第53話 まさかの
デビルオクトパスの討伐を終えた俺達は依頼完了の報告する為に、役場へと足を運んだ。手伝ってくれた漁師さんも同行してくれている。
そして、俺達よりも先に...
「おい、迷惑なアイツを倒しだぞ」と、役場の中で宣言した。
いやぁ、討伐したのは俺達なんですけれどね、まぁ船を出してくれて手伝って貰ったのは本当だから、討伐パーティーとして考えれば否は無いか。
「そうですか、ありがとうございます。では報酬を、こちらになります」
俺が代表して報酬の金貨5枚を役場の人から受け取った。
そして、そのうちの1枚を漁師の男に手渡した。
「おい、良いのか俺も貰っちまって」
「えぇ、貰って下さい。大事な船を出してくれたんですから」
「そうか、それじゃ有難く貰うよ。へっへ~、これでカミさんに美味しい物でも食わしてやるか」
そう言うと、漁師の男は足早に役場を出ていった。
俺達も役場の人に挨拶を済ませると宿の方へと向かった。
「シャル、お留守番ちゃんとしていたか」
俺達の姿を確認するなり駆け寄って来たシャルの頭を撫でながら俺は問いかける。
するとシャルは、尻尾を千切れんばかりに左右に振っていた。
「あら、お帰りなさい。討伐は済んだのね」
「はい、明日から輸送を再開するそうです」
「そう、それは良かったわ。これでまた、ここも活気が戻って来るわね」
安堵した言葉を発した後、宿の女将さんが嬉しそうに笑顔を見せていた。
翌日......。
輸送船が港に接岸すると、荷運びをする人達が往来していて港が賑わっていた。
きょう俺達が港に足を運んだのは、この港に荷降ろしをして空船になった船が隣街の港に帰るので、その船に乗せてもらう事になったからだ。
なんでも、デビルオクトパスを討伐してくれたお礼だということだった。
昼過ぎ、隣街の港に着くとデビルオクトパスの解体は終わっていて何処にもその姿は確認できなかった。
すると、船に乗せてきてくれた船長さんが、久しぶりの大物だし鮮度が命どという事で、漁師のさんとその家族総出で解体したと教えてくれた。
「エディオン様、お腹が空いてきました」
「あっ、お昼ご飯はまだだったね」
「おっ、それなら港を出て右側にある海鮮料理屋に行くといいぞ。
昨日の解体したデビルオクトパスの料理が食えるはずだ」
「ありがとうございます。行ってみます」
どんな料理があるのか期待をしながら、港を出て海鮮料理屋の扉を開けた。
「お昼の食事時が過ぎたから、席には空きがあるね」
「良かったです、直ぐに食べられそうですね」
テーブルにあるメニューを見てみると海の幸を使った品々が箇条書きで書いてあった。
日本にある名前の料理も並んでいた。
だがこの世界に生まれてからは、初めて食べるので期待せずにはいられない。
俺達は、それぞれ船盛定食、海鮮丼、アジフライ定食を頼んでみた。
シャルは魚には興味がないようなので、後でお肉をあげることにした。
そして最後に、まさかのタコ焼きがあったので注文して置いた。
女性陣の二人は不思議そうな顔をしていたが、食べてみると多分表情が笑顔に変わる事だろう。
テーブルに次々と料理が運ばれてくる。
タコ焼きは熱々が食べたいので食後にテーブルへと運んで貰うことにした。
「美味しいです。海の近くで食べる魚は新鮮でいいですね」
「ご飯との相性もバッチリね。幾らでも食べれそうだわ」
二人の評価はうなぎのぼりだな。
俺も自分で頼んだ船盛を食していく。
随分と久しぶりの刺身だが、これはまたここに食べに来ようと思わせてくれる一品だった。
そして、〆のタコ焼きがテーブルに運ばれて来た。
ソース掛けタイプと汁に浸して食べるタイプの両方を注文してみた。
どちらが二人の琴線に触れるのかが楽しみだ。
「熱いからやけどしないように気を付けてね」
二人共ソースの方から手を付けた。
「甘辛くて美味しいです。でも熱いです」
「あつっ、でも本当に熱いわね」
熱いと熱いと言いながらも、パクパクと5個ほど食べていた。
次に二人は、汁に浸す方に手を付けた。
「これは、あっさりとした味でまた、お口直しにいいですね」
「あら、本当だわ。これもいいわね」
二人は、どちらのタコ焼きも甲乙つけがたいようだった。
二人が評価をあーだこーだ言っている内に俺も久しぶりのタコ焼きの味を満喫したのだった。
腹ごしらえも十分に出来たところで、俺達はお会計を済ませるとシャルに食事をさせる為に海辺の広場へと移動した。
「シャル、いま食事を用意するから遊んでていいよ」
俺がそう言うと元気に走り回り始めた。
さて、どうするかな。
マジックバッグの中にあるオークの肉をステーキにするか。
俺は土魔法で竈を拵えると、網を取り出して火を起すとオークの肉を焼き始めた。
味付けは軽く振った塩とハーブにしておいた。
「シャル、おいで」
匂いで分かっていたのか、全力で駆けて来る。
そんなシャルの前に専用の大きい皿を取り出すと、シャルが満足するまでオークのステーキを何枚も焼いてのせてやった。
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