第54話 ガーネッシュの街

港町で英気を養った俺達は、ラボン領のガーネッシュへ向けて出立した。



「この辺は、まだまだ起伏にとんだ地形ですね」


「そうだね。でも地図を見ると、もう少し先まで行けば平坦になるはずだから頑張ろう!」


そこから1時間ほど歩き続け、平坦な大地の際へとたどり着いた。


「見渡す限り草原ですね」


ソフィアの言うとおり、海岸線の起伏にとんだ地形から一気に平坦な地形に変わった事で視界が開けたのだが、見渡す限り草原となっていた。


「遠くの方に、街の防壁らしい物が見えているわね」


「えっ、どこに...?」


「エディオン、ほらあそこよ」


ヘザーさんが指差した方向を凝視してやっとそれらしき物を影として認識できた。


「まだまだ、遠いですね」


二人の目にはハッキリと見えているようで、俺はその会話についていけなかった。



二日後......。

俺の目にもハッキリとその防壁が見えてきた。


翌日......。

その防壁の門を抜けて、ガーネッシュの街の中へと足を踏み入れた。


「ここは、綺麗な街並みだね」


「そうですね。区画整理がしっかりとなされていますね」


「嫌なあの匂いもしないし、私は気に入ったわ」


シャルは俺の傍らを静かに歩いていた。



俺達は先に冒険者ギルドへと向かう。

Aランクの冒険者になった事で、旅先での居場所を報告する義務が発生したからだ。

ギルドの無い、小さい町や村はその限りではない。


ギルドの窓口で滞在する事を伝えて、お薦めの宿を紹介してもらった。


「さて、取り敢えず宿にいって休養しよう」


「そうですね」


◇◇◇◇◇


「おい、本当に大丈夫なんだろうな」


「お頭が言うんだ、大丈夫だろう」


街外れの建物の地下室で、男二人が何やら言い合いをしている。

そこは、地下牢のような造りになっていて、数人の女性たちが囚われている場所だった。


人攫いの一団が根城にしているこの建物は、ラボン領のとある男爵が所有する建物である。


そして、ここに囚われている女性たちは数日前に近くの村などから攫われてきたのだった。


「で、その男爵いつ来るんだ」


「なんでも、休暇と称して二日後あたりに来るらしい」


「お頭は何をしているんだ」


「その男爵の護衛をしているんだとよ」


お頭と数人の男は、冒険者を隠れ蓑にして人攫いをしていた。


◇◇◇◇◇


「今日は何か依頼を受けて見ようか」


「そうですね。久しぶりに、討伐などは如何でしょうか」


「私もソフィアの意見に賛同するわ」


まさか、二人共...戦闘狂じゃないよね。

まぁ、感覚が鈍るのも良くないので、二人の意見を採用することにした。


「済みません。討伐系の依頼とか有りますか」


俺が窓口の受付嬢に声を掛けると、笑顔で依頼票を捲り始めた。


「エディオン様たちはAランクの冒険者ですから、こちらの依頼などはいかがでしょうか。半日ほど離れた場所にある村なんですが、ウルフの被害が出ていて困っているんです。数が多く下位のランクでは対処しきれないので、エディオン様たちに受けて頂けると嬉しいのですが」


「二人は、どうする」


「いいですよ」


「いいわよ」


ウォン!


シャルもここぞとばかりに返事をする。


俺達はギルドで幌馬車を借りると、その足で依頼を出している村へとむかった。



村の入口に到着した俺達は、柵のそばで見張りをしている男性に声を掛ける。


「ギルドからウルフの討伐依頼を受けてきた者ですが」


「おぅ、そうか。いま、村長の所に案内するよ」


そのままで良いという事で、幌馬車に乗ったまま男性の後についていく。

そして、村長宅で詳しい情報を聞いた後、この日は村の周りの地理を把握することに務めた。



翌日......。

村人が畑仕事に出掛ける時間に合わせて、俺達もその畑へと同行した。


村人が畑仕事を始める前に、ウルフの現れる方角を教えてもらいウルフの襲撃に備えた。


「ソフィア、探索魔法で索敵をしておいて」


「分かりました」


ただ、違う方向をからも現れる可能性があるので...


「シャル。シャルは向こうの方を警戒していてくれる」


ウォン!


返事をすると、示した方向と駆けていった。



「エディオン様。こちら側、来ました。10頭ほどです」


ソフィアがウルフの到来を告げると、シャルの方でも現れたらしくウォン‼と吠えていた。


「ソフィアとヘザーさんはこっちを頼むよ。俺はシャルの方へ行ってくる」


俺達は、二手に別れてウルフとの戦闘に入った。


今回は、魔物ではなく通常のウルフだったので難なく討伐する事が出来た。


ただ、村長の話だと30頭ほどの群れらしいので、あと10頭ほどは間引いておきたいところだ。


そして、翌日も10頭を討伐してこの村での依頼は完了した。



村を離れる際、見張りをしていた男性から声を掛けられた。


「村長は言わなかったが、ここ最近近くの村から女どもが攫われてしまったらしんだ。人数は分からないが、気に留めていてくれると嬉しい」


「分かりました。出来るかどうか分かりませんが、俺の方で少し情報を集めてみますね」



何やらきな臭い感じがするが、街に戻ったら早速情報収集をしてみよう。

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