第52話 試行錯誤しました
あの後、役場まで行き俺達は正式な依頼としての書面を作成して貰い依頼を引き受けた。
そこで調査を行うのだが、最初から船でその現場に行くのは流石にリスクが大きくお薦め出来ないと役場の人が言うので(尤もである)魔物が居るであろう場所を役場の人に地図上で示してもらい、一度目は丘の方から居場所を特定する事にした。
今日は、簡単な確認作業にする予定なので、俺とシャルで行って見る事にした。
「エディオン様、気を付けて行って来て下さいね」
「シャルも頑張るのよ」
二人に見送られて、俺とシャルは宿を出発した。
転移魔法で移動しても良かったのだが、潮風が気持ちいいのでシャルと一緒に軽いランニングで移動していた。
マップを起動して手持ちの地図と情報をすり合わせて行く。
「シャル、あと二つ丘を越えるよ」
「ウォン‼」
宿を出て約1時間ほどで目的の丘に到着、突端の岬までは歩いて行った。
ここの海岸線は特徴的なノコギリの歯のような形状で、所謂リアス式海岸となっていた。
なので、海面から岬の上まではかなりの断崖絶壁となっている。
「役場の人は海の魔物と言っていたから、魔力感知で探してみるか」
突端に立つとちょっと怖いものがあるが、そこは我慢して魔力感知を使い魔物の居る位置を探していく。
「おっ、反応があるな。
でもここからだと、海面まで50mの高さはあるよな。
まぁ、移動は転移魔歩で何とかなるにしても...
下の砂浜に降りて戦うには、後ろが断崖絶壁だから三人だと逃げ場が無いか。
海から向かっても、失敗した時に船だと逃げる時のスピードが問題だよな。
ん~、どうしたものか?
まぁここで、一人であれこれ考えても仕方がないから、一旦宿に戻ってから二人に相談してから決めよう」
この日は素直に宿へと戻り、俺達は夜遅くまで対策を話し合った。
翌日の午前中は、船のスピードがどの程度出せるものなのかを実地で検証してみた。
午後は、断崖絶壁に囲まれている砂浜に降りて状況を三人で実際に見てきた。
「動きの速い魔物なんですよね」
「そう...移動するときに、口から海水を吸い込んでそれを一気に吐き出すことによって加速の推進力を得ているようで、瞬間的にはかなりなスピードが出るらしいよ」
「小舟だと一発で沈められそうですね」
「そうなんだよね。それと、海の中に居るから直接的な魔法攻撃は余り効果が無いんだよね」
「それでは、魔法陣を使って陸上へと引き揚げてしまうのはどうでしょうか」
「それも、手ではあるけれど引き揚げる場所の問題があるんだよね」
「あ~、ここの港では無理が有りますね」
俺達が思っていたよりも一筋縄ではいかない魔物のようだった。
翌日は、もう一度役場を訪ねて魔物を討伐した後の置き場所について話し合った。
その結果、隣街の港なら陸揚げできるという事で、討伐後は隣街へと運ぶことが決まった。
そして次の日に、一度討伐を試みてみる事にして、この日の午後は海辺でバカンスを楽しむことにしたのだった。
作戦当日......。
中型船を持っている漁師さんがお手伝いを申し出てくれたので、俺達はその船に乗って魔物が居着いてしまった入り江へとやって来た。
「入り江の入口で、停泊して下さい」
漁師さんに頼んで、停船してもらう。
「二人共、準備はいいかな」
「はい、大丈夫です」
「いつでも、OKよ」
「漁師さんは直ぐに移動できるようにお願いします」
「おう、任せとけ」
俺達は手を繋いだまま、情報を共有して魔物を引き揚げる為の魔法を行使する。
「「「gathering 《ギャザリング》」」」
すると、対象とした辺りの海底が魔法陣の起動した光で明るくなる。
今回この魔法陣には、魔物が逃げ出せないようにする為の術式が組み込んである。
その魔法陣によって魔物が海面へと引き揚げられてくる。
そして、魔物の体全体が海面よりも高くなったと同時にもう一つの詠唱を重ねた。
「「「paralyze《パラライズ》」」」
魔物の身体が一瞬硬直すると動かなくなった。
これは、移動中に暴れさせないための処置だ。
ただ、死んだ訳ではなくて麻痺させただけなので、急いで入り江から隣街の港に向かって移動する必要があった。
「お願いします!」
俺の合図を受けて漁師さんが船を走らせ始める。
「二人共、魔力は持ちそう」
「エディオン様からこちらに魔力供給されていますから大丈夫ですよ」
そうだった、魔法陣が均一発動するように共有をしていたんだった。
俺が一番焦っていたのかも知れない。
なんにせよ、隣の港街まで頑張ることにしよう。
結果としては、何とか隣街の港に陸揚げまでやり遂げて、麻痺させている間に止めを刺させてもらった。
ちょっと狡いやり方ではあるが、初めて海の魔物と対峙したのと、その魔物が全長で15mもあったので結界オーライであり、やり方に関しては許してほしい。
で、その魔物の名前はデビルオクトパスと言うらしい。
名前は厳ついが、食べると美味しいとの事だった。
魔物の解体はこちらの漁師さんがやってくれるということなので、俺達は討伐を手伝ってくれた漁師さんの船で依頼を受けた街へと帰還した。
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