第41話 ダウニーの街で

魔物襲来から三日......。

俺達三人は、宿の部屋でのんびりと過ごしていた。


「今日あたり、小麦も市場に出回っているかな」


「どうでしょう、街道の後始末は終わっていると思いますが」


あの戦闘の後、オーガ10体とブラッディベア2頭の亡骸は冒険者ギルドの方で回収をしてギルドの解体場の方へ運び込んでいた。

だが、残りの魔物は処理する事が出来なかった(祝勝会の為)ので、街道が使用出来ない状態だった。

なので翌日から、Cランクの冒険者以下と騎士団が合同で、その搬出作業と処理を交代制にして徹夜で行っていたのだ。

その搬出作業と処理が、昨日の夕方近くに終了して街道が使用可能となったので、今日あたり小麦が市場に入って来ているのではと考えたのだ。


「では、午後になったら市場を見に行ってみましょう」


「そうだね」



宿の食堂で昼食を済ませて、俺達三人は市場へとやって来た。

街中には被害が一つも無かったので、市場も平常通りの賑やかさだ。


「おじさん、こんにちは。小麦は入りましたか」


「おう、冒険者の兄ちゃんか。待たせたな、今朝市場に入荷したぞ。どれ位の量がが欲しいんだ」


「ん~、どうするか。取り敢えず100kg下さい」


「ふぇ、そんなに買い込んで大丈夫か」


「あ~、大丈夫です。マジックバッグが有りますから」


「そうか。なら大丈夫だな」


俺はおじさんに小麦の代金を支払い、小麦をマジックバッグへとしまった。


「ありがとうございました」


「おう、また頼むな」


前回来た時に、その他の物資は補充して置いたので、後は暇になってしまった。


そこで、俺はソフィアとヘザーさんに問いかけた。


「二人は、何処か行きたいところとか無いの」


俺の問いかけに二人は......???


急には思い付かない様だった。


◇◇◇◇◇


翌日......。


久しぶりに冒険者ギルドへやって来た俺達三人は依頼票のある掲示板を眺めながら面白そうな依頼が無いかと探していた。


すると、受付窓口の方から俺達を呼ぶ声が聞こえて来る。


「エディオンさん達、済みませんがこちらの方へ」


何だろうと、その受付嬢の窓口まで行くと...


「あそこの掲示板はBランクの方までの依頼票なので、エディオンさん達は窓口で受付嬢から依頼を聞いて下さい」


「でも、下のクラスを受けてもいいんでしょう」


「それでもです。エディオンさん達が受けてしまったら直ぐに済んでしまうでしょう。そうすると、俺達でも大丈夫だと勘違いする冒険者が現れてしまうんです」


「あ~、そういう事もあるか」


「分かって頂けましたね」


「はい。これからは十分に気を付けます」


「では、丁度良い依頼が有りますので、こちらの依頼をお願いしたいのですが」


俺達三人は依頼の内容を確認すると、手続きを済ませて準備に取り掛かった。


◇◇◇◇◇


「ハングリーボアと言えば、雑食で何でも食い散らかすので有名ですよね」


「農家の人にとっては死活問題よね」


「それに、柵なんか簡単に壊してしまう力もあるからね」


近隣の村に現れたハングリーボアの討伐依頼を受けた俺達は幌馬車で移動しながらハングリーボアを語っていた。


そして、ダウニーの街から幌馬車で半日掛けて依頼のあった村へとやって来た。


「済みません。ダウニーの冒険者ギルドから来ました」


柵の近くにいる村人に大きめの声量で声を掛ける。


「お~、ようこそお越し下さいました。そのまま中へお入り下さい」


その言葉に従って、幌馬車に乗ったまま村の中へと入る。

そして、馬を停止させると俺達は幌馬車から降りて改めて挨拶をした。


「ダウニー冒険者ギルドから来ました、Aランクの冒険者パーティで俺はエディオンと言います。それから、ソフィアとヘザーです」


「ソフィアです」


「ヘザーです」


「ワシはこの村の長をしておりますゴンゾと言いますじゃ」


最初に出会ったのがこの村の長だったらしく、話がスムースにいき被害の状況などを詳しく知る事が出来た。


ハングリーボアが活動するのは大概が夜で、子育てをしている時期は昼間も活動するらしいが。

この時期は、子育てはしていない時期なので夜だけの活動だという事だ。

この日は、夜の警戒を強めてハングリーボアの巣穴を見つけだす事にした。


村人たちが寝静まった頃、俺達は村の畑近くの樹に登りハングリーボアが現れるのを待っていた。


「どうして、樹の陰ではなくて、樹の上にしたんですか」


「樹の陰だと風向きによっては匂いでハングリーボアに気付かれてしまうからだよ」


「なるほど、そういう理由があるんですね」


俺達が小声で話をしていると、遠くの方からガサゴソと足音が聞こえてきた。


「来たようだね」


息を潜めて畑の方へ視線を向ける。


そこに現れたのは4頭のハングリーボアだった。


村の作物を食い荒らしているようで、丸々と肥え太っていた。


「取り敢えず、マーカーを当てて置こう」


1時間ほど村の畑を食い荒らしたハングリーボアは巣穴へと戻っていった。

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