第63話 燃える石

倉庫でグラボイズの大きさを確認した後、俺達はギルド長室へと移動してきた。


「エディオン、奴の事を教えてもらえるか」


と、ギルド長のライザップさんに声を掛けられた俺はソフィアとヘザーさんに足りない所があれば捕捉するようにお願いをして話し始めた。


「地中を移動する魔物と聞いていましたから、拠点とする土地をまず土魔法を使って20m四方を円柱状に硬化させて安全を確保。それから………という事です」


「そうか。そういうやり方か、良く思いついたな。

するとその土地に居る限りは安全なんだな。俺も奴らの行動をこの目で直に確認してみたいと思う」


「えっ、今度は一緒に行くという事ですか?」


「あ~、ギルド長としてキチンと把握しておかないとな」


その後の話し合いの結果、ギルド内での人員の調整があるという事なので、三日後の朝に開拓村へと出発する事となった。


「おっと済まない、エディオン。出発するまでの三日間で、この石が今回の駆除に役立たないか検証を頼む」


「分かりました」


俺がライザップさんから手渡された物は、小型の水槽の水の中に沈められた何の変哲もない黒い塊の石たちだった。


ライザップさん曰く、「決して検証するとき以外は、水槽の水の中から出してはいけない」という事だった。


「詳細は教えてくれないのか」と、俺が問いかけたところ。


「聞くよりも見た方が納得できるぞ」と言われてしまった。


俺はその水槽をマジックバッグに収納すると、ギルド長室を出て宿へと向かった。



翌日......。

ライザップさんから預かった石の検証を行う為に、宿で朝食を済ませると部屋に戻り開拓村へと転移した。


拠点の中央に置いておいた檻の中のゴブリン達は、グラボイズに襲われることなく元気に生きていた。


「こいつらは、2・3日食べなくても平気だからと思ってはいたけれど、ここまで元気とは思わなかったよ」


そう、ゴブリン達は俺達の姿を確認すると、檻の中から威嚇してきたのだった。


もう一つ確認出来た事は、グラボイズは硬化しておいた土地にはやって来れないということがハッキリとした事だ。


そんな感想を、話し終わった所で......。


俺はライザップさんから預かった石の入った水槽をマジックバッグが取り出した。


「直接触って取り出すのは、危険な感じがします」


「私もそう思うわ。魔力の反応は無いけれども、水の中に入れてあるのが気になるわ」


二人に直接触るのは危険だと言われた事で、俺は屋外で料理の時に使う長さのあるトングを取り出してみた。


「これならど~お」と、俺が二人に確認するとOKが出た。


早速、水槽の中の小さめの石を一つトングで掴むと、俺は水槽の水の中から取り出してみた。


ボゥワッ!


急に燃え出した石に驚いた俺は、その石を水槽の中へと落としてしまった。


「水の中に落ちたら、炎が消えて元の石に戻りましたね」


「面白い現象ね」


二人の冷静な普通な会話によって、驚いた俺の心が落ち着きを取り戻す。


「見れば分かる」と言った、ライザップさんの言葉の意味が分かった瞬間でもあった。


「燃える事は分かったけれど、どれ位の熱量が有るかだね」


「取り敢えず、もう一度取り出して地面に置いてみれば良いんじゃない」


ヘザーさんの言葉に俺は頷くと、先程の石をトングで掴み水槽から取り出して地面に置いてみた。


石は、先程と同じで水から出した瞬間に燃え始める、それをそのまま地面に置いて観察してみた。


「エディオン様、離れないと凄く熱いです」


ソフィアの言う通り5mは離れないといけない位の熱量で燃え始めた。

しかも、小さな石であるにも関わらずである。

そして、燃焼した時間は3分ほどのものだった。


「エディオン、使い道は有りそう」


「これだけの燃焼力が有れば、十分に攻撃する武器として使えるんじゃないかな」


「でも、取り扱いが難しそうですよね」


「そうだね。でも、水の中に入れて置けば問題ないみたいだから、そこら辺を考えれば何とかなりそうな気はするけれどね」


ここでの検証は一旦終わりにして、宿の部屋で対策を考えることにした。



翌日......。

俺達は、錬金術師の工房へと来ていた。

ギルド長に事情を説明して、紹介してもらったのだ。


「こんにちは。ライザップさんの紹介で来ました、エディオンです」


「ソフィアです」


「ヘザーです」


「それから、この子がシャルです」


ウォン!


「俺はこの工房の主で、錬金術師のホビーだ」


挨拶を済ませると、俺達は主のホビーさんと直ぐに本題の話へと話題を切り替えた。


「実はこの石を、強度のある丸いガラスの容器に水を満たして入れられないかと」


「ふむ...こいつは、燃える石か。燃え出さないように、処理をしたいんだな」


「はい、その通りです。

それと、攻撃の為の武器として使いたいので、器の強度も必要なんです」


「分かった。面白そうだ、やってみよう。何時までに幾つ必要なんだ」


「明日の夕方か、次の日の朝方までに5個は有ればと」


「そうだな~、明後日の朝方取りに来てくれ、それまでには何とかしておこう」


後は、錬金術師のホビーさんに任せる事となった。

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