第42話 ボアの討伐と、旅の再開
翌朝......。
村の空き地に止めてある幌馬車の中で俺達は簡単な食事を済ますと、村の長であるゴンゾさんに出掛ける事を伝えて、ハングリーボアの追跡を開始した。
昨夜、ハングリーボアが消えて行った辺りから、残った足跡とマーカーを頼りに慎重に林の中を捜索していく。
「結構離れた場所に巣を作っているようですね」
かれこれ1時間ほど、俺達は林の中を捜索していた。
「でも、マーカーの反応はこの方向からだから、もう少し進んでみよう」
そのまま、林を抜けると目の前には高さ20mほどの崖が現れた。
「この崖に沿って左側だね」
林を抜けて崖沿いを歩くこと15分、ついにハングリーボアの寝床であろう穴の入口を見つけた。
「あの体格にしては、穴の入口が小さいですね」
「まぁ、外敵が居ないわけでは無いからね、自衛の為に小さくしているんじゃ無いのかな」
「地竜あたりにとっては良い餌でしょうしね」
「そうだね。さて、ここからどうやって対処するかだが」
俺達は、三人で討伐する為の作戦を協議していく。
その結果、常識ではあるがまず穴の中にいるハングリーボアの頭数を把握する。
次に、穴の中で討伐するのか外へ誘い出して討伐するのかは、中にいる頭数で判断する。
そして戦闘は、俺が一人対一頭、二人対一頭で行う。
「ざっくりと、こんな感じかな」
先ずは頭数を把握する為に、俺達は認識阻害の魔法と気配&魔力隠蔽の魔法を使用して穴の中へと足を踏み入れた。
※認識阻害は、相手方が此方側を認識出来ないようにする魔法。
※気配&魔力隠蔽は、此方側で自分の存在を隠蔽する魔法。
入口は2mほどの円形だったが、通路を3mほど奥に進むと徐々に大きくなり最終的には6mほどの円形の通路となっていた。
トンネル工事が上手いので土木作業員として雇いたい。
まぁ、冗談はさておいて。
20mほど奥へと入って行くと、そこは大きな洞穴となっていた。
そして、固まるようにしてハングリーボアが六頭眠っていた。
頭数を確認できた俺達は一旦穴の外へ出る事にした。
「六頭だと、一気に討伐とはいかないね。戦闘している間に、逃げられても困るし」
「散歩か食事で穴から出て来たところで討伐するのが良いでしょうね」
「二頭出たら穴の入口を土魔法で塞ぐというのはどうかしら。入口の大きさが小さいから直ぐに塞げるでしょう」
「分かった。ヘザーさんのその作戦でいこう」
話が纏まるとその後は迅速に行動して、俺達三人で何とかその日の夜までには全頭の討伐を終える事が出来た。
そして、ハングリーボアの寝床となっていた穴の入口は土魔法で他の獣や魔物が住み着かないように厳重に塞いでおいた。
それから、その日の内に村の長のゴンゾさんには討伐終了の報告をしておいた。
◇◇◇◇◇
ハングリーボアの討伐を終えて、二日後.......。
準備が整った俺達三人は、旅を再開する事にした。
そして、今回は平坦な草原の中を街道が通っているので、再び歩きでの旅を選択したのだ。
俺達の横を駅馬車や商人の荷馬車が隣の街に向けて足早に通り過ぎていく。
「次の街は、ファーファでしたかどういう街でしょうね」
「領都に近くなるから、ダウニーの街よりも大きい街らしい」
「美味しい食べ物が沢山あるといいわね」
歩きだと五日の距離があるので、草原の風に吹かれながらのんびりと進んで行く。
途中の村で宿泊をしながら順調に旅は進み、四日目の昼過ぎ路傍に停車している馬車と出くわした。
それは、貴族の馬車らしく護衛の騎士が5人その周りを警戒していた。
俺達三人は、その邪魔にならないように道の反対側を通り過ぎて行く事にした。
そして、俺達がその馬車の横を通り過ぎようとしたところで、騎士の1人が俺達の方へと近づいて来た。
近づいてきたその騎士は女性であった。
何かなと、俺が身構えていると...
「上級の冒険者とお見受けする。済まないが、ポーションを分けて貰えないだろうか」
俺達の格好から判断したのだろう、人を見る目の観察眼が備わった騎士なのだろう。
一応、警戒はしているようだが。
俺は後々面倒になるのは嫌だったので、身分証としてギルドカードを提示してから返事をした。
「いいですよ。何本必要ですか?」
俺のギルドカードを見て安心したのか、少し警戒が緩み欲しい本数を伝えて来た。
俺は騎士から症状を聞き、中級クラスのポーションを3本手渡した。
すると、騎士は馬車の方へと戻りポーションを馬車の中へと渡す。
そして症状が改善したのか、ポーションの代金を持って俺達の方へと戻って来た。
「ありがとう、助かった。これが、ポーションの代金だ」
「症状が良くなって良かったですね」
代金は、相場に少し上乗せしてあったので、俺はそのまま素直に金を受け取っておいた。
そして騎士が馬車の方へ戻ると、ファーファの街の方へと馬車は動き始めた。
「変に絡まれなくて良かったですね」
「まぁ、その時は自分の貴族証を出そうと思っていたけれどね」
「えっ、エディオンって貴族だったの」
「あっ、そう言えばヘザーさんには教えていなかったかな。
一応は、ウエスフィールド伯爵家の三男坊なんだよ」
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