご無事で良かったです」
◇◇◇◇◇
「エディオン、今日はこの後はどうするの?」
「湖畔近くの広場で大道芸をやっているらしいから、それを見に行ってみようかなと」
「それは面白そうね」
食事の片付けを終わらせて、身支度を整えた俺達はコテージを出て広場へとむかった。
林の中を抜けるように整備されている小道は、わざと道を曲げてカーブを拵えて在り
景色の変化を楽しめるようになっていた。
「こんな風に、みんなで一緒に過ごすのも久しぶりですね」
「そうだね。何かしらの事件や仕事に巻き込まれているから、久しぶりだね」
「でも、ギルドに知られたら、また事件に巻き込まれるんじゃない」
ウォン!
ヘザーさんの意見も無視は出来ないのだが...
この日は一日中、湖畔近くの広場で大道芸を堪能しながら、俺達はみんなでのんびりと過ごしたのであった。
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