第62話 実行と検証
「さて、捕まえることが出来るか実際にやってみようか」
朝と同じように、ゴブリンを用意する。
しかし、午後は3体のゴブリンだ。
三ヶ所に囮として置いておき、俺・ソフィア・ヘザーさんの三人で受け持ちを決めて捕える作戦だ。
直ぐに、ゴブリンを東西南(北は無し)に配置して、その時が来るのをまった。
「来ました!」とソフィアの方から声が上がる。
「こっちも来たわよ」と今度はヘザーさんから声が上がった。
『それにしても、俺の方には現れないな』と思っていると、突然地中からグラボイズがその姿を現しゴブリンをくわえると地中へと潜ってしまった。
「あ~、捕り損ねた~」
グラボイズは、既に近くに潜んでいたようで、俺は魔法を行使する間もなく囮を取られてしまった。
こいつは、昨日・今日と現れた奴に違いないだろう。
『学習するのか?』俺はふとそんな事を思ってしまった。
まぁ、なんにせよ俺の捕り物は失敗に終わったので、残る二人に期待しよう。
そこで俺はどちらにでも直ぐに加勢が出来るようにと、二人の中間辺りに向かって歩き始めた。
そして俺が二人の中間に着いたその時、まずソフィアの方に反応があったようで大口を開けた頭部が地上に出た瞬間に魔法を行使した。
ドサッ!
捕まえたようだが、どうやら胴体の方は潰れてしまったのか頭部が力なく地面へと落ちてしまった。
「あ~、魔力の加減を間違えてしまいました」
すると直ぐに今度はヘザーさんが魔力を放出し、グラボイズを拘束した。
「どうかしら!」
「凄いです。完璧です」とソフィアがヘザーさんを褒め称える。
俺は、さすが「年の功」と言いそうになった言葉を吞み込み。
「ヘザーさん、ありがとうございます」と声を掛けたのであった。
そこからは、急いで回収に入った。
頭部が残ったものを先に魔法陣を使って拠点の近くに運び。
生け捕りにした方は、全体像を確認する為に先ずは眠らせることに。
「sleep《スリープ》」
眠らせたのを確認すると、ヘザーさんに地中の硬化を解いてもらい。
「float《フロート》」
ゆっくり浮遊させながら穴の中から引き上げる。
すると、その異様な巨体が目の前に現れた。
そして、そのまま硬化させている土地の上へと降ろした。
すると、地面に降ろしフロートを解除した途端、グラボイズの胴体がグシャと潰れてしまった。
「はっ!」
「「えっ!」」
その光景を見た俺達三人は、同時に素っ頓狂な声をあげてしまっていた。
勿論、奴はグラボイズはご臨終となった。
数十秒後、我に返った俺は......。
「え~と、取り敢えず。こいつの検証を始めようか」
との俺の力のない言葉に、二人も同時に頷くのであった。
2時間後...。
「頭部は、大きな頭骨で出来ている。
胴体は、30cmほどの円柱の骨が連鎖され先端まである。
口の奥に、嚙み砕く為の歯の機能がある。
体組織は、水溶性の物で出来ているが素材は分からない。
全長は10m~15mの間で、胴回りが3m~4mというところかな」
「そんな、ところでしょうか」
「後は、地上に出てしまうと自重で潰れて死んでしまうと」
「地圧を利用して、体の大きさを支えているんだろうね」
ここまでは検証する事は出来たが、駆除する為の方法は見付からなかった。
「どうやって地上に出させるか、が問題だよねー」
「自重で死ぬのは分かっているでしょうから、自分から進んで出る事は無いでしょうし」
「でも、餌に向かって突き進む習性はあるから、そこをなんとか上手く利用すれば駆除出来るんじゃないかしら」
「そうですね。私たちみたいに膨大な魔力を持っている人も居ないでしょうし、そして魔法で『えい、やぁー』とはいかないでしょうから」
「ライザップさんにも、駆除する方法をと言われているからね」
ここにいる俺達だけでは解決の糸口が見つからないので、一旦フレグランスの街に戻ってライザップさんに相談する事にした。
十日ぶりに街へと戻って来た俺達は、ライザップさんに報告する為にギルドへと向かった。
冒険者ギルドに入り、窓口の受付嬢に頼んでギルド長を呼んでもらう。
「おう、何か糸口は見付かったのか」
「いいえ、まだです。それでその事について、ギルド長に相談に乗ってもらおうかと思いまして、帰って来たんですよ」
「そうか。じゃ、俺の部屋で話をするか」
「あっ、その前に...出したい物があるんですが」
「もしかして、あれを捕らえられたのか」
「えぇ、どこか場所が有りますか、13m位の大きさなんですが」
「あ~、分かった。倉庫の方に行こう。
ミーシャ、解体の職員に倉庫の方に来るように伝えてくれ」
「倉庫の方ですね。伝えてきます」
「良し、エディオン。倉庫はこっちだ」
俺達は、ライザップさんに従って倉庫へと向かった。
そしていま倉庫の中には、頭部だけのグラボイズと全身が分かる(水溶性の部分は無い)の亡骸が横たわっている。
「こいつか!なんて大きさなんだ」
「これはまた、良く捕えれましたね」
ギルド長と解体の職員が、グラボイズの大きさを見て驚愕の声を上げた。
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