第46話 その頃の・・・

エディオン達がフレアの街で過ごしている頃のお話し。


ウエスフィールド伯爵家では、エディオンの母親であるエレンが(影)からエディオンの近況報告を受けていた。


「そう、もうそんな所まで移動したのね」


エレンはどんどん遠くへ行ってしまう愛する息子を思い溜息を漏らす。


そんな中、とても気になる事がある。


それは、女性二人の存在だった。


「ソフィアさんはルージュの街から連れて出たのよね」


「そうです」


「二人目のヘザーさんは何処から...?」


「エディオン様がフレアの街へ向かう途中で森の奥へ行かれた時に合流されたと思われます」


(影)には、街中での様子だけ尾行調査をして報告するように申しつけていたので旅の途中での様子は分からないのだ。


「二人の容姿だけ教えて頂戴」


(影)は、二人の容姿と簡単な性格分析(あくまでも遠くから観察した物)を書いておいた用紙をエレンへと手渡した。


その渡された用紙を見たエレンの表情は(影)に取っては息が詰まるほどのものだったらしい。


「そう.....」


◇◇◇◇◇


エディオン達がソフランの街で過ごしている頃のお話し。


屋敷の執務室では......。


「父さん、エディオンの冒険者ランクがAになったって」


「声がデカいぞアンソニー。私も先程ギルド長から聞いたところだ」


執務室に駆け込んできた長兄のアンソニーを窘める。


「父さん、エディオンの冒険者ランクがAになったって」


と、そこへ今度は次兄のジェフリーが同じ様に駆け込んできた。

この二人は双子で生まれたせいか、たまに同じ行動を起こす事がある。


「お前も落ち着け、ジェフリー」


今度は、ジェフリーを窘めることとなった。


その後、執事長カイン、騎士団団長スコットと立て続けに執務室へと駆け込んできた。


「落ち着けお前達も」


執務室に集まったこの領内の中心人物達の話し合いが始まった。


「エディオンがアーネスト領ソフランの冒険者ギルドでAランクの冒険者になった。

そして、二人の女性と共にパーティーを組んでいて、パーティーとしてもAランクの冒険者パーティとなった。

ここまでは、いいな」


この場に居る、男全員が首を縦に振る。


「そこで、ここからが本題だ。

今迄、エディオンの持つ実力は私達の工作によって王家に対して隠蔽してきた。

そのお陰でちょっかいを掛けられずに済んでいたのだが。

だがしかし、こちらの予定よりも早くエディオンがAランクの冒険者になった事で隠蔽をしなくても良くなった。

これで、我々も大手を振ってエディオンの事を自慢できるようになるぞ。

そして、上手い酒が飲めるのだ~」


王家に対する隠蔽工作は彼らにとって必要な事では有ったが精神的な負担も大きかった事は事実である。


だが、エディオンが早々にAランクの冒険者になった事でその精神的な負担が一気に解消さたのだった。


「エディオン、Aランク冒険者へのランクアップおめでとう。

そして、ありがとう」


と、父親であるグレゴリーが音頭を取り、昼間にも関わらず宴会を始めたのだった。



その後、エレンによってお灸を据えられたのは必然であった。


◇◇◇◇◇


王城の王の執務室では......。


「宰相よ、ウエスフィールド伯爵家のグレゴリーにはやられたな」


「全くです」


「三男のエディオンが一番の実力を持っていたとは」


「二人の兄は王都の学園に通いましたが、三男は王都の学園は選びませんでしたからな」


「まぁ、普通は領内の学園で主席でも、三男だとそこまで気にしないからな。

全く上手く隠蔽工作したものだ。学園長もグルであったようだからな」


「それで、どうなされますか」


「いや、もう手出しは出来んだろう。

既にAランクの冒険者となってしまったのだから。

まだ、貴族籍は残しているようだが、抜かれてしまえばそれまでだ」


「残念ですが、致し方ありませんな」


「全くだな」


王の執務室では、優秀な人材を逃してしまった事を嘆いていた。


◇◇◇◇◇


現在のエディオン達は、ファーファの街で過ごしている。


「エディオンたら、良く思いつたわよね」


アイネ様はエディオンが行った呪術に対する解呪の魔法を考察していた。


「仕掛けられた呪術を反射する際に、仕掛けた呪術師だけではなくその関係者にまで及ぶように反射させてしまうなんて...


しかも......。


あれは無いわ~、人前でお○○ししたら私だって生きて行けないわ。

私が罰を与えるとしてもあれは無いと思う。

でも、今度眷属たちが悪さをしたら一度くらい考えても良いかもしれないわね」


何やら水晶の映像を観ながらブツブツとつぶやいているアイネ様の姿を見ていた眷属の天使達は、その背中に急激な悪寒を感じて震えていたらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る