第45話 解呪と反射

その日の夕方......。


見慣れてしまった貴族の馬車が、宿の前に停車する。

宿の女将さんには前以って伝えておいたので、混乱は起きなかった。


俺達は、目立たないように迅速に馬車へと乗り込んだ。


俺達が乗り込むと直ぐに馬車が動き始め貴族街の方へと向かっていった。

そして、一番奥にあるこの街を治めている人物の屋敷へと馬車は入って行く。


簡単な審査を入口の門で受け、屋敷の正面玄関にある馬車停で馬車は停止した。

すると直ぐに、屋敷の執事長が馬車の扉を開けてくれた。

そして、俺達が馬車を降りると、騎士の女性が玄関先から迎えに来た。


前もって、当主には迎えに出ないように伝えて貰っている。


あくまでも、女性騎士との用事で屋敷に来たという事にしておくのが良いと判断したからだ。

なので、当主と会うのは全ての事が済んだ後になる予定だ。


「エディオン殿とお二人を歓迎する。私に着いてきてくれ」


騎士のその言葉に従って、俺達は屋敷の中へと足を踏み入れた。


この時点で、俺は屋敷の中にいる悪意のある人物を特定する為に、マップに悪意のある人物を紅い点で表示するように起動した。


この事も、前もって当主には了解を得てある。



さて、来客用の部屋へと通された俺達はソファーに座り紅茶を飲みながら喫茶店で話す様な会話をしていた。


「そうだ、私の部屋には剣のコレクションが置いてある見てみないか」


「それは、いいですね。ぜひ、見てみたいです」


ソフィアがノリノリで応える。


それを、合図に俺達は騎士のコレクションを見るために部屋を移動した。

これは、あくまでもGを引っ掛ける為の振りなのだが。

移動した部屋の中に入ると、騎士は何かのスイッチを押した。


カチッ!


「ふぅ~、これでOKだ。会議用の結界を起動させたから部屋の中から声は外に漏れない筈だ。それで、どうだった...Gは見つかったのかな」


「えぇ、紅い点が三つ有りますね。マップ上では庭に一つ、調理場に一つ、そしてこの部屋の外に一つ、これは多分メイドですね」


「と言う事は、庭師、調理師、そしてメイドか」


「庭師は連絡要員で、調理師は毒物関連、メイドは監視要員でしょうね」


このことから、結構な力のある者が関与しているのが見て取れる。


「どうするか」


「三人まとめて拘束してしまいましょう」


「そんな事が出来るのか???」


騎士の怪訝な言葉を無視して、俺は「stan《スタン》」と口にした。

すると、この部屋の扉の向こうからドスンという音が聞こえてきた。


扉を開けて確認すると、案の定そこにはメイドが倒れていた。

その後、倒れていた残りの二人も拘束をすると、この屋敷の地下牢へと連れて行かれた。


「いや~、貴殿の魔法は敵にしたくないものだな」


◇◇◇◇◇


Gを速やかに排除したところで、お嬢様の解呪をする事に。


「こちらだ」


騎士が一つの扉を開けて、部屋の中へと入って行く。

俺達三人も続いて部屋の中へと入った。

そして、奥にあるベッドのところへ行き、お嬢様の様子を確認した。


その様子を確認した俺は急を要すると思い騎士に声を掛けた。


「急がないと拙いようだ、お嬢様に解析の魔法を使っていいか」


「本当か!直ぐにやってくれ、よろしく頼む」


俺の言葉を聞いて、慌てたように返事を返してきた。


俺はシュミレートしていたように、一連の作業を滞りなく処理していく。

時間にして10分程、最後の魔法陣の光が消えて解呪が終了した。


「ふぅ、どうやら間に合ったようだ」


「そうか、間に合ったか。ありがとう...ありがとう!」


目に涙を浮かべながら、何度もありがとうを口にする女性騎士。

この騎士は、お嬢様の事が大好きなんだな。



解呪が無事終了して、いま俺達三人はこの屋敷の当主の執務室にいた。


「この度は、誠にありがとうございました。

まさか、ウエスフィールド伯爵家のエディオン様だったとは。

家の騎士達は御無礼を働かなかったでしょうか」


「いいえ、良く教育されていると感心していました」


「そうですか。ありがとうございます」


当主は執務室に入った俺の顔を見るなり、ウエスフィールド伯爵家のエディオンだと分かったようで、案内して来た女性騎士を下げると平身低頭になってしまった。

何でも、俺の五歳の誕生日会の時に、招待状を貰いウエスフィールドの屋敷に来ていたらしい。


「あ~、でも...騎士達には俺の素性は話さないで下さいね。Aランクの冒険者として話してありますから」


「分かりました。そのように取り計らいます」


その後、今回の解呪による影響などの話をして俺達三人は乗ってきた馬車で宿まで送ってもらった。



その頃、とある屋敷では......。


「おい...薬は無いのか」


「・・・・・・」


「まだか早く出ろ、俺が...漏れる」


等々、エディオンによって改変された呪術の反射の影響が出始めていた。


その後、この屋敷の者は○○○貴族と呼ばれるようになったとかならなかったとか。





※Gは、○キ○○ではなくて、ゴースト(影)という設定です。

※反射された呪術は言葉にすると拙いので、想像にお任せします。



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